研究マインドを忘れずに

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公立学校共済組合 九州中央病院病院長 飯田三雄

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Profile
山口県下関市出身
1971- 九州大学卒
1978- 九州大学医学部 助手
1981- 松山赤十字病院消化器科部長
1983- 九州大学医学部附属病院 助手
1988- 九州大学医学部附属病院 講師
1993- 川崎医科大学消化器内科教授
2001- 九州大学大学院医学研究院教授
2010- 現職

※久山町研究=九大が独自に行なっている、福岡県糟屋郡久山町の40 歳以上の全住民を対象とした、生活習慣病の疫学調査。町の協力で1961年に始まった。

小学6年の時の作文に、「医者になるのが将来の夢」と書いた。その記憶はないが、あとになって同級生から聞かされたと、懐かしそうに笑った。「4歳か5歳のころ重い病気になって、高熱と痛さで家の中を転げ回っていた覚えが、かすかにあります。終戦直後の日本はどこでも衛生状態が悪かったから、何かに感染したのでしょう。ところが、当時まだ高価だったペニシリンを注射してもらったら、劇的に効いた。それで子供心に、自分の命は自分で守ろうと思ったんでしょうね」。

インタビューを通じて、実直で芯の強そうな、生涯研究者という精神に貫かれた印象を受けた。

―九大の時代には、世界的に有名な「久山町研究」を牽引しておられたそうですね

ええ、第二内科(現病態機能内科学)にいましたから。一人一人の住民を生涯追っていくという、世界に類を見ない研究で、最初は勝木司馬之助教授、続いて尾前照雄教授、それから藤島正敏教授、そして私が4人目でした。今は北園孝成教授が受け継いでいます。昨年秋には50周年を祝う集いが九大百年講堂であって、私も参加しました。

―九州中央病院の特色を教えてください―

当院は330床ですが、1日に来る患者さんの数が、再来を含めて900人近くになります。急性期の病院として機能を果たすために、厚労省は入院と外来の比率を1.5倍にしたいと考えていますから、3倍近い数を少しずつ開業医にお返しし、今は2倍以下くらいになっていますが、ここが一番いいと、納得しない患者さんもたまにいます。そこで、開業医と当院とで協同して、チームで診ていく「病診連携」を推進しています。

公立学校共済組合が管轄している病院は全国8か所、東北、関東、北陸、東海、近畿、中国、四国、そして当院です。昭和30年代初めは330床が結核病床でしたが、結核が減って一般病院になったという歴史があります。その経緯から、教職員のためだけの病院ではないけれども、公立学校共済組合の病院として、学校の先生を中心として健診をしています。

―私(記者)の記憶では、医療の選択肢が少ない昔の方が、人生のQOLを下げずに、いさぎよく死ねたのでは、という気持ちもあります―

それはむつかしい問題ですね。たしかに昔は、医者や教師や弁護士が嘘をつくとは誰も思いませんでした。でもその方が、医療技術は遅れていても、皆しあわせだったかもしれない。でも、そこだけを云々するよりも、人間の気持ちが変化してきたこともありそうです。日本人独特の、寛容や慎み深さが薄れ、自己主張ばかりするようになり、互いに信じあえない時代になっている。患者が医者を信じなければ、患者さんにとって不幸です。そのような中でも、我々は医療をやめるわけにはいきません。

教師も最近はうつ病になって休職する人が多いそうです。ただ、ほかの職種に比べて多いということではなさそうで、会社員の中にも増えていると聞きます。社会風潮として、非常に自己主張が強く、ほかの人のことが考えられず、わがまま身勝手な人たちが若い人に増えてきて、周囲との和を考えながら謙虚に生きていくことが、少し忘れられているような気がします。そこに起因しているんじゃないかと私は思います。

―そのような今の時代でも、医者に目標を定めて勉学に励む若い人に、どんな声をかけてあげたいですか―

今いちばん危惧しているのは、研究に意欲や意義を感じない学生が、昔に比べて増えていることです。患者さんだけ診ればいい、それに必要な専門医だけ取ればいい、という感覚です。

私は九大の教授を定年退官してここに来ましたが、大学は教育と研究と診療という3つの柱があります。臨床医になるにしても、大学で研究的なマインドを学ぶ必要はあると思うし、それが日本の医療を今後も継続して維持する力になると思いますが、それがどうも薄れている。社会の損失だと思いますね。

患者さんを漠然と診るんじゃなく、臨床の症例を集めて統計学的に解析し、臨床疫学に役立てるような研究もできるわけですから、そういったマインドで患者さんを診ていくのは非常に重要です。これが私の、若い人たちへの願いです。

新しい診療ができればいいと考えていた医局員を、私の時代に無理矢理、久山町の研究に参加させたことがありました。あとで彼に、4年間研究に携わった感想をたずねたら、「あれに関わったおかげで患者さんの見方や、臨床の集計の仕方など、ものごとの考えがすごく勉強になった。いま患者さんを診療していくうえでとても役に立っている」と言っていますから、医師を育てるうえで研究の時期は必要です。それがそうなっていないから、歯がゆいわけです(笑)

―どんな趣味がおありですか―

中学校の時からソフトテニスをやっていました。大学生時代も西医体(西日本医科学生総合体育大会)で個人優勝したこともあります。それくらいテニス三昧でした。卒業したあとも続け、最近は控えていますが、体を動かすことが好きだから、今はウォーキングと読書、本はなんでも読みますが、特に歴史物が好きです。推理小説は東野圭吾がおもしろい。運動も読書も、ストレスの解消にはなりますね。


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