「ヒトリシズカ」 誉田哲也
青春小説から警察小説まで、多彩な作品を作りだす誉田哲也氏による警察小説の連作短編集。
時系列や登場人物が交錯し、1人の女性、伊藤静加をめぐって繰り広げられる6つの物語。
物語は第一話「闇一重」で幕を開ける。
男が拳銃で撃たれて死亡した。容疑者、被害者、動機・・・。捜査を進めて容疑者の逮捕に至り、事件が解決したあとに突如現れた影が読者の思考を闇に突き落とす。それこそが真の物語の始まり。
1話ごとに語り手を変え、時期を変え、場所を変えて起こる事件。そして全ての事件に潜む影――伊藤静加の存在。
こうじゃないかと考えながら読み進めていくと、不意に「え?」と意識を持っていかれ、「ああ!」と驚愕する予測不可能なドラマ。そして読み進めるごとに濃く、恐ろしく、重みを増していく事件の闇。
気がつくと物語の語り手たちと一緒にその謎に翻弄され、真実に驚愕することになる。
それぞれの事件の顛末、その6つの物語が導き出す1人の女性の闇と悲しい運命。次々と現れる真実と謎、驚愕と困惑に興奮して思わず一気に読み終えてしまう。
ほかの警察小説とは一味違うこの興奮をあなたも体験してみませんか?
(紀伊國屋書店福岡本店=田中彰吾)