DPC対象病院になるかは検討中

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財団法人福岡県社会保険医療協会 社会保険仲原病院 理事/病院長 木村 壽成

1969 熊本大学卒 1969 九州大学医学部附属病院研修医・医員 1972 麻生飯塚病院内科勤務 1974 九州大学医学部附属病院医員(内科学第3講座) 1976 同助手 1980 マックスブランク生理学研究所留学(西ドイツ) 1982北九州市立小倉病院内科勤務 1983 より九州大学医学部附属病院助手(内科学第3講座)、同講師、助教授、教授を経て1992 社会保険仲原病院・病院長。現在に至る。■日本膵臓学会特別会員 日本消化器病学会功労会員

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財団法人福岡県社会保険医療協会 社会保険仲原病院 理事/病院長 木村 壽成

患者中心の医療を医療理念に掲げる医療協会の一病院として、「患者さんを優しく迎えたいし、送り出したい」と木村理事は語る。病院の入り口には常時看護婦がおり、自動車から降りる足の悪い人や不自由な患者さんを気遣い手助けしている。院内には看護師の育てる鉢も多い。「患者さんの退院は勝利ですから、みんなでお祝いして喜びたい」という考えで、病棟エレベーターまで看護師が並び、退院する人に花を贈る。取材に伺った日、理事はロビーで職員に指示を出していた、院内の見回りは毎日するそうだ。

 平成4年に当院に着任して20年以上が経過しました。65歳まで九大の臨床教授を勤め、今も医学部5年生が2週間間隔で半日、学外研修に来ます。学生にはベッドサイドで診察の仕方や理学的所見の取り方など、大学で教えるのが難しいことを教えています。基本的なことは本に書いてあるし、習っていますが、それをどう臨床に活かすのか、ということを実践的に教育するんです。今の大学では、そういうところが余り重要視されていないのかなと感じることもあります。診療には患者さんとのコミュニケーションが重要なのです。やっぱり触ったり、患者さんの顔を見ないとね。

 若い医師は医療機器頼りになってコメントだけを見ている感じがします。「医療機器が無かったらどうやって診察するの?」と思いますね。古い私共はまず問診・理学的所見を参考にして疾病の見当をつけるから、検査も最小限です。これだけ画像診断の機器が進歩しているのですから「画像診断から得たものを、触診したらどう感じ、どんな音が聞こえるのか」という勉強に使い、もっと自分自身の診察能力を高めてもらいたい。もちろん機器を使わなければ診断できない疾患は多いのですが、まずは自分で見て、触って考えて欲しいですね。

 私が九大第3内科で膵臓に興味をもったのは、当時理学的所見の取り方を重要視された安部宗顕先生が居られたからです。私のお師匠さんでもある先生は「診察は五感でやらなければならない」と言われています。特に膵臓は胃に隠れていて難しいんですよね。理学的所見、血液所見、色々な画像を組み合わせ診断しなければ、見落とし、誤診を生じます。

 昭和47年私が麻生飯塚病院にいたころは内科医師が院長をいれて9名しかおらず、走り回って、いろいろな病気を診ました。当時はエコー、CTもなく、胃内視鏡や十二指腸ファイバーがやっと出始めたころでした。そのため、理学的所見が診断に大きな役割を占めており、その後の診療に大いに役立ちました。

 また九大のいわゆるナンバー内科(第1、2、3内科)の時代は、自分の専門以外の分野も回診や学会報告・カンファレンスなどである程度最新情報が入手出来ていました。今は内科は臓器別内科に分けられ専門以外の分野の情報を得る機会が少なくなったことだろうと心配しています。体は全体で一つですから、部分だけを診るだけでは、良くないと感じてます。今後の医療がこのような状況から患者さんの局所現象に偏った治療法に傾いていくことを恐れています。

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 最近、貧血精査の結果、骨髄異型性貧血だと診断され大学病院から今後のリハビリテーションのため当院に転院してこられた62歳・女性の患者さんがいました。著明な貧血があり輸血が必要で、顔面蒼白で頭髪脱毛があり、到底62歳には見えない様相で、激しい肋骨痛、腰痛に加え、入院中にベッド柵に突いただけで上腕骨折し(整形外科医も首をひねるような)、眼球や肛門周囲の炎症があり敗血症を併発し、食欲はあり摂食するものの大量の下痢を伴っていました。私たちは「糞便の便臭」から脂肪便を疑い、生化学検査をもう一度精査させ、アルブミン、コレステロールの著明低値、その後の検査で脂溶性ビタミン、鉄、銅、りんも著明な低値を示し、骨形成など行われない著明な消化吸収不良病態でした。患者さんは摂食可能であり特に高カロリー輸液などは行われていませんでした。この間貧血、栄養不良の精査のため過去数年前から上、下部消化管の内視鏡検査は数回に亘り、行われ著明な浮腫のみの所見でした。既往歴に8年前に大腸がんが胃まで浸潤し大腸と胃の手術歴があり、この手術との関連を疑い簡単なガストログラフィン(造影剤)による造影透視を行いました。案の定、胃から回盲部まで7分で達し、その後のDIC併用CTにてもガストログラフィンで造影されなかった残りの小腸が造影され、医原性短腸症のもと、まず、IVHからの高カロリー輸液、微量元素の経静脈的投与後、再建手術を行い骨粗しょう症の改善は遅いものの全ての症状は回復し、日常生活を楽しまれる状態になっています。自分の専門だけを診ていると気付かないことがあります。体は一つなぎなんです!もうじき私は70歳になりますが、このことを学会で発表しようと考えています。

 学生には、医師になったきっかけを必ず聞き、メモを毎年残すのですが、みんな夢があるし、優しさがある。聞いていて面白い。良い医者になる素質は誰にでもありますから、きちんと教えてあげれることは教えたい。しかし今後の医療行政の変更によって、彼らがやる気をなくすような状況にならないかと心配です。

 今、仲原病院をDPC対象病院にするべきかどうか迷っています。おそらくいろいろな手を使えば収益は上がるでしょう。しかし医療従事者は収益を最重要と考える職業ではない。DPC対象病院になれば、入院している患者さんが入院の診断名目以外の疾患を持っていても、それを治せば病院の損失になることがあります。いったん退院してもらって、別の診断名目で再度入院してもらうなんて本来の医療のあるべき姿ではないですよ。入院患者さんは入院前に外来で検査を済ませていて、検査も極力しない。薬も外から持ってくるが現状ではないでしょうか。難しい疾患を18日以内で診断して治療することなんて不可能ですよ。そして患者さんや家族のことにも気を配らないといけません。医療の質を落とさないように、また患者さんに優しい医療を提供することが小さな地域医療病院でできるのかを、今は不安を感じています。


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