建築と健康

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第3回「千の風」

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風の流れる家

子どものころ、なぜ風が吹くのか不思議だった。大人になってその理由がわかった。空気が比重差や圧力差を持っているから、高きは低きに流れてそれが風になるということを。それは、台風のような自然現象でも建築の中を流れる微風も仕組みは同じである。

窓を開けても風が流れない家がある。それは、家の内外の圧力差が少ないためである。風通しの良い家を作るには、上下とかに窓の位置をずらすと、重力換気といって、温かい上部の軽い空気と冷たい下部の重い空気の比重差があるので、自然に空気が流れる。あるいは、南北とか外部の温度差の大きい方向に窓を2つ開ければよい。

風とは、それくらいシンプルなものなのだ。 今流行りの高気密高断熱というのは、窓を小さくして断熱性を高める。省エネで環境に優しいというが、これは自然の空気の流れではなく、エアコンなどの空調設備や換気設備を前提にそのエネルギー消費を減らすということである。

そもそも高気密・高断熱は北欧などの寒い国の仕様なのだ。どんどん温暖化する暑い国に北国仕様の家を作って、じゃんじゃん冷暖房するのは不思議に思う。

徒然草の第五十五段。「家の造りやうは、夏をむねとすべし。冬はいかなる所にも住まる。(中略)造作は、用なき所を造りたる、見るもおもしろく、よろずの用にも立ちてよしとぞ...」とは、まさに夏暑い日本の風土を言い、そして、最後の「役にも立たない部分を作るのは、見るのも面白く結構色々役にたってよい」というのも示唆に富む。機能性ばかりを重視するとつまらないといったところであろうか。

医学の話は門外漢だが、子どもたちのアトピーも増えているようである。人工環境下で、室内換気が十分でないところで埃や化学物質などを過剰に吸い込んでいるのも原因かもしれない。また、悪い「気」がこもることで心も淀む。徒然草まではいかないまでも、日本の昔からの伝統住宅はスカスカで、空気は漏れっぱなしだった。その代わりにアトピーや心の病も少なかった。私の実際に設計に関わった件でも、風のよく通る住宅を作ったら、アトピーが治まった例はいくつもある。

私たちは空気は見えないから無色透明で均質のようについ思ってしまうが、実は軽い重いきれいも汚いも含めて、空気は千差万別なものである。

「千の風になって」という歌があるが、人の想いだけでなく、さまざまなものを含みながら空気は地球上を流れている。そんな色々な空気が家の中に入り出てゆき、地球の風の一部になるような建築を作りたいと思う。

(鵜飼哲矢=建築家・九州大学大学院芸術工学研究院准教授)


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