病院・診療所を上手に建てる

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建築士から見た病院建築とは

青木哲也社長(写真=左)が代表を務めるフォルツァ株式会社は、立地選びに始まり、設計士・施工業者の選定、金融対策の四つを主にサポートする。新築だけではなく、リフォームやリノベーションの相談も受けるそうだ。有限会社市川設計事務所の市川清貴社長(写真=右)は一級建築士で、日本医療福祉建築協会会員。病院・診療所建築のスペシャリストだ。

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青木徹也社長(写真=左) / 市川清貴社長(写真=右)

―建築基準法第二条では、病院を「特殊建築物」と定義していますね。

市川 建築基準法で指す病院には、診療所なども含まれており、「医療建築」と捉えたほうが良いと思います。

青木 ただビルクリニック(無床)の場合は特別に事務所建築の扱いをする場合もありますね。

市川 病院は、医療法における構造基準を満たさなくてはならないため、建築基準法よりも厳しい基準が適用されます。例えば両側に居室(病室や診察室)がある場合の通路幅は、建築基準法上では1千600mm以上ですが、病院の病棟の場合は2千100mm以上と決められています。病院は通常の建築物とは法規が違うので、そこを分かっている設計士にしか設計ができない建築物です。設計士として優れているだけでは不十分だと言えます。

―設計士選びは重要ということですね。

青木 経験が少ない建築士では、大きな間違いを犯すこともあります。保健所に打ち合わせに行く段取りなど、他の建築物とは違う作業も多いし、やっぱり慣れた人が良いですね。19床以下の診療所なんかはそんなに厳しい基準はないけれども、それでも中で行われる医療行為について無知ではダメ。病院は人の流れ、物の流れ、情報の流れという動線があるから、これらについても知ってなきゃならない。

市川 小さな診療所でも、ホテルと同じように裏方動線がありますし、業務にある程度通じていることは必須でしょう。

青木 私どもはそういう経験豊富な設計士を紹介しているわけです。

市川 「病院の設計」という一つの方法論で設計は出来ず、施主のニーズに合った設計をしなければなりません。大まかな流れはいっしょですが、バリエーションは無数にありますから、それにどれだけ対応できるかも、設計士の強さになります。

青木 先生たち(医者)の流儀は最近平準化されてきたけど、診療の進歩にも対応できなきゃならない。何にでもメリットが有ればデメリットもあるから、ケースに合わせて判断できる人でなきゃならないんです。

市川 設計士は要望対応のバリエーションを多く持っているだけではなく、その特徴を明確に説明できなければなりません。その上で先生方に選んでもらうことになります。

―サポート会社に頼らない場合、良い設計士はどう探せば良いのでしょう。

市川 多くの医療建築を見て、良い設計士を紹介してもらうのが一番良いと思います。

青木 それとゼネコンに頼むという手もあります。

施工業者はどう選ぶか

―ゼネコンに頼むメリットは。

青木 先ず価格が見えますね。そして決まるまでの時間が短くて済みます。手続きが簡単で楽です。スーパーゼネコンになれば、安心感もありますね。

―デメリットは。

青木 高いか安いかが判りません。外部の設計士がチェックするわけじゃないからね。あと設計も、自分たちのやりやすいように作るので、建物自体にたのしさが生まれにくいかな。

市川 ただ病院の場合は大手五社以外のゼネコンであっても、専門のチームを持っている場合もあり、経験豊富な設計士はいるようです。

―設計と施工を別個に頼む場合は、どういう施工業者を選ぶと良いですか。

青木 後々のメンテナンスをやってくれるところが良い。評判だとか、会社の経営状態が良好なところにするべきです。

―フォルツァ㈱では、工事業者をどのように決めていますか。

青木 相見積もりですね。複数の優良な業者に見積もりを出させ、オーナーと相談する。

市川 見積もり合わせでは安い高いだけではなく、質や体制など総合的に判断することが大切です。

青木 競争の原理が働くので、何社かに見積もりを出させるのは必要なことです。

介護施設と建築士

市川 病院と同じように、福祉施設も建築基準法のみでは建てることができません。例えば特養は、老人福祉法に準じなければなりません。これらは建築基準法上では「児童福祉施設等」というカテゴリーになります。ですから不思議なことに、建築予定看板には「児童福祉施設」と書くことになります。厚生労働省の基準は壁の内法で面積を計算するなど、特殊なものもあります(通常は壁の中心線で計算する)。建設省のサ付き住宅(サービス付き高齢者向け住宅)とも考え方が違い、やはり知識が必要です。知らないと、建てたあとに営業ができないと言われるケースもあります。

―事前に市役所の建築主事がチェックするのではありませんか。

市川 建築主事が見るのは、建築基準法に合致しているかどうかだけです。保健所も事前にきびしいチェックはしませんから、設計士に知識がないといけません。また介護保険関連の官庁との打合せが重要です。

青木 グループホームや特養、老健といった介護の建物は、特に火災時のことなんかに気を使う設計士じゃないとね。

市川 病院もそうですが、使う人の安全は一番に考えなければいけません。介護施設の一部は既存の寮などを改修して使っているものもあります。寮は「特定の住人」という前提のため、災害対策の規則は緩く、体の不自由な人に適した建物に改修するためには、特に安全に配慮しておかねばなりません。

建てる上で大切なこと

青木 良い建築物に一番大事なのは、設計士や施工業者よりも先ずはオーナー。オーナーがきちんとしたプランを持っていないと、良い建物はできないね。

市川 何も指針や方針が決まっていないのは、あまり良い状態ではないですね。具体的に形にしていくのは僕らですから、それを巧く聞き出すのも僕ら建築家の腕です。
(聞き手=平増)

フォルツァ=TEL:092-715-6233
市川建築設計事務所=TEL:092-554-7577


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