国立病院機構 指宿病院 田中康博院長に聞く

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指宿から種蒔く人たち

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昭和58 年鹿児島大学医学部卒業。鹿児島大学病院講師、国立病院機構指宿病院診療部長を経て、平成21 年、同病院長に就任、現在に至る。循環器専門医、超音波指導医、心臓病学会正会員。

「5年前は指宿病院がつぶれるのはいつかと言われたほどでした。経営も運営も最悪の状況で、収支率75%、人件費率81%からのスタート。国立病院機構146病院の中で143番目の経営状況でした」。平成24年現在、地域の中で最も経営改善し、活気のある病院と言われるようになった理由とは。

Q―どのようにして病院再建を?

平成19年4月に診療部長として赴任し、平成21年から現職です。まずは地域の救急医療から始めました。同時に職員の意識改革のため病院のロゴを作り、看板の掛け替え(国立病院からロゴ入り指宿病院へ)を行ない、職員には常に病院の方向性を示すため「診療部長だより」、「院長だより」を院内ネットに流しました。院長だよりも今年の8月で50号になっています。また、成功したかどうかは分かりませんが、患者さんやそのご家族に対し病院が変わったことを示すために、毎週200本ずつ薔薇を購入し、各受付に飾るようにしました。変化を視覚的に訴える効果はあったと思っています。

Q―対外的な病院の方針は?

どの地域中核病院も経営難や医師不足で苦労していると思いますが、鹿児島大学医学部や指宿医師会との協力・連携を充実させました。また、指宿市、鹿児島県と良好な関係を持つように心掛けてきました。平たく言えば、院長の営業活動をまめに行うようにしただけです。地域医療の車軸となり、他の医療関連施設とともに医療運営を行ないましょうということで「HUB(ハブ)病院構想」を唱えてきました。その一つとして当院から鹿児島市への搬送能力を上げるためにヘリ搬送の重要性を主張し、指宿市の補助金で院内併設型の「指宿ヘリポート」を造設いたしました。救急車で1時間以上かかっていた搬送時間が10〜20分に短縮され、今はドクターヘリで多いに活用しています。この「指宿ヘリポート」は今でも鹿児島県で唯一の院内併設型ヘリポートとなっています。

Q―教育・研修も力を入れているとお聞きしていますが?

地域医療の問題の一つに医師不足があります。私は、地域医療格差は医療従事者の意識格差が原因の一つと考えています。地理的なギャップは仕方がありませんが、地域医療の面白みや生きがいを肌で感じてもらうと、地域医療も面白いと言ってくれる若い医師もいます。

とにかく地域医療に触れてもらわないと面白みを分かってもらえるチャンスすらありません。そこで少しでも若い医師が当院へ集まってくれるように努力しているつもりです。地域では少数精鋭にならざるをえないですし、半人前の若い医師でも都市部よりはるかに頼りにされると思います。

また、診療科が細分化されている大病院と違い、今はやりの「ドクターG」にならざるを得ません。当院の医師も「ドクターG的外科医」、「ドクターG的内科医」が当然で、若い先生たちも自動的に広角レンズ的な視野を養う事ができるのです。3次救急ですでに診断がついている患者さんを緊急で治療することも重要ですが、当院のように1〜2.5次救急を行い、診断をつけ方針を決定する医師とどちらが臨床力が有るでしょうか。専門医になる前にドクターG的な感覚を地域医療に携わる事で身につけてもらいたいと思っています。現在、鹿児島大学、鹿児島医療センター、九州医療センターの研修医が来ています。長崎医療センター、九州医療センターと姉妹病院締結を行い、後期研修(専修医)の受け入れも行ってきました。今はちょっと途切れていますが...。医療資源が限られている今こそ教育は大事で、種をまき、5年後10年後に花が咲き、実がなるのを楽しみにしながら若い医師と和気あいあいと仕事を行っています。

Q―今後はどのような方向に?

病院の改革をはじめて5年半になります。おかげさまで今年度は完全黒字化が達成できそうです。やっと次を考える余裕ができてきました。

次のステージは指宿地区だけではなく指宿ヘリポートを用いて鹿児島県県南の過疎地域の救急医療への貢献(地域救命センター)、教育や研修のできる真の地域中核医療センターを目指したいと思っています。

幸いにも改革が始まって5年が経過し、当院に就職してくれる専門医が集まりつつあります。うれしいことです。指導できる専門医が充実し、若い人が集う病院になってくれたら最高です。もちろん同時にメディカルスタッフの教育も充実させ、真の中核拠点病院になれると思っています。

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指宿病院のロゴマーク。指宿の菜の花をモチーフに、スタッフ1人1人が集まって病院を形作ることを表現し、緑の弧は葉で、病院に新しい風が舞い込み、地域に新しい風を送り出すイメージ。

平成24年末より、鹿児島県や指宿市医師会の推薦も頂いて獲得出来ました地域再生臨時特別交付金のおかげで心臓カテーテル検査室を新設します。一刻を争う急性心筋梗塞や急性心不全の患者さんを少しでも救命でき、鹿児島県南の患者さんのお役にたてれば幸いです。どこの地域中核病院も大変な思いをして医療を行なっているのが現状ですが、指宿病院再生のノウハウが少しでも参考になり、モデルになると幸いです。鹿児島県及び指宿市の医療行政の関係者、鹿児島県及び指宿市医師会、鹿児島大学医学部の各講座そして指宿病院全職員の頑張りに感謝しています。


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