10月26日、福岡大学病院福大メディカルホールで第61回がんセミナーが開かれた。テーマは「がん治療中の食事」。そこで講師をつとめたのが、同大学病院勤務の栄養部副技師長で管理栄養士の山本葉子さんだ。
院内のNST( 栄養サポートチーム=NutritionSupport Team) では年に何度か発表するが、一般向けに講師をすることはあまりないのだという。少し緊張したと、記者に笑顔を向けた。
「栄養の概念をいったん捨てて、食べられる時に食べられるものを食べてもらっています」たしかに現場で杓子定規は通じない。その場に最も適した方法を選択するのが本物のプロでありエキスパートだ。
「具合が悪いと食欲が落ちてしまいますが、がんと戦うには痩せないことが重要なんです。余裕ができれば抗がん剤の副作用に合わせた食事や、栄養のバランスのとれた食事を考えていただいています」
学生の時に「入院している患者さんに喜ばれる食事を作りたい」と思ったのが、病院勤務を選んだ理由。
「入院中は食事も愉しみのひとつになるから」
栄養士の業務には、患者に栄養の役割を説明することも含まれ、時には外来患者に指導することも。そして回診に加わることもあるそうだ。
「入院患者さんたちがどのくらい食べたかを見て、食事の量が少なかったらなぜ食べられないのか、どうやったら食べてもらえるのかをカンファレンスの時に説明します」
医療従事者というと医師や看護師、薬剤師などを思い浮かべがちだが、彼女のような栄養士たちもまた、医療の現場を支えていることを忘れてはいけないだろう。
学生時代に想像していた以上に、今が楽しいと山本さんは言う。管理職なので最近は現場の声を聞く機会は多くないが、病院で働く栄養士であることに喜びを感じているそうだ。
最後に管理者としての心構えを訊いてみた。
「若い人のやる気をつぶさないように気をつけています」
(写真と文:平増)