「幸福な食卓」 瀬尾まいこ
2005年第26回吉川英治文学新人賞を受賞し、映画化にもなったベストセラー小説。
物語の冒頭は「父さんは今日で父さんを辞めようと思う」という衝撃的な一言からはじまる。
主人公、佐和子の家族は少し変わっていて、父を辞めると宣言した父、家出中なのに料理を届けに来る母、元天才だった兄といった家族構成で、それぞれが心に傷を抱えながらもつながり、支え合って再生していく家族の姿に、涙がにじむ。
どんなにつらく苦しいことがあっても朝は必ずやってくる。その現実を受け止めて、一歩一歩進んでいくたび、人は成長していくことを本書は温かく教えてくれる。
疲れた時、落ち込んだときに読むと、心にすっと優しくしみわたり、元気な時に読めば心がもっと元気になる、心の処方箋のような作品だ。(紀伊國屋書店福岡本店=宗岡敦子)