臨床心理士の想い15 【坂梨圭】

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患者になる①

 臨床心理士はクライアントさんのために信頼関係を築き、関係ができたところから「心の作業」を共に始める。

 面接をしたあとで、相手の立場になっていたかな、と思うことも時々ある。クライアントさんの気持ちを知るうえで自分自身が患者になることは、自分を振り返る意味でも大変参考になる。

 健康診断のために朝食抜きで総合病院に行った時のことである。かなり待たされたが、時間がかかることは想定していたので、本を読んだりして気にならなかった。

 採血のあと腹部エコーがあった。臨床検査技師が「今日は実習生にさせますが、よろしいですか」と尋ねるので、「かまいません」と了解した。

 若い女性の実習生から、「息を止めて...」と言われたので息を止めて、エコーをあててもらう。その繰り返しが10回ほど。

しかし息を止めている時間が長いのである。これ以上とめられないところまで我慢したが、苦しい時間であった。

 指導者はモニターを見たまま、最後に言った。「これじゃエコーにならん。代わって」と。

 実習生は申し訳なそうに「すみません」と言う。「とれなかったのでもう一度やります」の一言だけで指導者がエコーをとり、何とか検査は終わった。ただ、指導者は私に一言の謝罪もなかった。

 内科医の問診の時、胃がきりきり痛んだ。胃カメラの予定だったが、内科医に「今日は胃が痛いので胃カメラはキャンセルします」と話した。内科医の返答は、怒ったような声で、「胃が痛いから、胃カメラの検査をするんです。申し込んであるので、キャンセルしてもお金は返ってきませんよ」と言った。その返答に私は怒りを抑えられずにいたが、淡々と「私がキャンセルしたので、お金の返却は不要です。ただ、胃カメラは調子が悪い時にすると、吐き気がひどいからしたくないのです」と答えた。内科医は「そうですか。じゃあキャンセルね」の一言。

 健康診断は、ある意味ではルーティーンの流れ作業である。しかし、健康診断を受けに来た人の気持ちをあまりにも考えない対応に腹が立った。こんなにも不愉快にさせる健康診断を初めて体験した。

 私たち対人援助職は何人ものクライアントさんの診察や面接をする。でも相手にとっては一度の体験である。病院に限らす、そこにいる人の対応が、その組織をイメージさせるのである。

 病院からの帰り道、この健康診断は自分を振り返るよい体験だったと考えるようにした。そして、二度とその病院には行かないことにした。


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