飛耳長目|聞き書き者

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失われた時を取り戻す

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ターミナルケアという言葉を初めて知った。

ターミナルケアという言葉を初めて知った。

全人的に見て医療行為が不適切な、回復の見込みのない人が、少しでも人間らしい生活を維持しながら最期を迎えられるようにケアしようという考えがターミナルケアで、聞き書きはそのうちの一つでもある。

聞き書き自体は、人の話を聞いて文章にまとめる行為全般を言い、口伝の聞き取りもその範疇に入るが、ターミナルケアにおける聞き書きは、主に自宅で最期を待つ患者から、過去の思い出や、あとに残される人に対する思いをじっくり聞き、本人の生きた証しとして文章に残すことが目的。誰にもできる資格不要のボランティア活動で、父の言葉を息子が聞き綴ってもよい。

自費出版とは異なり、ひたすら耳を傾けて素朴な言葉を拾うのを旨とし、完成すれば、患者が存命中ならささやかに祝い、あるいは葬儀の場などで、かつて親しかった人に配布する。写真の2冊は、共に聞き書き者が作成したもの。

女性ボランティアによると、九州では、宮崎でずいぶん活発だが、そのほかの県はこれからで、彼女自身、聞き書きの講習会で基本的なやり方を身につけたそうである。

おそらく聞き書き者の存在は、とても大きな意義を持つ。それは「失われた時を取り戻す」ということである。

老いていく寂しさ、死を目前にした深い孤独の中で、懐かしく心温もる思い出を聞き書き者に話し、自分史を綴ることは、評論家木原武一氏の言葉を借りれば、「失われた時を取り戻すとき、人は『孤独な時間の外』に出ることができる。この見出された不滅の時間の中では、孤独に苦しむことはない」となる。(孤独の研究=PHP文庫)。

その実、ターミナルにある人が聞き書き者と向き合っている時、とても目を輝かせ、生きた証しを残せることに大きな満足を覚え、感謝の意を伝えるという。

生きるということは、「寿命の長さの競争」をしているわけではない。長さの比較だけでは誰もが敗者になる。

寂しさと孤独に包まれながら去る人に、失われた時間を取り戻して不滅の時間の中に遊ばせる聞き書き者は、これからとても大切な存在となるにちがいない。(川)


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