救命救急センター専従医、竹智義臣部長(兼医長)に聞く。
宮﨑県立延岡病院に3階建ての救命救急センターが完成した。屋上にヘリポートを備える。3月20日の竣工式には県病院局や県北市町の代表者、県議会議員、医療関係者など約70人が出席した。
センター建設の旗ふり役を務めた竹智義臣医師に取材の途中、救急車のサイレンが聞こえて竹智医師は早足でどこかへ消えた。戻ってきたのは30分後。心筋梗塞の高齢者が運び込まれたらしい。
2階は広々としており、8つある当直室は各室に入院や手術用の配管が備わっている。いざという時、診療施設に変身するためである(平面図参照)。本館から供給が絶たれても、酸素や圧縮空気、笑気ガスなどはすべて保管してあり、自家発電機も備えているという。3階を機械室として、それらを集約した。
ヘリポートは約20m×20m。これまでは4㌖離 れた大瀬川河川敷のヘリポートを利用していたが、病院到着まで20分の時間を要した。病院内に設置することで迅速な治療が可能になり、救急医療機能は格段に向上する。建設費用は8億5千万円で、建物に充てられた7億円のうち6億4千万円は医療再生基金。
「ドクヘリの全長は13m、防災ヘリは17m。どちらにも対応できる。これからの救急病院にヘリポートは常識」と竹智医師。建設に先立っていろんな救急救命センターの図面を集め、実際に熊本日赤病院や済生会病院なども見学し、最後に現場の意見や要望を聞いた。「だから、いいとこ取りですよ」と笑う。
住民説明会で騒音はあるかと聞かれ、「みなさんの娘や孫を助ける騒音」と答えた。新生児と母体搬送にヘリを使う場合がいちばん多いという。NICU(新生児特定集中治療室)は7つあるが、1000g以下は大学病院に送る。「ヘリがあればいろんな可能性が広がる」と竹智医師は期待を寄せる。
「年間1万人の急患を扱えるのは、病院周辺にある4か所の医師公舍に57人の医師、看護師宿舎にも30人が住んでオン・コール体制が確立される環境にあるから、なんとか救急が回っている」とも話す。すでに県北25万人の医療を支える拠点となっている。
【施設の概要】建物=鉄筋コンクリート3階建て2356.07㎡。うち診療スペース1892.65㎡(診察室4、処置室4、救急透視室1、観察室5、CT室1、救急用当直室8) 屋上ヘリポート449.44㎡(21.2m×21.2m)
以下左上から順に①竣工式のテープカット。向かって右から渡邊亮一宮崎県病院局長、池ノ上克宮崎大学医学部附属病院長、髙橋透県議会厚生常任委員会委員長、河野俊嗣宮崎県知事、首藤正治延岡市長、牧野剛緒延岡市医師会長、柳邊安秀延岡病院副院長②河野知事に説明する竹智部長。③ナースステーションを中央に置き、1階の全域を見ることができる。④シンプルな設計の処置室。⑤2階には当直室8部屋のほか救急救命科室や研修医室が設けられ、大きな災害にも備える。⑥⑦CT室とX線撮影室。ヘリポートの設置で迅速な治療が可能になった(資料提供=延岡病院)。本紙の取材は18日に行なった。