長時間透析研究会 金田 浩 会長
1992年、フランスのCharra博士が、長時間透析の金字塔と評価される貴重な論文を、Kidney International誌上に発表しました。 その内容は1回8時間、週3回の長時間透析を実施した445名の患者の治療成績の報告であります。 表題は「Survival as an index of adequacy of dialysis」となっており、十分な透析治療を実施したかどうかを判断する基準は生存率である、と断定しました。
従来から、世界中で透析治療の効率の判定基準としては、Kt/Vが多用されており、Charra博士が生存率を重視したことは、当然とはいえ私にとって「目から鱗」でした。
長時間透析により、高血圧の管理が良好となり、その結果、10年生存率75%及び20年生存率43%と、丁度、日本の約2倍の良い成績をあげていました。
2005年、長時間透析が良いと信じる4透析施設の医師が中心となって日本における「長時間透析研究会」を立ち上げました。
当時は、人工腎臓技術料に透析時間区分が考慮されておらず、1回4時間透析が圧倒的多数を占めている中で、1回6時間以上の長時間透析を良いと信じ、実践している医師達は「変わり者」あつかいされていました。
2008年4月、驚くべきことに時の流れは長時間透析に傾き、厚生労働省は透析時間区分を考慮し4時間未満、4~5時間、及び5時間以上の3つの透析時間区分による人工腎臓技術料を設定しました。
厚生労働省はその理由として「副作用等により、透析時間を長くせざるを得ない患者がいることや、透析時間が生命予後に影響を与える可能性があること等を考慮し、透析時間に応じた、診療報酬上の評価を行う」と説明しました。
長時間透析が厚生労働省から正式に良い透析治療法である、と評価され日の目を見ることが出来るようになったことは、透析患者にとっても、また、透析治療に従事する医療者にとっても、大変喜ばしいことでした。
2008年11月、この追い風を受け、第4回長時間透析研究会において、研究会の会則や役員を決定し、正式に研究会としての形を整えることが出来ました。 その他、第4回長時間透析研究会で、長時間透析の定義として、週3回では1回6時間以上、週3回以上では週合計18時間以上と決定しました。
長時間透析研究会の目的は、透析患者が元気で長生きされることを、透析医療者と透析患者が協力して、達成することにあります。 そのため、長時間透析治療において必要となる透析医療者の技術の向上と教育、適切な食事や透析条件の検討など、標準血液透析とは異なる諸条件について、新たに研究しなければなりません。 さらに、長時間透析は、標準血液透析とは異なり、限りなく在宅血液透析に近い側面を有しております。
すなわち、透析医療者や患者を含め、多くの透析に関係する諸業種の方々が、多数参加し活発な議論の出来る、"基礎的かつ臨床的研究会"となることを期待します。