福岡国際会議場に医師ら2500 人集め
● 横倉義武日本医師会会長が特別講演 ●
小さな声を忘れない学会に
福岡国際会議場と福岡サンパレスで9月1日と2日の2日間、日本プライマリ・ケア連合学会学術大会が開かれた。同学会は2010年に、日本プライマリ・ケア学会、日本家庭医療学会、日本総合診療医学会が合併したもので、連合としては3回目の開催。
初日の総会で、前沢政次前理事長を名誉理事長にすることを決め、開会宣言で井村洋実行委員長(飯塚病院総合診療科)が、山笠の鉢巻とはっぴ姿で、初の福岡開催を祝った。
続いて丸山泉理事長大会長(丸山病院=福岡県小郡市)が挨拶し、「本学会には2つのキーワードがある。1つは未来性。医療の今を見つめながら10年先、20年先の未来を指向する力は、たえず必要。2つ目は共感性。未来を見る時に忘れてならないのは、全国でたくさんの医師が真面目に働いている。小さな声の医療職から共感を得る学会であることがもっとも大事だと思う」と述べた。
また福岡県医師会の松田会長は「専門医療の進歩の反面、1人の医師が診療できる範囲が狭まったと言われ、プライマリケアの重要性が再認識されている。超高齢社会の日本に、包括的で継続的な在宅医療の提供は喫緊の課題。全人的医療を行なえる医師やコ・メディカルスタッフが求められる。福岡県医師会は昨年から、在宅医療支援診療所の医師を中心とした実務研修や技術研修を行ない、地域でもかかりつけ医と中核病院、訪問看護ステーションなどと患者の情報を共有するネットワークの構築が進められ、在宅医療への対応に努めている」と語った。
特別講演では日本医師会の横倉会長が、「日本医師会の生涯研修制度」について話した。
市民公開講座のパネリスト。左から松村龍彦弁護士(安原・松村法律事務所=福岡市中央区大名)、平田敬治(福岡山王病院外科部長)、伊藤重彦(北九州市立八幡病院副院長)、津田文史朗(遠賀中間医師会長=つだ小児科)、西野憲史(医療法人ふらて会西野病院=北九州市八幡東区)の各氏。司会はおのむら医院(遠賀郡芦屋町)の小野村健太郎院長がつとめた。
共感を与えた市民公開講座
2日目の午後から福岡サンパレスで「患者のための医療」をテーマに市民公開講座が開催され、医療に対する患者の迷いを5つの例題として、それにパネリストが答えるという形式で進められた。
司会の小野村健太郎氏がパネリストに投げかける問いかけはたえず患者と家族の側に立ち、それが参加者に共感を与え、小さな拍手やうなずきが何度かおこった。聴講していた医大生が小野氏からマイクを向けられ、自分の将来像を参加者にコメントする場面もあった。
弁護士をパネリストに選んだのもプライマリ・ケア学会らしく、未成年者が自分の治療の可否を選択できる権利について、「身体にリスクのある治療行為について法律では、患者の自己決定権に基づく医師の説明と患者の承諾が必要(インフォームドコンセント)であるというのが主流。未成年に治療の同意権はないが、年齢が増すごとに、本人の意思決定、自己決定を尊重していく度合いは高くなっていいのではないかと思う」などと答えた。
※プライマリ・ケア=身近にあって何でも相談にのってくれる総合的な医療のこと