第25回日本サイコオンコロジー学会総会

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まだ置き去りにされがちな患者の気持ち

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サイコオンコロジー=がん患者の精神面のケアを目的とする、がん医療の領域では最新の分野。精神医学、社会科学、腫瘍学の3つの立場から研究され、精神腫瘍学とも訳される。

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ピアサポートを医療の現場に

第25回日本サイコオンコロジー学会総会(大会長=大島彰九州がんセンター・サイコオンコロジー科医長)が9月21日と22日の2日間、九州大学医学部百年講堂で開催され、過去最多の851人が参加した。

全日程のうち2日目の最後に開催された、公開会長シンポジウム「第2期がん大作推進基本計画における精神腫瘍学(サイコオンコロジー)の役割と今後」は、がん患者や一般市民も参加し、これから精神腫瘍学の向かう道筋をシンポジウム参加者全員に考えさせる場になった。

座長は大島大会長と、厚生労働省がん対策推進協議会会長代理で、NPO法人グループネクサス理事長の天野慎介氏。また、福岡県がん対策推進協議会委員で、あけぼの福岡代表の深野百合子さん、福岡県保健医療介護部健康増進課の白石博昭課長、日本サイコオンコロジー学会代表理事の大西秀樹氏がそれぞれの立場から、サイコオンコロジーに関わる意見を述べた。

天野氏は、12年前にリンパ腫を告知された時のことを、「頭が真っ白になり、帰りの車のアクセルとブレーキを踏むこともままならなかった。窓の景色が灰色に見えたことも、まるで昨日のことのようによみがえる。抗がん剤で髪の毛が抜けても、治療が終われば元に戻るが、医療者の言葉で受けた心の傷は今も治らない」と話し、「私を治療した、がん専門の医療チームの中に、もし精神心理のサポートをしてくれる人がいたら、どんなに心強かっただろう」と当時を振り返った。そして、「患者や家族の心の様相は大変なものだが、残念ながら12年前とあまり変わっていないと感じる。拠点病院にがん相談支援センターがあることを知らずに退院していく人も多いと聞く。これからは医療現場にもピアサポート(同じ病気を抱えた人によるサポート)が求められる」と語った。

深野さんは、自身のがん体験と、患者の不安、あけぼの会の活動、がん患者が望むサイコオンコロジー、がん相談支援センターにピアサポートの設置を、の5点について話した。その中で、「告知を受けた人は、たとえ早期でも、がん=死の思いにとらわれ、自分を責めたり、目の前に大きな壁が立ちはだかったように感じて希望を失う。少し落ち着くと、家族や仕事のこと、経済的な面や今後の治療について不安になる」と話した。さらに「病院では、周りに医療スタッフが多くて安心感があるが、退院すると孤独を感じるようになる。そんな孤立した状態で患者会に参加し、10年以上がんばっている先輩たちを見て、感動して泣き出す人もずいぶんいる」と語り、相談支援センターにはぜひピアサポートをと訴えた。そして最後に、患者会で活発に活動していた村本絹枝さん(本紙昨年10月20日号1面にインタビュー記事=今年9月永眠)が主治医の黒木祥司医師に宛てた手紙が朗読された。この手紙はあけぼの会九州大会で、会員が来賓の医師に向けて書いたうちの1つ(ページ下部に掲載)。

県保健医療介護部の白石課長は、がん対策推進基本計画の福岡県の計画を策定する立場から、サイコオンコロジーの役割と今後について「福岡でも死亡数の約3割をがんが占めており、先進的な治療を身近な場所で受けられることが大切になる」と述べ、サイコオンコロジーとの関わりについては、専門的な医療者の育成や認定看護師への研修、就労先の理解や子供へのがん教育を促進し、がんになっても安心して暮らせる社会の構築を目指すと説明した。

大西秀樹代表理事(埼玉医科大学国際医療センター診療科長・教授)は冒頭、「私もステージⅣの高齢の患者が家族におり、家族の大変さを身を持って知った」と語り、がん医療で心のケアが浸透するために、精神腫瘍科の専門家が何をすればいいかについて、「がん患者は精神的な苦痛を感じている。心のケアと言うと、いっしょに話すとか、寄り添うことだと考えるが、一方的に励ますだけでは患者にとって苦痛。ここを分からなければケアは失敗する。現状は全国の拠点病院の7割に精神科医が勤務している。インターネットでサイコオンコロジーと検索すれば登録医のリストが出てくる。来年にはもっと人数を増やしたい。医療者をめざす学生の研修もふくめ、卒後教育も広げたい」と話した。

沖縄県の医師が、ピアサポーターの研修プログラムが難航している理由を質問し、天野氏が「ピアサポートは草の根で始まった。プログラムにも地域の特性を活かしたいため、時間がかかっている。ピアサポートがもっと医療に受け入れられるには明確なルールが必要」と説明した。

会場にいた40代の女性は、「学会に来るのは初めて。市内で在宅ケアの仕事をしている。医師が患者の気持ちをどこまで汲み取っているか興味があった。来てよかった。このあとの市民公開講座も楽しみ」と話していた。

【学会長を務めた九州がんセンター大島彰医長のコメント】
がん医療において、患者や家族の、心のケアのニーズがあるにもかかわらず、それを言えない、あるいはどこに相談すればよいかわからないといった現状がみられる。第2期がん対策推進基本計画の中でうたわれている精神心理的苦痛の緩和を、具体的に目に見える形にするためには、医療従事者だけでなく、患者、家族、行政などが連携して取り組んでいくことが重要であるということを改めて考えさせられた。

黒木祥司先生へ

手術をした病院から見放され、途方にくれていた私を助けてくださったのが黒木先生でした。

再発してもあきらめることなく『がんと折り合いをつけて生きる』ことを教えていただき、勇気がわきました! まだ泣ける涙がある。心がある。感激がある。私はまだ生きている!

私のがんは、私に人生を深く見る目と、本当によく生きる生き方を教えてくれました。そんな考える時間と生きる時間を私に与えてくださった黒木先生に感謝して...。

今日の命をありがとうございます。

村本絹枝


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