第64回国立病院総合医学会【市民公開講座】

  • はてなブックマークに追加
  • Google Bookmarks に追加
  • Yahoo!ブックマークに登録
  • del.icio.us に登録
  • ライブドアクリップに追加
  • RSS
  • この記事についてTwitterでつぶやく

氷河の流れのように アフガニスタンでの医療支援
ペシャワール会 中村 哲 現地代表

ペシャワール会 中村 哲 現地代表

この夏の大洪水でアフガニスタンの灌漑施設が大きな被害に遭い、修復の真っ最中ですがこの学会のために2日間かけて福岡に帰ってきました。

ペシャワール会は1983年、パキスタン・ペシャワールでハンセン病診療とともにスタートしました。86年には同国内のアフガニスタン難民への診療を本格的に始めました。

ハンセン病診療を柱としつつ、多い時にはひとつの基地病院と10ヵ所の診療所を運営しました。

しかし米軍の診療地域への侵攻や「反テロ戦争」による治安の悪化で、現在は1ヵ所の診療所だけが機能しています。私たちの診療活動を妨げたのは米軍や治安悪化だけではありません。00年から打ち続く大旱魃による渇水、砂漠化がさらに追い討ちをかけました。旱魃で診療所のある村が丸ごと難民化することもありました。診療所があっても水がないことには村人の生存そのものが不可能な事態まで追いつめられていたのです。

「飢えと乾きは薬では治せない」と私たちは1600本の井戸を掘り、03年からは農業用水路の建設を始めました。その25.5キロの用水路によって復興した田畑は3000ヘクタール。およそ15万人の生存を確保することが出来ました。工事には連日500人ほどの作業員が従事したので7年間で70万人の雇用が発生したことになります。用水路工事がなければ難民になるか、軍閥や米軍の傭兵になるしかない人々です。用水路工事がたくまずして地域の治安安定に寄与したのです。

総工費は約15億円で、全て会員の会費と支援者の寄付によります。用水路事業は日本の伝統工法を参考としました。コンクリートと鉄筋中心の近代工法でなく「蛇籠工」や「柳枝工」という江戸期に完成した工法をなぜ採用したのか。用水路は決壊するものである、ということを前提にした時に、コンクリートだと土地の人々にとってその修復は技術的・財政的にみて困難を伴うことになるでしょう。

ところがアフガン人は家を石と泥と日干しレンガで築き、子供も手伝う。だから男たちは生まれついて石積みの技術を持っています。彼らにとって蛇籠であればその修復・保全は難しいことではありません。

柳枝工というのは護岸した土手を柳の植樹で保全する工法です。柳の根は水を求めてその蛇籠の石の間にネット状に入り込み絡みつく。蛇籠の針金が切れるころには柳の根がしっかり石を抱き抱える。柳は防風林、防砂林にもなり土石流の歯止めにもなる。石の間には生き物も棲息する。今風に言えば環境に優しい治水工法でしょう。

私たちは用水路を完工し15万人の生存の基盤を確保しました。イスラム教徒である農民たちの精神の拠り所であるモスクとマドラサを建設していました。さらに用水路の最終地点であるガンベリ砂漠を開墾して「自立定着村」を建設しています。ここには用水路の建設現場で治水技術を習得した作業員=農民の家族が入植し、農業をやりつつ用水路の修復・保全を行うことが期待されています。

つまり私たちは

  1. 用水路=生存の基盤
  2. モスク・マドラサ=精神の拠り所
  3. 自立定着村=修復・保全機能

を建設することによって、アフガニスタンの1地域において、その復興支援モデルを提示できたのではないか、と考えています。


九州医事新報社ではライター(編集職)を募集しています

九州初の地下鉄駅直結タワー|Brillia Tower西新 来場予約受付中

九州医事新報社ブログ

読者アンケートにご協力ください

バングラデシュに看護学校を建てるプロジェクト

人体にも環境にも優しい天然素材で作られた枕で快適な眠りを。100%天然素材のラテックス枕NEMCA

暮らし継がれる家|三井ホーム

一般社団法人メディワーククリエイト

日本赤十字社

全国骨髄バンク推進連絡協議会

今月の1冊

編集担当者が毎月オススメの書籍を紹介していくコーナーです。

【今月の1冊, 今月の一冊】
イメージ:今月の1冊 - 88. AI vs. 教科書が読めない 子どもたち

Twitter


ページ上部へ戻る