研究心は臨床の彩りを豊かにする

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国立病院機構 福岡病院 院長 岩永 知秋

「フットワークの軽さが医師を育てるんです」

1980 九州大学を卒業し、胸部疾患研究施設に入局 1985 米国留学 1987 自治医科大学呼吸器内科講師 1991 国立療養所南福岡病院呼吸器内科 1999 同臨床研究部長 2005 同副院長(国立病院機構福岡東医療センター) 2007 久留米大学医学部内科学講座呼吸器・神経・膠原病部門准教授 2008 国立病院機構福岡病院副院長 2009 同院長。現在に至る。併任=久留米大学医学部医学科客員教授、九州大学医学部呼吸器科臨床教授・非常勤講師。■日本呼吸器学会指導医、日本アレルギー学会指導医、日本呼吸器内視鏡学会指導医、日本結核病学会結核・抗酸菌症指導医。■著書「胸部X線写真から肺機能を見る」(共著)、「呼吸不全と生きる」(ビデオ)などがある。

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―国立と民間病院の院長の役割に相違はありますか。

 厚労省直轄の時代と比べますと、経営面の強化や医師確保の苦労など、民間に近づいているのは確かです。一方、どこが違うかといえば、1つはセーフティネット、当院でいえば重症心身障害の人たちをずっと診ていくとか、あるいは神経筋疾患など、一般の医療とは質の異なる病気をしっかりフォローするという責務があります。

 2つ目の違いは臨床研究でしょうね。臨床研究を行ないながら現場の診療に役立てていくところが非常に違うところです。当院には臨床研究部があり、個別的な研究もするし、国立病院機構で協同することもあります。

 病院としては中小に入るわけですが、臨床研究は強く、その業績は、全国に144施設の中で上位20位くらいの位置です。

―臨床研究に進む医師に共通点はありますか。

 必ずしもそうではないです。ここに来て研究に目覚める人もいますね。「常に研究的な視野を持ちなさい」と私も言っていますし、学会研究会にも行かせて、発表するための論文も書くように指導しています。

 もちろん臨床を幅広く、数多くやりたい人のタイプもあって、それも大切です。人には個性というものがありますからね。

 当院で、自分の持っているスキルや臨床能力を高めるようにしてあげたいと思っていますし、そこに研究的視野を持つと、さらに彩りが添えられるのではと思います。

―研究的な視野と臨床との兼ね合いは。

 できればバランスよくやった方がいいと思います。論理的にいろんな組み立てをやっていくには、どうしても研究をやっている人は強いわけです。でもその一方で、救急や救命をやっている人たちは、かなりの経験や知識、決断力など、瞬時の判断が求められます。直感的な判断や決断のトレーニングも大切なんです。そこは研究的視野とは相容れないところもあります。それをバランスよく持つのは簡単ではない。

 知識を組み立てていく時間がない時に、すぱっと、イメージとして経験を引っぱり出すことはあるでしょうね。そうしないと間に合わないですから。救急の現場でゆっくり考える時間がない時には、まず優先順位が高いものがひらめくわけです。それには経験とトレーニングが必要でしょうね。

―それを若い医師に伝えることは可能でしょうか。

 簡単ではありませんね。これまでの私の姿勢は、あまり手取り足取り教えずに、自分からやって見せてきたというところが大きいと思います。その中で若い医師に、「臨床というのはフットワークの軽さだ」と言っています。何かあったら現場に駆けつけて、何が起こっているかを知りなさい、ということです。

 臨床をやっている限り、呼び出される可能性は24時間あるわけですから、その時に億劫がらずに善処することが正しい医療に結びついていくし、患者さんや家族の信頼も厚くなります。

 フットワークは医療者としての誠意にもつながるんです。何かあったらすぐ来ますからねというメッセージになると思います。そこは大切なところですから、若い人に伝えたいと思いますね。

―影響された人はいますか。

 もう亡くなられましたが、昔の研究室にいたボスで、節目節目で助言をもらいました。だから私も、極力相手の立場でアドバイスするようにしていますが、それがうまくいっているかどうかは、自分が死んでみないと分かりませんね、本当の評価は(笑)。

―若い医師に助言するなら。

 1つは先ほどのフットワークですね。2つ目は、知識や姿勢が厳しく要求される今でも、病に苦しむ人を助けたいとか、手を差し伸べたいと思って志した気持ちを忘れずにいてほしい。医学の山は高く険しいけれども、それゆえに、登る価値があるし、人格も磨きながら歩んでほしいと思います。いろんなところで迷うこともあるでしょうが、それを自分の糧として、へこたれずに登って行くガッツが大切かなあと思いますね。

―人格を磨くということは。

 目の前の困難から逃げず、真正面から取り組む。それがたぶんその人を鍛えことになるんだろうと思いますよ。それの積み重ねだと思います。

 どの医師にも、頼りにしている患者さんがおられるんです。その信頼をもっと広げていくことが、自分を磨くことにつながると思います。さらに、同僚やスタッフ、同じ現場で働く看護師さんや検査技師さんからも信頼を勝ちうるような医者を目指すべきでしょうね。

 一定の学力以上があれば、あとはその人の人間性だと思います。

 人間は成長し続けますから、医者になったばかりの時は、人間の形成がまだ充分じゃないわけですよ。変わっていく要素をいくつも持っているし、またそうでなければならないわけですね。

―院長になって思うことは。

 病院としての将来像をどう描いていくかということ、そしてこの病院をもっとよくするために、職員が職場を愛する気持ちを育てていきたいというふうに思うわけですよ。院長が先頭に立つのはもちろんですが、みんなの力の結集が大切です。いつも思っているのはそこですね。

―趣味はなんでしょう。

 歩くことですね。週に2回くらい近所を歩きますし、出張先でもあちこち歩き回ります。考える時間も取れるし、季節の移り変わりも楽しめますし、博物館や美術館を見つけたら入ってみます。(聞き手と写真=川本)


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