日本心臓核医学会が第21回総会、学術大会

  • はてなブックマークに追加
  • Google Bookmarks に追加
  • Yahoo!ブックマークに登録
  • del.icio.us に登録
  • ライブドアクリップに追加
  • RSS
  • この記事についてTwitterでつぶやく

「心臓核医学と社会への貢献」テーマに

講演する福山尚哉新古賀病院院長

講演する福山尚哉新古賀病院院長

第21回日本心臓核医学会の総会と学術大会が、6月24日と25日の両日、ホテル日航福岡と福岡国際会議場で開かれた。

今回のテーマは「心臓核医学と社会への貢献」

大会を主催した医療法人天神会新古賀病院(久留米市天神町)の福山尚哉大会長(同院院長)は大会開催に際し、「心臓核医学がいかに社会貢献しているか、そして将来の医療制度の方向性も見極めながら、心臓核医学普及のために何をするべきかについて大いに討論していただきたい」とし、シンポジウムやセミナーのほか、若手研究者に学会賞や奨励賞などが贈られた。

セミナーで演者を勤めた医師の皆さん

セミナーで演者を勤めた医師の皆さん

初日はホテル日航で理事会と評議員会、夕方からはイブニングセミナーも開かれて、大阪府立急性期総合医療センターの山田貴久氏が、MIBG 心筋シンチは慢性心不全患者における予後の予測に有用であることを種々の観点から語った。また大 阪府立成人病センターの堀正二氏は、エビデンスからみた慢性心不全の病態形成と治療戦略について話した。


セミナーで演者を勤めた医師の皆さん2

翌25日の会長講演で新古賀病院の福山院長が、長年研究してきた「狭心症の見える化」についておよそ30分間話し、狭心 症をとらえた画像が認められなかった苦労話や最近の成果を報告、「費用効果の高い医療を供給し、不必要なサービスを避けること、虚血シンチを有用に使うことによって社会的貢献も果たせるのではないか」とした。

特別講演の演者は九州大学の尾形裕也教授。「わが国の医療制度の将来のあり方をめぐって」と題しておよそ1時間講演した

【特別講演】「わが国の医療制度の将来のあり方をめぐって」

九州大学の尾形裕也教授

九州大学の尾形裕也教授

今日は日本経済と医療経済の現状と、日本の医療体制を国際比較するとどんな特徴を持っているか、そしてどういう改革の方向を向いているかという将来の展望について話したい。

まず日本経済と医療経済の現状だが、2001年以降の国民医療費の伸び率、国民所得の伸び率、国民所得に占める医療費の割合を見ると、第一に国民医療費の伸び率は一番伸びて30%程度で、そんなに高くないのがわかる。かつては5〜6%、その前は10%くらい伸びていた時代もあるが現在はそのようなことは起こらない。ただ経済成長は、リーマンショックの影響などもあり、惨たんたる結果であるため、結果的に、経済に占める医療の割合がじわじわと上がっており、17年度に初めて9%を突破した。おそらく21、22年度は10%を確実に突破するだろう。

国民医療費についてだが、平成20年度は34兆8084億円だった。この財源構造について公費は37.1%、保険料が48.8%、完全負担が14.1%である。

ここで特徴的なのは保険料が5割を切っているということでこれは社会保険方式をとっている国としては珍しい数字である。原因は公費が4割近く入っていて税金でまかなわれており、国民健康保制度、後期高齢者医療制度といった財政力の弱い者に対して重点的な公費が投入されている結果であり、多額の公費をつぎこむことによって皆保険が維持されている実態である。

では国民医療費がどこに使われているかということだが、入院と外来を比較すると外来医療費が入院を上回っている状況である。外来医療を巡って病院と診療所を同じ土俵で比較してよいかということも言われるが、外来医療に病院も力を注いでおり、入院のウェイトが低い。また最近は調剤も伸びているがこれは医学の進歩の結果である。全体として、病院が国民医療費の半分を占めており、歯科を除く一般診療所がそのまだ半分という配分である。これについては診療所の報酬を削って病院の報酬を上げるべぎだとか、外来を削って入院の方に手厚い資源配分をすべきだという議論が行われている。

それから国民医療費がどこに分配されているかだが、医療サービス従事者(人件費)がほぼ半分である。次に医薬品費が21.9%で人件費と薬代で薬7割を占めている。以上のことから、日本の医療提供体制を国際比較の観点から3点にしぼってお話したい。

