不知火の医療、地域で受ける医療

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独立行政法人国立病院機構 熊本南病院 院長 柳下芳寛

院長によると桜が自慢の病院らしく、花見は毎年の行事らしい。病院の性質上、長期入院患者も少なくないが、難病の患者さんをはじめ来院される皆さんが喜ぶそうだ。今回は時期はずれで桜をみることができなかったが、梅の花もなかなか美しかった。小高い丘の上にあり、木々や花々、野鳥を楽しむ事ができる病院で、遠く不知火海を臨み、九州新幹線の高架が朝日に輝いて見える美しい環境にある。

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【Profile】
1973 熊本大学医学部卒 国立東京第一病院・麻酔科
1974 熊本大学医学部・麻酔科
1975 熊本大学麻酔科助手
1976 熊本赤十字病院麻酔科医師
1977 熊本大学麻酔科助手
1980 熊本大学麻酔科講師
1981 国立国際医療センター麻酔科医長・ICU 室長
1994 国立国際医療センター緊急部副部長
2003 国立国際医療センター・手術部長、病棟部長
2005 独立行政法人国立病院機構 熊本南病院院長
■国際協力・医療技術移転短期専門家 ボリビア(サンタクルス総合病院)、エジプト(カイロ小児病院)、ネパール(トリブバン大学医学部)、ベトナム(チョーライ病院、バックマイ病院)

―病院の特長は。

熊本には4つの国立病院機構の病院と、国立のハンセン病療養所が1つあります。熊本南病院は国立病院機構の病院の1つで、熊本県の南部にあります。敷地面積は15万9千平米と大変に広大な中に250の病床を有する宇城地区の基幹病院です。

当院は結核療養所から始まりましたから、呼吸器疾患に関しては、結核のみならず、がんを始めとして専門的医療を提供することができます。結核に関しては県の最終拠点病院になっていて、結核を含めて、呼吸器疾患を系統的に予防・診断・治療を行うために呼吸器疾患センターを立ち上げています。

それと神経難病に力を入れており、60床の病床を持っています。こちらも神経難病の拠点病院の指定を受けて、神経難病センターを立ち上げています。当院の3本目の柱として、がん診療機能を向上させ、がんの診療拠点病院としての機能を整え、消化器がん、呼吸器がん、乳がんなど、がんの診断・治療をはじめとして、さらに緩和医療に至るまで一貫して診療・治療を行う体制を整えております。

神経難病センターでは、地域で開業されている先生方と連携し、在宅に返せる方は在宅に向けての体制を取っています。在宅介護はご家族への負担が大きいものですから、年に数回入院していただいて、家族の方には休んでもらい、その間に検査などをやります。停電などの災害時には病院として対応する体制を取っています。

また、家族だけで遊びに行くというのは大変ですから、病院で企画して梨狩りなどに行きます。呼吸器疾患センターでも同様の企画をして、在宅酸素をひく患者さんたちを楽しませています。最近の取り組みというわけではなくて、私が来る以前からやっています。

―いつから宇城ですか。

熊大の講師を経て国立国際医療センター(現国立国際医療研究センター)に23年いましたが、平成17年に院長として呼ばれました。

熊本市生まれ熊本市育ちですが、それまで宇城には1度、自動二輪の試験を受けるために来ただけでした。落ちましたけど(笑)。

この街にはそれくらいの思い出しかなかったですね。他は、私の母方の祖父が、この先の東陽村(現在は八代市に合併)の出だったので、小さいころに汽車で通ったことがあるくらいです。遠いと思っていました。

来て2年間は、病院横の宿舎に住んでいましたが、今は熊本市の実家から通っています。車で30分くらいですね。

慢性疾患の患者さんを扱うのは、こちらに来てからです。私は麻酔科で、国立国際医療センターでは麻酔科の医長、ICUの室長、手術部長、病棟部長でした。ですから前職では、急性期を専門にしていたわけです。

当時は手術の麻酔と集中治療など、現場の第一線で働いていたわけですが、今は外来でペインクリニックをやるのと、手術の麻酔に少し立ち会うくらいです。他にも優秀な麻酔の先生がいますからね。

700床を越える病院の病棟部長として、病院の運営は勉強していましたが、それでも院長は大変ですね(笑)。

―苦労とは。

どうしても地域の方々には昔の「結核病院」のイメージが強かったので、それを払拭して一般病院として認識してもらうよう努めました。

また、平成16年に国立病院機構に変わったころから、各地の国立病院は地域との連携を活発にしていくわけですが、当院の場合は私が院長になった時期と重なって苦労しました(笑)。

東京では急性期の病院にいましたので、そちらと比べては、もうちょっと活発にならないかなと考えています。もちろんこの病院の役割があります。地域の皆さんが、熊本や八代まで出かけていかなくとも充分で、しかもこの地区である程度は完結できるような医療をうけられる体制を作らねばなりませんし、熊本市や八代市で急性期の治療が済んだ患者がこの病院で継続的な治療が受けられるようなシステムも構築していかなければなりません。まだまだですが、それだけに頑張り甲斐があります。

―成績は優秀でしたか。

高校の時の担任には、医学部を受けるのを反対されました。成績が良くなかったんです。でも、あの時受けて好かった。医者は、やり甲斐のある仕事です。麻酔科医としての仕事は大変でしたが、その経験があったから、今は院長職という新しい課題ができました。

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熊本南病院は、国立病院等再編成計画により、旧国立療養所熊本南病院と旧国立療養所三角病院が統合したもの。周囲は鳥獣保護区に指定されている。

―麻酔科医は院長向きですか。

自分で患者を持つことはあまりありませんが、手術室に運ばれてくる患者さんに関しては良く知らなければなりませんし、術後も診ていくわけですから必然、病院全体を見渡せるようになってきます。また手術室にはさまざまな先生方が入ってきますから、それを上手く調整していくのも役割です。手術室で指揮棒を振るポジションは、麻酔科医なんですね。外科医がイニシアチブを取る時代もありましたが、「外科医には手技に専念できる環境を整える」というのが近年の考え方です。手術中に患者の全身管理を行うだけでなく、手術室では看護師や外科医、パラメデイカルスタッフなど全員がチームとして動きますから、そのチームのコンダクターとしての役割も麻酔科医が行ないます。だからこの10年くらいで麻酔科医の病院長は多くなってきました。

―なぜ麻酔科医に。

私は初め、外科医になろうと考えていました。ですが外科医になるにも、麻酔のことは知っておかねばならない知識ですから、まず麻酔科に入ったんです。ところが麻酔科に入ったら、これが非常に面白くて、抜けられなくなりました。

麻酔科医は今、足りないのが現状です。現在の麻酔はより専門的なっていますし、外科医側も同じく高度な技術と知識が必要になっています。麻酔は単に眠らせているだけでなく呼吸や循環も含めて全身を管理しています。患者も高齢化が進み、様々な合併症を持っていますし、簡単ではありません。

手術中の全身管理はすべて麻酔科医に任されています。安全で、質の高い手術を行うためにも、もっと麻酔の専門医が増えなければならないと考えます。


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