臨床心理士の想い14 【坂梨圭】

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ここはインドです

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タージマハル廟=筆者撮影。

 ニューデリー空港での深夜、航空会社の社員に「ここは、インドです!」と言われて、妙に納得してしまった。香港経由でニューデリー空港に深夜到着したが、スーツケースがついに出てこなかった。パソコン類は手持ちのバッグの中だったが、資料や本がスーツケースの中だった。次の日に使う資料だ。航空会社の担当者に明日の午後までに届けてほしい旨を1時間近く交渉し、最後に言われた言葉だ。「ここはインドです。時間は約束できません。日本ではありません」。その言葉で焦りが「健全なあきらめ」へと転化した。そうだった、ここはインドだった。そういえば、30年前も同じような言葉を聞いた。列車が1日近く遅れ、次の列車の時刻が迫っていたので、チケットの交換を求めたが、最後に「ここはロシアです。1日の遅れはたいしたことありません」と。

 学生時代は大陸的・アジア的感覚を持っていたと思うが、いつのまにか、日本的感覚が染みついている。そのことを痛感させられるインドであった。

 高速道路に人も、自転車も牛もラクダもいる。牛が堂々と闊歩し、灼熱の太陽の下、人々は、木の下でゆっくりと昼寝している。道行く人々は、周りなど気にしない。ラクダも牛も馬も、カオスの中で、しっくりととけ込んでいる。藤原新也が「インド放浪」という写真集を世に出したのが40年前、私もインドに憧れた。友人は何度も行き、インド女性史の研究者になった者もいる。世界第二位の人口の国。これから伸びる国は中国かインドか、と言われた時期もあった。私もそう思っていた。しかしそれは、インドを一括りに語るものの言葉に過ぎない。

 インドは時間も人間も空間も、すべてを混沌の渦の中に、陥れてしまう。何が人生の中で大切なのか、混沌とした空間の中で感じさせられずにはいられない。スーツケースがなくても何も困らない。資料は頭の中に入っているものを使えばいい。下着は着替えなければいい。汚れたら洗えばいい。いつの間にか、いらないものをたくさん持って歩いていた自分に気付かされた。

 しかし、暑い。木陰で休めばいいのだが。

 汗をたらしながら歩いている自分がいる。


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