院長に就任して4か月 ―久留米大学病院 病院長 坂本 照夫―
私はもともと救急専門で、28年間救急救命センターにいました。脳卒中や急性心筋梗塞、狭心症など急性冠症候群や外傷を、ドクターヘリも駆使して医療を行なってきました。
本院は特定機能病院、地域がん診療連携拠点病院、厚生労働省臨床研修指定病院、福岡県総合周産期母子医療センターのほかに、災害拠点病院や九州唯一の高度救命救急センターの認定を受け、福岡県、佐賀県全域と大分県北西部を診療範囲とした福岡県ドクターヘリ基地病院でもあります。屋上には格納庫と給油装置を備えた本邦初のヘリポートが設置され、現在では年間500件前後の出動要請により、朝8時半から日没前まで、現場からの救急医療を行なっています。
さらに地域がん診療連携拠点病院として、昨年10月から院内に腫瘍センターを設置し、がん診療情報の収集や治療実績の情報公開に取り組みながら、キャンサーボードも頻回に開催され、がんサロンと称してがん相談支援センターにおけるセカンドオピニオンや緩和ケアの推進などにも努めています。
―救急のドクターが院長になる意味は。
院長ともなれば、知らないでは済まされないことばかりで、いろんな勉強をしています。また4人を副院長として配置し、役割分担をしています。
経営の方法についても諸先輩方に教わることばかりで、まだ何も見えない状況ですが、やれば面白そうだなと思いますね。いま一番考えているのは適正病床数ですね。地域連携はうまくいっているので、在院日数が長い原因を見つけ、少しずつでも改善したい。特定機能病院である上に高齢社会ですが、方策はいろいろあると思います。
救急は、大学病院全体の職員の協力があってこそ成り立つ場所で、文字通りセンターですから、ほとんどすべての科と関わりがあるんですね。そこは、みんなのことがよく見えるだろうとの期待につながっているかもしれません。
―2年の任期中にやりたいことは。
これまで副院長として関わって来た中で、外科系の特定集中治療室を一か所にまとめることが必要だと思っていましたので、それを作り上げたい。
外科系の医師やスタッフの疲弊を取り除き、軽減するのが目的です。
外科医は手術をちゃんとやり、術後管理は他の専門家が行なう流れです。 外科系の医師は、自分で診断をし、自分で手術して、術後も自分が管理することが多いんです。1人の患者さんを1人の外科医がずっと診ている。責任感が強いのは分かりますが、役割分担して次の専門家に引き渡さなければ今の時代には対応できません。その意味でのチーム医療だと現場に理解してほしい。
疲弊すれば外科医になる人が減る。それは悪循環です。疲弊した手で治療されても医療事故の確立が高くなるだけです。「患者のために変えるべきところは変えよう」という発想が求められます。どうしても患者が気になるなら、院内のどこにいても会いに行けばいいんです。それが本当の信頼関係を築き、疲弊せずにモチベーションアップにつながるんです。
―医師を目指す若い人に伝えたいことがあるとすれば。
高齢社会のニーズとも相まって、「総合医」という概念が、いま脚光を浴びようとしています。地域の家庭医という表現の方が分かりやすいかもしれませんが、「総合医という専門医」を作る大きな流れがあります。まず全身を診ることのできる医者になり、その中から、自分が研究したい分野や、目指したい医者を決めればいいのではないかと思いますね。最初から専門の道に進んでしまうと、ある程度大きな病院でも、自分の専門以外を見過ごす可能性があり、困ることにもなりかねません。医師が中心ではなく、あくまでも患者さん中心が基本ですからね。
―リフレッシュするための趣味はありますか。
カメラが好きだし、健康維持のためにゴルフもやりたいんですけど、なんといっても時間が取れない。本を読む時間すら取れない状況です。さらにこの1月から電子カルテを導入して、その運用に手間取っているんですよ。もう少し時間がかかるかもしれませんね。
―3日間ほど休暇がもらえたらどうしますか。
残っている仕事を仕上げるでしょうね(笑)。
今年いっぱいは身動きが取れそうもないです。やるべき勉強もたくさんありますからね。