「想い(1)」

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=日常とこころ=

想い

「このエッセイは、読んではいけません」

皆さんはこのフレーズでどう思われるでしょう。
「読んでいけないなら掲載するな」と怒る人、素直に読まない人、「ますます読んでみたくなる人」の3通りでしょうか。
「○○してはいけない」と言われると、ますます見たくなる心理を、カリギュラ効果と言います。
ローマ皇帝の映画を上映する際、あまりにも過激なので「18歳未満は見ることを禁止」としたところ、見たがる人が増えたといいます。
日本の昔話にもこの手の話は多く、例えば「夕鶴」では、見てはいけないと言われながら、ハタを織るつうの姿を与ひょうが見てしまったために、つうは鶴になって飛び去ったというお話です。浦島太郎も「開けてはいけない」と言われていた玉手箱を開けたために老人になってしまいました。詳しく知りたい方は「見るなの禁止」(日本語臨床の深層第1巻=北山修著作集/岩崎学術出版社1993)を参照ください。
人の心とは不思議なものです。心はどこにあるのでしょう。小学3年生ぐらいまでに聞くと、みんな「胸に手を当てる」。確かに「心」臓です。何かあると「どきどき」する。胸が痛む。小学校高学年以上になると頭(大脳)を指します。確かに記憶したり、考えたり悩んだりするのは脳です。頭では「大脳」だと思うが、身体の感じは「心臓」のような気もする。
10月8日、西新で会議と懇親会があり、次の会議まで時間があったので、天神まで歩きました。
月明かりと、お堀から通り抜けてくる風がここちよく、夫婦で歩いている人、ランニングしている人、イヤフォンを耳に真剣な顔で歩いている女性。救急車のサイレンの音が突き抜け、ミニパトカーが「路上のローラーボードはやめなさい」と連呼して若者4人が「しまった」という顔で滑るのをやめた。ありふれた日常です。こんな日常に感謝している人がどれくらいいるでしょう。
2011年は東日本大震災があり、多くの人の生命と日常を奪いました。被災者の方々は日常を取り戻すためにがんばっておられるし、そのための支援を多くの人々がしています。
この大震災は、普段はあまり考えない日常を、そして人生を考える契機となったようにも思います。
「昨日の続きが今日で、今日の続きが明日でしょう。あなたは、今、その幸せを、感じていますか」。長崎の被爆者の聞き取りをもとに創った「夢・そして...」のシナリオの一フレーズです。
近年の日本社会は、当たり前の日常を疑うことをしなかった。「自分だけは大丈夫」。「自分が事件や事故に遭うわけがない」など、根拠のない確信に満ちた無意識がありました。
時間的・空間的に「今、ここにいて、ここに生きていること」は、偶然で奇跡的なことであるのに、生きていることへの感謝、日常生活の有り難さを持てなかった。2011年3月11日はありふれた日常の大切さを教えてくれた事象だとも思います。
いろいろな場所で研修会や講演会をするたびに思います。あまりにも、忙しすぎる。疲れを引きずりながら、しかし「疲れている」を言うと、置いて行かれる不安が増す。その不安さえも語り合うことができない。日常を振り返る営みをあまりすることはしない。しないというよりは、できないといった方が正確かもしれない。毎日を生きることで精一杯。昨日のことは昨日、今日を生きることで、くたくた。そんな日本の社会をかいま見る。一人ひとりの心のサポートも大切ですが、組織疲労があるように思えてなりません。
自己紹介を忘れていました。坂梨圭、臨床心理士・教育学博士です。この連載は薬にも毒にもなりませんが、ありのままの想いを綴っていきたいと思います。好きな国はスオミ・フィンランド。好きな場所は北海道アルテピアッツァ公園。旅が好きです。(文と写真/坂梨圭)


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