1年たって職員が元気に。

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地方独立行政法人下関市立市民病院 理事長 小柳 信洋

こやなぎ・のぶひろ=1978 九州大学を卒業し、同第二外科入局、1980 同研究生、1984 同助手、1987 米国ハーネマン医科大学に留学したあと、1988 福岡市民病院外科部長、1991 麻生飯塚病院外科部長、1998 同副院長を歴任。2001 下関市立中央病院院長、2012 から下関市立市民病院理事長。

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第113回日本外科学会定期学術集会で司会を担当した小柳理事長(今年4月13日=撮影平増)

 下関市立市民病院は地方独立行政法人化して、今年4月で1年が経った。前身の下関市立中央病院は、地方公営企業法の全部適用を選択せず、定数条例に縛られない非公務員型の独法化を選択したが、今は苦しい経営だという。しかしその苦しさは、明日の医療をより良いものとするためのもので、いま楽ではないことが病院を充実させていると、小柳理事長は考えている。

理事長職と臨床

 私も静脈瘤の専門家ですが、外科学会で司会したのは下肢の話で、私自身も勉強になりました。私は食道静脈瘤が専門の一つです。

 井口潔教授(九州大学医学部外科第二講座教授)の時代は緊急手術を要する手術で、寒い日に血を吐いた人が出ると呼ばれていました。ですが患者は体が弱っている人で、出血もジェットで吹いており、難しい手術でした。

 大分大学の北野正剛教授が透明チューブを使った治療法をヨーロッパから持ち帰られて以降、出血のコントロールが上手くいくようになって、若い人にも任せられるようになりましたね。

 今は手術には全くタッチしていません。臨床は週に1度、午前中だけ人間ドックと検診を担当しています。理事長としての職務が山積していますが、完全に臨床から離れるのは寂しくって。一時的に理事長職を離れて、気分転換にもなっています。

活かされる黒字経験

 飯塚病院で副院長をしていたときは、リスクマネージメントの担当で、経営はやっていなかったのですが、黒字病院を見てきた経験が活かされました。当院に来て、初めに思ったのは、「全く経営のことを考えていないな」ということでした。ICUがあるのにICU加算をとっていないのには驚きました。そしてがんじがらめで、身動きがとれない。

 たとえば病院と連携している開業医の先生がお亡くなりになっても、病院からは花輪や弔電が出せませんでした。ポケットマネーで出さなければならない。事務は「費目がない。費目は作れない。市議会の承認を通せ」と言うわけです。ほかには、医師が足りない時にアルバイトを頼もうと思っても、費用が決められていて呼べない。九大から呼ぼうと思っても、福岡市内でもっと良い賃金を出す病院がいっぱいあるわけですし、下関まで来てくださる先生を探すのは大変でした。今は福岡市内の15〜20%増しに、交通費を加えて来てもらっています。

 何とか自由に動けるようになりたいと考えていて、やっとの独法化です。

医師はだんだん充実してきました。非常勤と研修医を入れて70名近くいます。学生時代に運動部に入っていれば、部活の後輩のようなツテがあって、もっと増やしやすいんでしょうけど。

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 ただ、山口大学に呼吸器内科がないために、県内の病院はここが手薄です。4〜5年前まで当院では、4人体制でやっていましたが、今は週に1回九大からアルバイトで来てもらっているだけで、今年はゼロになってしまいました。呼吸器内科はぜひ、再度充実させたいですね。あと、私は肝硬変が専門の外科なんですが、肝臓内科がいないんですよ。これはぜひ入れたいと考えています。また医師の給与は制度改革して、近い将来、年俸制にしたいと考えています。薬剤師は6年制になったこともあってまだ不足していますが、検査技師さんやレントゲン技師さんは応募が多くなりました。プロパーの職員も3分の1程度に増えてきて、独法化後人員は充実しつつあります。

独法化で変わったこと

 独法化以降まず変わったのは、職員の朝夕のあいさつ。元気があるんです。それと、院内の研修会や研究会に出席者が増えました。良くなったという投書をいただくことも多くなってきました。

みんな初体験のことで、手探りで協力してやってきましたし、病院がまとまっていた1年だったように感じます。

 診療単価は外来が1万1千円くらいから1万3千円に上がり、入院診療は4万2千〜3千円だったのが4万7〜8千円。後半は5万円を超えています。患者さん自体も増え、収入は増えました。当院は感染症も受け持っていますから、ベッドのやりくりで今後困ることが出てくると思います。

いい看護師を育てたい

 しかし独法化も、良いことばかりではありません。定数条例に縛られないことも目的の一つでしたが、公務員でなくなることに不安をおぼえた看護師さんたちが辞め、定数280だった人員が一時は250まで減り、10対1も危うい状態でした。保守的な地域なのかも知れません。現在も1病棟50床ほど休止しています。それを入れて430床の病院です。それでも7対1にしようと思ったら40人くらい足りません。ですが、もうすでに定数の枠は外れていますから、初任給を上げたり随時募集に変えるなど、大胆な募集が出来るようになっています。

 人員確保には看護部長が熱心で、いっしょに看護学校を回っています。奨学金も始めました。認定看護師を希望される場合は、病院で費用を持ったりもしています。独法化しないと出来なかったことですから、一時的に人数は減りましたが、今後は増えると考えています。今年は新卒の看護師が20名近く来てくれましたし、大事に育てていきたいですね。今年から看護副部長を3人に増やし、強化しています。そして25年度中に7対1看護を実現したいですね。

赤字覚悟で設備を充実

 まだはっきりしませんが、独法化後の最初の1年は赤字です。23年度が2億程度の赤字だったのに対し、24年度はそれより増えると思います。というのも、電子カルテや手術室の機器、CT、MRI、レントゲンといった機器が古くなっており、4億円の投資をしたからです。脊髄の外科が使うCアームも、立体視するために2台入れました。ベッドなども新しくしたいので、25~27年度は各2億円、4年間で10億円の設備投資を予定しています。27年度に初めて黒字を出す予定なんですが、早ければ25年度にも、と考えています。

今後が楽しみな病院に

 今後の展望としては、DPCを始めます。下手に始めると損をするようなので、今勉強中です。福岡市民病院の竹中院長(先月号参照)には熱心に奨められましたが、そのとき入りそびれて、やっとです。今、大きく病院は変わっています。今後が楽しみで、しょうがありません。


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