若い先生がたに伝えたい外科医の魅力

  • はてなブックマークに追加
  • Google Bookmarks に追加
  • Yahoo!ブックマークに登録
  • del.icio.us に登録
  • ライブドアクリップに追加
  • RSS
  • この記事についてTwitterでつぶやく

九州大学 消化器・総合外科 前原喜彦

5.jpg

PLOFILE
1983九州大学大学院医学系研究科外科系を修了、同大生体防御医学研究所生化学部門助手。 1985同大医学部附属病院助手(第二外科)。 1991同大医学部附属病院講師(第二外科)。 1995ハーバード大学医学部がんセンターへ客員助教授として留学。 1996九州大学医学部附属病院講師(第二外科)。 1999同大大学院消化器・総合外科(第二外科)助教授。 2002同大大学院消化器・総合外科(第二外科)教授。現在に至る。

私は中学生まで長崎県の炭鉱の島に育ちました。この島の病院は24時間、すべての診療科が、急患に対応しており、今思えばたいへん恵まれた医療環境にあったと思います。また、急患にてきぱきと対応する医師の姿は子供心にも頼もしく思えました。このようなことが、私が医師を目指した原点かもしれません。

外科医にとって手術し、患者さんが治癒を目指すことのお手伝いをできることは本当に幸せなことだと思います。その結果、患者さんが病を克服する姿をみることは大きなよろこびです。術後の患者さんは手術の侵襲のために、あるいは痛みのために、いったんはそれらに耐える状況となるわけですが、徐々に回復し、よろこびに満ちた表情で退院されていく患者さんをみることは外科医冥利に尽きます。多くの患者さんは執刀外科医に心から感謝していただいていますし、手術を受けられた患者さんにとって執刀医のことは生涯忘れられないようです。一期一会の精神で患者さんとの出会いを大切にすること、このことも医師にとっては大切なことです。

私は外科医として働くことを誇りに思っていますし、再び職業を選びなおせるとしても外科医になるだろうと思います。

一方で外科医の責任はたいへん重いものがあります。手術では患者さんは私共に命を預けてくれるのです。手術には様々な種類がありますが、基本的には患者さんの体にメスをいれることには違いはありません。当然のことながら、行なう手術法には理論的根拠が必要ですし、段階を踏んだトレーニングも必要です。確立した外科医を育成することは簡単なことではありません。

確立した外科医とは、どのような人をいうのでしょうか?

患者さんへの思いやりが大切なことはもちろん、外科の歴史を学び、疾患に関する深い造詣をもつこと、術前の画像診断を手術に応用できること、高い手術技術を持ち、すぐれた判断力を有すること、高い倫理観をもち、患者さんに感謝の心を忘れないこと、またチーム医療のリーダーとなれることなどなど、少し考えるだけでも様々なことが思い浮かびます。このような外科医を育成するには大学病院のみではなく、関連病院と一体となって継続的な教育をしていくことが重要です。このようなすぐれた外科医を育成することが最も重要な私の仕事です。

外科志望の若者が減少していることが報告され、報道にも取り上げられたことは記憶に新しいところです。しかし、最近少しだけ志望者の減少には歯止めがかかったように感じています。以前は技術は習うものではなく、盗むものといった風潮がありましたが、今中堅からベテランの医師には若い外科医にちゃんと技術を教えるように指導しています。

内視鏡を用いて手術を行う内視鏡外科が急速に広まりつつあり、内視鏡手術のトレーニングのために、若い先生方には器具を用いて修練するドライラボや、大動物を用いたトレーニングに積極的に参加する機会を提供し、段階的なトレーニングを行なっています。若い医師に十分な手術のトレーニングを積める環境を整備することや、働く環境に気を配ってあげることで、外科志望の若者は増えていると実感しています。

また、私の専門のがんの患者さんにとっては、がんの再発は大きな問題です。たいへん残念なことですが、完璧な手術をしたと思ってもなお再発がおきる患者さんがおられます。再発をした患者さんのそばに寄り添い精神的な支えとなること、また、がんの再発に対して様々な症状が出現してくるわけですが、その症状を軽減する緩和医療に精通することも外科医には重要です。

このように医師にとって多面的な学習が重要です。私は研究会などに参加し、最新の知識を吸収することの重要さを強調しています。

6.jpg

満開の桜の下で医局員と(4月4日)

このような患者さんを救うためにはがんの再発を予防することは重要なテーマの一つです。がんを根絶すること、あるいはがんの再発を完全に予防することは私の夢です。私の科では患者さんから摘出したがんの標本を用いて、再発を予防するために日夜研究を行なっています。患者さんの状態をつぶさに観察し、標本を詳しく調べることでたくさんの、今までわからなかった事実がわかってきました。

進化論をとなえたダーウィンは「最も強いものが生き残るのではない、最も賢いものが生き残るのではない。変化しうるものだけが生き残る」とその著書の「種の起源」の中で述べています。がんの征圧には常識にとらわれず、大胆な発想の転換が必要であるように思います。

新しい発想をもち、高い志をもった若者が私の科には集っています。中には臨床を中心として研修し、研究はしたくないという若者もいますが、一方で研究を始めるとはまって日夜研究に没頭する若者がよく見られます。新しい事象を科学的に追求し、新しい事実を発見することにはなにごとにも代えがたいよろこびがあるのでしょう。医師としての人生のある時期研究に没頭することはその後の医師としての科学的な考え方を育むことに重要ですし、医師としての人生をより豊かにしてくれます。

来年の春、4月11日〜13日には福岡の福岡国際会議場、福岡サンパレス、マリンメッセ福岡の隣接する3つの会場で第113回の日本外科学会定期学術集会を開催させていただくこととなりました。

この学会は外科の最大でかつもっとも歴史の古い学会です。我が国の代表的な外科医が集い、最新の外科治療について討議することになります。私はメインテーマを「創始と継志(そうしとけいじ)」とさせていただき、日本の外科学の歴史と発展、そして今後の外科学の潮流を俯瞰できる学会を企画し、夢のある企画の準備をすすめているところです。研修医を含む若い外科に興味を持っている先生方、外科医を目指しトレーニング中の先生方が参加できるユニークな企画も準備する予定ですので、外科に興味のある若い先生方にも奮って参加していただきたいと思います。

外科医は患者さんの命に最も近く、患者さんに感謝され、そして疾患と戦うために様々なことに取り組んでいます。九州大学消化器・総合外科では広い知識をもち、高い専門性を有し、人間的にも信頼しうる外科医の育成に全員で取り組んでいます。高い志をもった若者に外科の門をたたいてほしい。そう心から願っています。


九州医事新報社ではライター(編集職)を募集しています

九州初の地下鉄駅直結タワー|Brillia Tower西新 来場予約受付中

九州医事新報社ブログ

読者アンケートにご協力ください

バングラデシュに看護学校を建てるプロジェクト

人体にも環境にも優しい天然素材で作られた枕で快適な眠りを。100%天然素材のラテックス枕NEMCA

暮らし継がれる家|三井ホーム

一般社団法人メディワーククリエイト

日本赤十字社

全国骨髄バンク推進連絡協議会

今月の1冊

編集担当者が毎月オススメの書籍を紹介していくコーナーです。

【今月の1冊, 今月の一冊】
イメージ:今月の1冊 - 88. AI vs. 教科書が読めない 子どもたち

Twitter


ページ上部へ戻る