4月から医学部長になる内村直尚教授

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成果あがる久留米方式

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【Profile】
■1982 久留米大学医学部を卒業し、1986 同大学院医学研究科生理系専攻博士課程修了
■1986 久留米大学医学部神経精神医学講座助手
■1987 ー1989 米国オレゴン州 Oregon Health Science University 留学
■1990 久留米大学医学部脳疾患研究所 助手
■1992 久留米大学医学部神経精神医学講座 講師
■2000 久留米大学医学部神経精神医学講座助教授などを経て現職。福岡県出身:昭和31 年生まれ。

昨年3月に、かかりつけ医と精神科医が連携を強めて自殺者を減らす「かかりつけ医うつ病ネットワーク」(本紙2012年4月20日号に特集)を発表しました。

当時、久留米市内の連携報告数は月に50件前後でしたが、今は大幅に増えて、100件を超えています。各精神科病院の精神保健福祉士を推進委員にして、かかりつけ医と精神科を回ってもらった結果、332か所78%の医療機関が協力してくれたんです。

たとえば3か月間の連携149件の内訳を見ると、かかりつけ医から精神科医を紹介されて拒否した患者さんが3人いました。「精神科はきらい」とか「体の病気だから精神科は不要」という理由です。そして、精神科は紹介したが受診したかどうか確認できない人が19人いた。149人中の19人、12・8%です。そこで2次調査をしてみると、19人のうち14人は佐賀や鳥栖、大牟田など遠方の精神科医にかかっていたり、長い期間を置いて受診していた。結局精神科に行かなかった人は5人(3.4%)だけでした。この5人についてさらに調べたら、5人中4人はちゃんとかかりつけ医がうつ病の治療をしていました。もともと強い信頼関係があったわけです。残りの1人は単身者で、飛び込みで診察を受けたため、医師とうまく結びつけなかったんです。

このようにして、うつ病が疑われた人を医療から取りこぼさない基盤ができました。

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「かかりつけ医と産業医のためのうつ病アプローチDVD」は全45分。精神科を受診したくない患者への対応や、専門医に紹介するタイミングが、ロールプレイ(役割演技)で分かりやすく説明されている。久留米大医学部と久留米市保健所などが企画・制作した。

私は研修会などで、かかりつけ医に、「精神科を紹介しても行かない可能性があるので、次回の診療で確認してほしい。拒否反応の強い患者には無理強いせず、『当面自分が診るけれども、専門でないため限界があるので、症状が悪くなったら信頼できる精神科医を紹介する』と伝えておけば、精神科にうまくつながることが多い」と話します。

単に患者さんを内科から精神科に送るということだけではなく、後ろに精神科医が控えていることも連携だということです。その際かかりつけ医は自分の限界を知っておく必要があります。そこで「かかりつけ医および産業医のためのうつ病アプローチ研修」のロールプレイをDVDにして、久留米地区の医療機関に全部配り、福岡県内の全医師会にも送っています。最初800本作ったらとても評判が良くて、千本追加しました。

今年は現代型うつ病に対する診断と対応を取り上げます。もうロールプレイは終わり、いまDVDを作っているところです。

長所を伸ばすよりも欠点が指摘され、多様多彩な価値観を発揮しにくい時代です。多くの人がゲートキーパーになり、うつ病で苦しむ人や自殺を選ぶ人が減る世の中になればと思います。

一社会人として成長してほしい

昔の医者は、自分のことはさて置いて、苦しんでいる患者さんのために頑張ることを教え込まれたし、そうありたい人がなったものです。でも今は医療に夢や希望が抱きにくいので、苦労するより楽で安全な方がいいというふうになりつつあります。だから先輩は、魅力ある仕事であることを見せなければいけないし、楽しく働く必要があります。

医学部は学生の教育と研究、そして診療の場、さらに看護学科もありますが、その中で一社会人として適応できなければ医療人として失格だと思うんですよ。今の医療は多職種によるチーム医療ですから、社会人として関われなければ役割が果たせません。だから学生のカリキュラムに社会学や語学、あるいはボランティアを組み入れたい。

最近、対人接触がうまくやれない学生が多いんですよ。成績がいいから医者になろうとするんですが、人と接することに不慣れだから、やってみたら患者さんと信頼関係が作れず、それが苦情や訴訟のきっかけになるんです。そういったことを授業に取り入れ、実習やグループ学習などを工夫したいですね。

人とうまく関われないことがストレスになって大学を辞める人が結構いるんです。あるいはどうしようもなくなって担任の紹介で精神科に相談に来るんです。昨年、学内の健康スポーツセンター(相談室)に、カウンセラーだけでなく、新しく精神科医を常勤として配置しました。

意欲を持って入学した学生が去っていくのは、親にとっても社会にとっても、すごくもったいない。人は宝ですからね。その宝物を、我々は責任を持って育てなければならないわけです。そのために、学生それぞれを活かせる環境とシステムを作っていこうと考えているんです。

学生の時にいろんな体験をしてほしい。命の大切さを学ぶ機会は身近にいくつもあります。今はそれが見えにくくなっていますが、困っている人に実際に触れなければ分からないことは多いんです。そこから教わることは、授業よりも深いかもしれません。ぜひ人間性あふれる医師を育てたいと思います。


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