「子供がHTLVー1キャリアになっても母親に責任はない」...森内浩幸長崎大学小児科教授が力説
「大学は研究者に精神の自由を保たせるところ」
=清水昭比古九大名誉教授=
七夕の日の7月7日、第48回福岡県小児科医会の総会が博多区下川端町のホテルオークラ福岡で開かれ、小児科医60人が集った=写真。
学術講演も用意され、九州大学名誉教授の清水昭比古氏が「一原子力屋の見た平成アカデミズムの病理」、長崎大学小児科の森内浩幸教授が「ヒトT細胞白血病ウィルスの母子感染予防=長崎県の25年間の取組みと今後の課題」をテーマに、それぞれ1時間講演した。
清水氏は大学が企業経営化している動向に触れ、「研究者に精神の自由を与えると、1割はさぼるが、9割は大切な仕事する」として閉鎖性が必要だと説いたほか、経済至上主義についてホワイトボードに数式を書き、「ネガティブフィードバックは民族に固有なもので修復機能があるが、ポジティブフィードバックでは富む者はいっそう富み、破壊に通じる」と話した。
また太陽光発電について「日本の原発をすべて太陽光発電でまかなおうとすれば、高知県と同じくらいの面積にソーラーパネルを敷く必要があり、実際には不可能。でも今それを言うと国民が怒るので、科学者は黙るしかない」などと話し、冷静な対処を求めた。
森内長崎大学小児科教授は、ATL(成人T細胞白血病)を引き起こす可能性のあるHTLV―1について、「母子感染を予防する3つの方法=完全人工栄養、短期母乳栄養、凍結母乳栄養のどれにも長所と短所があり、明確な答えがないのが現状。子供がHTLV―1のキャリアになっても、母親自身が知らないうちにキャリアになっていたわけだから、多大な責任を感じたり後悔したりしないこと」と述べた。
そして「子供が高校生になるころを見計らって、医療者も交えてキャリアであることを伝えた方がいいかもしれない。いずれ献血の血液検査や妊娠時の検査でわかると大きなショックを受けることになり、ネット上にもマイナス情報が多い」と話した。
総会後に開かれた懇親会で、松本壽通医師は日本小児科医会から「内藤壽七郎賞」を受賞したことが報告された。
来年度の総会は筑豊小児科医会が担当することになっている。