がんにまつわる行政の取り組み
ソーシャルワーカーの田村賢二さんが解説
福岡大学病院医療安全管理部のソーシャルワーカー田村賢二さんが、がんにまつわる行政の取り組みについて説明するセミナーが、福大メディカルホールで5月25日に開かれた。
このセミナーは同大の腫瘍センターが、がんについてさまざまな視点から考えようと始めたもの。今回で57回目を数え、毎回、患者や家族、一般参加者のほかに、白衣姿の若い職員や看護師も参加している。
この日のセミナーで田村さんは、福岡大学病院は高度な専門医療を提供する【特定機能病院】で、紹介状なしに初めて受診する場合は保険外併用療養費(選定療養)3千150円(病院により異なる)を別途支払うことになるが、他院の紹介状があれば保険外併用療養費は請求されず、紹介した病院も紹介された病院も、保険点数がつくと話したほか、公的医療保険の利かない費用と利く費用の種類分け、直近1年間に3回以上の高額療養費支給を受けると4回目から自己負担の上限額が下がること(高額療養費制度)を、時系列に棒グラフの変化で示して解説した。
さらに2012年4月から、保険窓口に申請して「限度額適用認定証」を取得すれば、それを提示することで、入院、通院、院外薬局のどこでも、所得によって決められた高額医療費制度の限度額までしか請求されないことも話した。また、公的医療保険と民間保険の違いを説明し、持病があっても加入できる民間保険は、加入条件や保障条件をよく確認することが大切と語った。最後に「患者さんによってケースは異なるので、担当医師やソーシャルワーカーに相談してほしい」と話した。
高齢の女性から医療保険と介護保険の合算(高額介護合算療養費支給)と、保険の利かない先進医療について質問があり、田村さんは「担当の医師や窓口によく聞くこと」と助言した。また福大で昨日がんの手術をしたという中年の男性から「自分は国民健康保険。限度額適用認定証を活用したい」とたずねられ、「入院費は高いので活用できるはず。自己申告ですぐに役場が発行してくれるので、持っていればなにかと便利」と答えた。
終わりに司会を担当した田中俊裕腫瘍血液内科医が、「医師はがんの診断や治療には懸命に目を向けるが、医療制度や医療経済もとても大事。医療控除の制度を知っているのとそうでないのとでは大きな違いが生じる」とまとめた。
次回は6月22日13時から同会場で、福岡大学病院臨床研究支援センターの高比良誠也氏が、がんの臨床試験について話す。