第一に日本は資源集約的な医療サービスが行われている点である。医療は一般的には労働集約的なサービス、つまり労働力を多く使うが、日本は国際比較すると、かなり特異である。というのは、日本の医療サービスは決して労働集約的ではなく資本が豊富にある一方で人員配置が極めて手薄である。つまり、資本集約的労働節約的であるというのが一つ目の特色である。国際比較をする場合、病床やCT,MRI などの性能が国ごとに違うため容易に比較はできないが、G7でみても、日本は医療における資本は世界一ということは明らかである。これに対して労働力はというと、これも医師、看護師の定義、業務範囲の違いにより容易には比較出来ないが、ざっと見ても日本は圧倒的に少ない。長らくこういうやり方でやってきたが、これが限界にきているのが昨今の状況である。

2点目だが、医療施設が非常に連続的な構造であるのが特色である。病院と診療所の区別、機能分担、連携が少なく診療報酬も外来をみても病院と診療所はほとんど同じである。国際的には病院と診療所では評価の体系が違うため、診療報酬が異なるというのが一般的であるため日本のようなケースは珍しい。

10年前の2001年の報告では、日本の医療体制の問題点として、機能分担が欠けている。つまり医療サービスにばらつきがあることが指摘されている。

3つ目に、民間主導の医療体制であるという事である。日本の医療費の86%は税金と社会負担である公的調達であるのに対し、医療提供は民間主導である。公的な医療保険制度を整備する事で医療提供体制の整備が急速に進んだように、この体制は少なくともこれまでは上手く機能してきたのではないかと思う。しかし問題はこれからだ。民間主導の医療体制について有効な政策が打てるかということだが難しい面があると思う。これからはソフトな誘導政策が必要になるが、これは役所が苦手としているところで、これまでも医療提供体制の政策はうまくいっていないと言える。

最後に、我が国の医療政策のあり方を巡ってという本題であるが、参考として、2008年11月の社会保障国民会議の最終報告において「選択と集中という考えに基づいて病床機能の効率化と高度化、地域における医療機能のネットワーク化、医療・介護を通した専門職種間の機能と役割分担の見直しと協働体制の構築を図る」と述べられているが、これは私の考えともほぼ一致している。この報告では選択と集中や機能分化を薦めていくことについて書かれているが、これは医療介護費用の増大の可能性を示しており、消費税増税を明確にうち出している民主党政権下ではつい最近、医療介護にかかる長期推計がうち出されたが、これは基本的には社会保障国民会議の最終報告を見直したものであり、ほぼ同じである。これまで医療における資本と労働力については3つの事が示されてきた。1つ目は、小泉構造改革における、医療費は増やす病院は削減する一方で、人員配置を増やすという事であるが、これは実際に今まで摩擦と混乱を引き起こしている。2つ目に社会保障国民会議と、この6月に発表された民主党の長期ビジョンの中の、医療費を増やす一方で提供体制のあり方を変えるということであるが、財源をどう確保するかが課題である。3つ目に、これまでの民主党政権がどう考えてきたかであるが、医療費は少し増やし、人員を増やすという考え方だが、病床数や医療機器については明確であり、日本の医療について何を目指そうとしているのか不明である。以上の3つについてであるが、将来これらのどれを選択していくかは世代間の考え方の相違、財源をどうするか、保険料、消費税の引き上げ等を考慮しつつ、国民的な議論が必要となるだろう。


九州医事新報社ではライター(編集職)を募集しています

九州初の地下鉄駅直結タワー|Brillia Tower西新 来場予約受付中

九州医事新報社ブログ

読者アンケートにご協力ください

バングラデシュに看護学校を建てるプロジェクト

人体にも環境にも優しい天然素材で作られた枕で快適な眠りを。100%天然素材のラテックス枕NEMCA

暮らし継がれる家|三井ホーム

一般社団法人メディワーククリエイト

日本赤十字社

全国骨髄バンク推進連絡協議会

今月の1冊

編集担当者が毎月オススメの書籍を紹介していくコーナーです。

【今月の1冊, 今月の一冊】
イメージ:今月の1冊 - 88. AI vs. 教科書が読めない 子どもたち

Twitter


ページ上部へ戻る