カウンセリングとプレイセラピー

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坂梨 圭(臨床心理士)

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60年代に学校恐怖症で学校に行けない子どもが米国で認知されてから、登校拒否から不登校に呼び方が変わった。

今の日本では13万人前後がそれに該当する。スクールカウンセラーの配置や専門教員の増員などの対策はとられているが、なかなか減少しない。

子どもの不登校で親子が相談に来た時、母子を並行面接することが多い。特に小学生の場合、家族の理解や対応で子どもの不適応状態が改善されることが多いからだ。また子どもに対しては、自分の内面を十分に語る力が育っていないため、プレイセラピーという「遊び」通して、内面に抱えている問題を自由に表出させて不適応状態を改善させる方法をとる。

子どもが学校に行きたがらない場合、ほとんどの親は叱咤激励し、それでも行かない時は「○○を買ってあげる」などの交換条件で登校させようとする。それで学校に行き出すこともあるが、今度は学校に行こうとすると「頭が痛い」、「おなかが痛い」など身体の異常を訴えることも多い。小児科に連れて行っても異常が認められず、親は途方に暮れることになる。

小学1年生のA子は教師に叱られたことを契機に不登校になった。母親は「学校に行かないと勉強について行けなくなり、友達もいなくなって、あなたが困るのよ」と説得して学校に連れて行こうとした。

不登校が1か月続いたころA子と母親は私の所に相談にきた。A子は2人姉妹の妹で、とてもおとなしく、不登校になるまで母親を困らせることはなかったという。そこで無理に学校に行かせたり登校刺激(学校の話や、プリントを渡したりすること)はやめ、家でゆっくり過ごすことを目標にし、週1回のプレイセラピーと母親のカウンセリングを行うことにした。

私は母親のカウンセリングを担当したが、最初は子どもが学校に行かないことの不安と理由のわからなさ、次には担任の指導に対する不満がずっと語られた。「先生がきびしすぎるから」、「A子のことを少しでも理解してくれたら」など、落ち着いた口調ではあるが不安と不満を語っていた。

A子は当初、自発的に遊ぶことは少なかったが、セラピストがゆったり見守る中で、自分で遊びを選び、セラピストに話しかけることも増えてきた。

そんな時、プレイセラピーで、A子にHTPテスト(家と木と人を描く)を行なった。色使いは明るいが、家にも人にも木にも影があった。A子の了解を得て母親にその絵を見せると、一瞬顔を引きつらせて「この影はなんでしょうか」と尋ねた。

「さて、何でしょうか」と私は聞き返した。母親はしばらく沈黙したあと、姑との関係を語り始めた。その時から母親の悩みがカウンセリングのテーマになり、母親自身の内省時間が増えてきた。

家庭内での嫁姑の関係がA子の心に影を落としていたのである。家の中で落ち着かない、学校に行くと嫁姑と二人だけになってしまうとの不安がA子に投影されていたものと思われる。

一方、プレイセラピーでのA子はセラピストとの関係がとれたこともあり、かなり活動的になってきた。カウンセリングを始めて5か月が経とうとしていた。

ある時A子がぽつりと「学校にいってみようかな」と話した。再登校に向けて母親面接の時間が増えた。

A子は自分で学校に行く準備を始めていた。まずは母子で保健室に登校することになり、学校の校長・養護教諭・担任とも連絡を取りながら母子登校を支える体制を整えた。最初の相談から半年が過ぎていた。

当初は五月雨的だったが、2年生になってからは1人で登校できるようになり、母子並行面接は終結した。

家族関係の中で、親の不安が子どもに投影されることが多い。しかし、そのことに気づくまでに、「話をじっくり聴く」という時間がセラピストには必要である。


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