総合して大きな力に

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中津市立中津市民病院 院長 池田正仁

1974 年 山口大学医学部医学科卒、福岡大学病院第二外科研修医を経て1975 年 九州大学医学部第二外科に入局、佐賀県立病院好生館外科医員、九州歯科大学外科助手/ 同学付属病院外科部主任、国立別府病院外科医長を経て2003 年 社会保険筑豊病院副院長、2010 年 中津市立中津市民病院院長に就任、現在に至る。1994 年には厚生省海外派遣制度にて米国ニューヨーク市 ベス・イスラエル病院(Surgical Endoscopy Unit)で内視鏡学の研修 ■日本外科学会指導医、日本消化器外科学会指導医、日本胸部外科学会指導医、日本大腸肛門病学会指導医、日本消化器病学会指導医、日本消化器内視鏡学会指導医、麻酔科標榜医、日本臨床外科学会評議員、日本内視鏡外科学会評議員、日本ヘルニア学会評議員。医学博士。

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休日を依頼原稿の執筆や手紙の返事書きなどにあてている。野球が趣味。学生時代は投手で5番打者。九州山口医科学生大会で1度、中四国で2度優勝した。ゴルフは1988 年8月28 日に別府国際クラブでホールインワン、日本医師会長杯でも優勝経験がある。今は健康のためにボウリングをやり、5歳の犬とも散歩するそうだ。

 中津市立中津市民病院は、中津市、宇佐市、豊後高田市の大分県北部二次医療圏に加え、福岡県東部の豊築地区を含めた24万人医療圏をカバーする。平成19年には全国自治体病院開設者協議会・全国自治体病院協議会から、平成20年には総務大臣から自治体優良病院の表彰を受けている。地域周産期母子医療センター、地域がん診療連携拠点病院、地域医療支援病院と、その役割は多い。

 平成22年に着工した建物が竣工し、昨年10月から新病院で診療しています。その時に5億4千万円かけてスウェーデン製リニアックを揃えたり、80列デュアルエナジーのCT、PET機能付きのガンマカメラを入れたりと、医療機器の整備に力を入れ、診療体制がより強化されています。また当院の手術室は5室で、うち1つは清浄度クラスⅠのバイオクリーンルームです。

 他の中核病院とは違い、近隣に代替病院がありませんから、診療科の休止や廃止は即、地域医療の崩壊につながります。だから緊張感を持って診療体制の整備に努めています。平成22年には産科を再開。24年には病理診断科を新設、今年から脳神経外科を新設しました。手術スケジュールを組む上で病理診断科の新設は大きかったですね。

 九州大学、大分大学、福岡大学、久留米大学から医師を派遣してもらっていますが、腕の立つ先生ばかりです。また中津に来る先生方は地域の医療を守るという共通の目的があるため、みんな協調的です。この地域は江戸時代、譜代の藩だったからか、穏やかな人柄の人が多いように思います。前野良沢や福沢諭吉のような学問の大家を輩出した中津という環境は、医学の研鑽と医療の実践にはとても恵まれています。私は福岡県築上郡の出身ですが、近くの豊前市の高校に通いましたから良くわかります。

 美しい自然と穏やかな人々に囲まれ、「病む人の身になって」を合言葉に、信頼される病院づくりに励んでいます。

 365日24時間の救急医療の提供、癌の集学的治療、ハイリスク分娩を含む産科医療、NICUを置くなど小児医療の充実に力を入れています。小児救急は感染もありますから入口で完全に分けています。単独病院で24万人医療圏の子供をカバーしている病院は珍しいと思います。地域で心臓カテーテル治療の救急対応を行なっているのも当院だけです。ほかに心療内科、神経内科、呼吸器内科、血液内科を、非常勤体制ながら整備しています。自治体病院の使命として、採算が厳しい診療科も含め、地域に必要な医療には積極的に取り組んでいます。救急、手術、小児医療と、診療報酬で高く評価されている分野にも力を入れていますから、経営面では安定した運営です。

 人材育成にも力を入れ、著名な医師に講演をお願いしたり、地域の潜在看護師の復職を支援するセミナーも開いています。講演では学術的なことや経験だけを話してもらうのではなく、医師としてのマナーや立ち振る舞いを学ぶ場としてお願いしています。潜在看護師復職支援セミナーは年に2回、看護部が中心となってやっています。参加をきっかけに復職された方も多く、誇らしい活動だと考えています。

 臨床研修医の指導にあたっては、臨床能力を高めるほかに、勇気と謙虚さと英知を合わせ持つ医師を育成したいと考えています。週に1回研修医を集めて倫理的な話し合いをしています。収支だけが良い病院ではなく、高度な医療と真心で経営が安定する病院を目指しているんです。ジュネーブ宣言にあるような「私の患者の健康を、私の第一の関心事項にする」という人を育てたいですね。

 当院では研修医を含めた医師が、読了した最先端の論文の要約を書き、開業医の先生たちが気軽に読める情報誌として毎月発行しているんです。以前は何百部も刷っていましたが、現在はISO14001の取り組みでウェブサイト上での閲覧をお願いしています。

 バルーンを使うTEPPという手術技法は、メンフィスにあるテネシー大学から私が日本に持ち帰ったものです。食道癌が専門でしたが、ライフワークを探していて見つけました。日本では当初、私1人が全国に発信していた手術で、1994年ごろからやっていました。一番良い手術だと思っていますから愛着があります。

 第113回日本外科学会定期学術集会の鼠径ヘルニアシンポジウムで司会をした時、どんな手術が優れているかという話題で盛り上がったのですが、「メーカーと仲良くしなければならないから」と、優れていると思えない手術材料を使用することもある、と言った医者がいました。私は不見識だと思って叱責しました。自分が良いと信じるものを患者さんに提供するべきで、メーカーの顔色をうかがって診療してはいけません。あとで私に握手を求めてきた医師が何人かいて、私に叱られた医師も挨拶に来ました。私の言った意味が分かったようだから、まだまだ若い医者も捨てたもんじゃないなと感じました。

 海外研修時、手術室の控え室でテネシー大学のベラー教授に「君はゼネラルか」とたずねられました。ゼネラルというのは将軍のほかに「一般的な、普遍的な、概括的な」という意味があります。この場合は「外科全般に通じているのか」という意味でした。外科学全般に通暁しているが、極めて専門的な手術は専門家に任せるというのがゼネラルなんですよ。質問に「ゼネラルだ」と答えると、教授は喜びました。日本でゼネラルは必ずしも重要視されていませんでしたが、メンフィスではそういう人が尊敬されていました。

 医学者アレキシス・カレルは「人間この未知なるもの」の中で「分析は総合して初めて大きな力を持つ」と述べています。近代の医学・医療は分化によって進歩発展してきましたが、それらを総合することで全人的な、より質の高いサービスが提供できます。平成22年の統計を、私が研修医だった昭和50年の統計と比べると、人口は1・1倍でしかないのに医師の数は2・2倍。これで医師が足りないというのは、専門特化が進み、一人の医師の対応能力が低くなったからだと思います。数を単純に増やすだけでなく、守備範囲の広い医師の養成も求められているように感じます。そして病院には、機能的な協調体制の構築が必要だと思います。


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