特別寄稿 宇宙人とアポカリプス

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稗田 尚 Hieda Hisashi

特別寄稿 稗田 尚

夢で癒されることがよくあるという若い母親が近所にいる。彼女がフロイトの「夢判断」を読んでいれば、自分を知ることに役立つ。しかし癒されはしないだろう。

夢は不思議なものだが、それを分析するか、そっくり受け入れるかで味わいは違ってくる。

私も長い歳月の間に、ずっと記憶に残る夢をいくつか見た。

一つは小学生の時、宇宙人と会った夢である。―その宇宙人は丸顔の小柄な少年で、よその星から来たことは服装で推察された。彼は笑いながら手を動かし、私を宙に浮かせた。地面から三十センチほどの高さに、私は腹ばいになって浮遊した。

それは楽しく素敵だったが、しかし不自由でもあった。ふわふわ浮いて、体が自由にならず、少しイライラした。引力から解放されたおかげで不自由になったのである。だから手を地面につけて体を回した―

精神分析家は、子供が見る夢の典型だと片付けるだろうが、私はそうはとらえず、「自由と不自由の補完関係」と考える。生と死もまさしくそうだ。

次は四十代に見た夢。―はるか上空に、目のくらみそうな大きな光が一つあった。そして地上には、地平線まで覆い尽くすほど大勢の人々が座り込み、あるいは立って泣き叫んでいた。光の正体は、やがて地球に落下する大隕石だった。一握りの富豪や権力者は火星に逃れたが、彼らの運命もまた過酷なのは誰にも分かっていた。

大地は慟哭する人や悲鳴を上げる人で埋め尽くされていた。私もその中にいて、運の悪さを呪いたかったが、それでは絶望に油を注ぐだけなので、周辺にいる人のうち耳をこちらに傾ける余裕がまだ残っていそうな人たちに、「大変なことになったが、事態は好転しそうにない。だったら今までの人生がどれほど幸福であったかを思い出し、その一つ一つに感謝したほうがいい」と語りかけた。

それを聞いた幾人かは、無表情なまま首を垂れて、自分の思い出にそれぞれ入り込んでいき、しばらくたって、わずかに微笑む人や、あたたかな涙を流す人、そっと手を合わせる人などがそこかしこにいた。時が経つにつれてその数は、少しずつではあったが放射線状に広がり、増していった―

目が覚めて、自分には感謝に値する幸福はあっただろうかと胸のうちを探ったが、いくつもありそうで、しかしどれも的を得ていないようにも思 われた。


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