コメディカルセッション、企業後援シンポなど新たな試み
第47回日本小児循環器学会総会・学術集会が7月6日から8日までの3日間、福岡国際会議場で開かれた。テーマは「熱く語ろう、明日の小児循環器」」。初日は朝から強い雨が降り続いたにもかかわらず、医師1100人、技師や看護師330人のほか、初級研修医、学生など総勢1600人が集った。
1日目の会長講演で角秀秋会長(福岡市立こども病院・感染症センター副院長)は「これまでの小児循環器医療30年を振り返って」と題し、先輩医の功績も織り交ぜながら各種グラフを使って講演、「医者には3つのカン(観・感・勘)が大切」と話し、4つ目の管を「粘り強さも必要」と紹介して会場を沸かせた。
基調講演では、福岡県出身で生命科学者の上田泰己さん(理化学研究所チームリーダー)が「繰り返す時間=体内時計と体内カレンダー」をテーマに、生命の体内には約24時間同期で振動する時計(時計細胞)と体内カレンダーがあるとして、聴講者を朝・昼・夜の3つに分け、立たせたり座らせたりしながら、体内時計のオン・オフを体感させた。
今回は新たな試みとして、看護セッションとコメディカルセッションが演題に取り上げられ、企業後援の特別シンポジウムとワークショップが企画されたほか、欧米やアジア諸国から、交流の深い17人が招聘され、2つの国際シンポジウムと14の海外招聘講演、2つの国内招聘講演が企画された。
会場1階の受付では参加者に「Love Heart! LoveChildren!」をデザインしたステンレス製のしおりが配られ、一昨年に改正臓器移植法案が可決されたことから、市民公開講座「どうなる、わが国のこどもの心臓・肺移植」も学会最終日に設けられた
会場には循環器治療に使う機器材も展示され、小児心臓外科手術を3D映像で見ることのできるモニターの前で、専用グラスをかけて画面をのぞき込む人の姿も多く見られ、「とてもリアル。学生の研修で使えば有効ではないか」などの声も聞かれた。
- 【記者の目】
- スクリーンに大きく映し出される心臓手術の様子を眺めているうち、関西在住の知人を思い出した。初めて授かった娘が心室中核欠損という病気だったそうである。とはいえ三十年以上も前のことで、当時知人は25歳。娘の心臓に穴が開いていると知った彼ら夫婦と身内の動転ぶりは推察できる。
娘さんが2歳の時、関西の大きな病院で手術を受けたと聞く。1歳では体力が持たず、3歳では遅かったらしい。執刀を担当する医師は娘さんを検査する際、知人と奥さんに次のように言ったという。「心臓が悪い女の子は美人が多いですね」。そしてこうも言った。「心臓は休むことなく動くから、手足の筋肉よりも強いですよ」
医学的な根拠はどうであれ、この言葉が友人夫婦にどれほどの支えとなったか、想像に難くない。
「お医者さんの顔と名前は忘れたが、言葉はずっと残っている」と知人は言った。今回の日本小児循環器学会総会で掲げられた「Love Heart! Love Children!」。患者の向こうにいる人たちにも心はきっと届くだろうと思った。
その娘さんは今3人の子どもの母親。知人は祖父になった。