「九州発 医療と福祉の新潮流」
福岡国際会議場 2日間で2千900人が来場
福岡国際会議場で11月21日と22日の両日、日本経営協会主催の「第8回九州ホスピタルショウ2012―ふくおか福祉機器展」があり、初日1千480人、2日目も1千450人の参加があった。
初日の開催あいさつで、ホスピタルショウワーキング委員会の委員長を務めた、浜の町病院の安井久喬院長は、「日本が直面している低成長下での少子高齢化社会を乗り切るには、医療、介護、福祉体制の改革が急務」だとし、医療崩壊の深刻さが増す中で、「新しい時代に対応する、医療と福祉施設の経営への各種提案をしたい」と、意義を強調、続いて九州大学大学院農学研究院の白畑實隆教授が「身体と社会を健康にする水=還元水」について講演した。
2日目の特別招待講演では、九州がんセンター臨床研究センター臨床腫瘍研究部の大野真司部長が「本当の医療・緩和ケアの大切さ」について話し、座長を九州大学病院の久保千春院長が務めた。
大野部長は「化学療法を受けたがん患者にアンケート調査すると、1983年には嘔吐、誤診、脱毛、息苦しさ、倦怠感、睡眠障害など、体の悩みが上位にあるが、1993年は心の問題が増え、2002年の調査では家族への影響など、社会的なものが増えた」と海外のデータなどを示し、乳がん患者のうち、うつ病(適応障害を含む)にかかるのは20~25%で、配偶者も同様の頻度でうつ病になるというデータも同時に示した。
九大病院で食道がんが専門だった大野部長は、食道がんになった男性の妻がうつ病になる頻度の低さを自身の経験から話し、「女性のがん患者がうつ病になると、夫婦が共倒れになる場合がある」と危険性を語り、サイコオンコロジーの論文数では、乳がんに関するものが圧倒的に多いと語った。また、患者が抗がん剤を拒否する割合は、一般的な場合が8%なのに対し、うつ病状態のがん患者は48.7%であると話した。
さらに「緩和ケアというと終末期の患者というイメージがあるが、早期・診断の時からするべき。場合によっては検診を受けてがんではなかった人に対しても必要だ」とも語った。がんではないことを信じられずに、思い悩む人もおり、アドバンスケアプランニング(前もって気がかりや価値観を確認する作業)が有効だと語り、早期の緩和ケアは緩和ケアがない場合よりも予後が良好だとのデータも示した。
大野部長の講演は「次のうち乳がんにならないのはどれでしょう―ねこ、まぐろ、お父さん」というクイズで始まり、参加者をユーモアで愉しませた。
開催に尽力した医療関係者は次の通り。
- 【委員長】
- 安井久喬
- 浜の町病院院長
- 【副委員長】
- 安藤文英=西福岡病院院長
- 田中 二郎飯塚病院院長
- 【委員】
- 大塚毅=宗像医師会病院院長
- 江頭啓介=さくら病院院長
- 寺坂禮治=福岡赤十字病院院長
- 高橋成輔=福岡県赤十字血液センター所長
- 藤堂景茂=聖マリア病院顧問
- 平祐二=原三信病院理事長・院長
- 成冨由司=原土井病院院長
- 渋谷恒文=新小倉病院院長
- 樗木(おおてき)等=佐賀県立病院好生館副理事長・館長
- 中村夏樹=新別府病院院長
- 堀和行=高野病院副院長・事務長
- 宮川栄助=済生会 熊本病院院長
- 神坂登世子=福岡県看護協会会長
- 塚崎惠子=福岡市民病院看護部長
- 猿渡祐子=久留米大学医療センター看護部長
- 【顧問】
- 今泉暢登志=河野病院院長・福岡赤十字病院名誉院長