葉室麟
秋月記 葉室麟
【角川書店 定価1785円】
近年、直木賞の候補に幾度も挙がっている注目の時代小説作家、葉室麟氏の著作。 出版当初、日本経済新聞の書評でも、「これをよまなくては損をする」という5つ星を獲得した傑作。
―筑前の小藩・秋月藩で、家老の専横の振る舞いや失政への不満が高まっていた。主人公は志を同じくする仲間の藩士たちと共に立ち上がり、本藩・福岡藩の援助を得て家老を失脚させることに成功する。藩政の刷新を進めようとする主人公だったが、一連の動きには福岡藩の策謀があった。
藩の財政状況は苦境にあり、様々な状況変化によっていつしか仲間との絆も揺らぎだし、主人公はひとり、捨て石となる 覚悟をきめるが――。
著者の葉室氏は元新聞記者とあって文体も読みやすい。江戸時代の話なのに今にも通じる共通点や、作中の多彩な人間模様に一気に引き込まれ、すぐに読破してしまう。
実はこの作品、 ある人から勧められたのだが、私も読後に別の人に勧めたら、その人にも大好評。歴史小説が好きな方は特に、もちろん今まであまり読んだことのない方にもお勧めしたい1冊。
(紀伊國屋書店福岡本店、三上)