佐賀国際重粒子線がん 治療財団 理事長 十時 忠秀
謹賀新年
年明け早々ではあるが、昨年末に起こった政界の大変動は、今年も様々な場面で混乱を生じさせるであろう。日本再生でもあるこの激動の年は、私どもの九州国際重粒子線がん治療センター(サガハイマット)プロジェクトにとっても、大きな節目の年となる。このプロジェクトのきっかけが芽をだしてから丁度6年、今年の5月にはセンターが開設される予定である。
ゼロからスタートしたプロジェクトは、当初想像していたよりはるかに厳しい道のりとなった。物事が始まる時には、人、金、物が揃わなければならない。これをバランスよく揃えるには、やる気だけでは不可能である。
昔より世の中には不可能を可能にした事例は山ほどある。今さらその研究でもあるまいと、がむしゃらに走ってきたが、気が付くといつの間にか開設目前まできてしまった。何かが起こっていることは間違いないが、何がそうさせたのかはよくわからない。
考えてみるとがんに特化した医療施設の実現は、がんの蔓延する時代としては、待望された〔天〕の時ではある。建設場所は鳥栖市、九州新幹線新鳥栖駅の目の前、九州の患者さんを受け入れるには、またとない〔地〕の利ではある。総事業費150億という巨額の資金を調達するため佐賀や博多の財界が音頭をとり、九州財界が動いた。医療スタッフや患者確保のために大学病院が手を組んだ。各県医師会の賛同も得、九州のNHO(国立病院機構)も参加してくれた。佐賀県が牽引してきたプロジェクトに福岡県も手を伸べた。目的も手法も違う様々な組織が、絡み合いもつれ合い、そしてひとつになっていった。
組織を動かすのが人であるならば、この流れはもう〔人〕の和としか言いようがない。天、地の恵みを超えたところに、人の暖かさと強さがあったのだと実感している。世知辛い世の中もまだまだ捨てたものではない。病に苦しむ人々に〔からだと心にやさしい重粒子線がん治療〕を提供することが、この〔人〕達への一番の恩返しであろう。