NHK「無縁社会プロジェクト取材班」
NHK「無縁社会プロジェクト」取材班・編著
(文藝春秋刊、1,400円)
2010年の流行語ともなった「無縁社会」。
1月にNHKスペシャル「無縁社会~"無縁死"3万2千人の衝撃~」が放送され大反響を呼び、以後、取材を継続し「おはよう日本」などで4月までに27本もが放送された。本書は番組やニュースで伝え切れなかった部分を取材メモを元に構成された。
09年1月、取材スタッフの飲み会であるディレクターが「ワーキングプアで取材した相手と連絡が付かなくなった。どこかで独りで亡くなっているのでは」とつぶやいた。「縁のない社会...無縁社会だね」とその夜この造語は誕生した。
身元不明の死体は全国の自治体が公費で火葬、埋葬しその特徴は「行旅死亡人」として官報に記載される。取材の結果、行き倒れや餓死による身元不明死体は3万2千人にも及んだ。無縁になるのはそれぞれ理由がある。会社の倒産、離婚、リストラ、独身のまま老いる孤独な環境。迷惑をかけないようにと、親族への連絡を絶つ人々。その結果が孤独死で、なかには親族に遺骨の引き取りを拒否され、それを受け入れているとあるお寺に宅配便で運ばれるケースもある。
若者の多くがこの番組を危機感をもって受け止め、ツイッターなどに無縁社会を危ぐするつぶやきが続いた。
自然崩壊する日本の社会。30年後半には団塊世代が終焉を迎え、未曾有の死亡率の時代が到来する。かつて連帯を求めた団塊世代だが、同時に無縁社会の道を切り開いた世代でもある。
(関戸 幸治)