世界における「日本の脳神経外科医」の学術貢献 九州大学大学院医学研究院 脳神経外科 佐々木 富男 教授
日本脳神経外科学会は、1948年に第1回が開催され、80年代には世界一流の英文雑誌に日本の脳神経外科医が書いた論文が多数掲載されるようになりました。日本の脳神経外科医が果たしてきた学術的功績が世界から認められるようになったのです。しかし、こうした日本人による学術的貢献度や世界各国の脳神経外科医の学術的貢献度、その国際間比較などに関する客観的なデータはありません。
日本の脳神経外科医が果たしてきた学術的貢献度を社会に向かって、そして世界に向かって発信するために、約2年間をかけて教室員一同でそのデータを集積・分析しましたので、その結果を基調講演として発表いたします。
調査した学術誌は、全領域の科学者が投稿するNature, Science, Lancetなどのトップジャーナル8誌、Neuron, Brain, Cancer Researchなどの神経科学系主要12誌、Journal of Neurosurgeryに代表される脳神経外科臨床系主要6誌の代表的英文誌に限定しました。
表1は、全臨床医学系研究者による論文数の経年的変化を示したものです("Web of science"を基に科学技術政策研究所が集計)日本は、アメリカ、イギリス、ドイツに次いで世界第4位ですが、02年頃からやや減少傾向にあります。
表2は、各国の脳神経外科施設からの英文論文数の経年的推移を示したものです。アメリカが第一位の位置を占め、かつ年々着実に論文数を伸ばしています。日本は90年代には、第3、4位のイギリス、ドイツを大きく離して第2位の位置をキープしていました。しかし、2000年以降、日本からの論文数は徐々に減少していますが、まだ世界第2位の位置を維持しています。日本の全臨床医学系医師による論文数が世界第4位であることを考えれば、脳神経外科医による論文数は世界第2位であり日本の脳神経外科医が奮闘している事を客観的データとして示せた貴重なものだと考えます。
しかし日本以外の先進諸国からの論文数が増加している一方で00年以降、日本の全臨床医学系研究者ならびに脳神経外科医による論文数が徐々に減少していおり、この事態 を憂慮しています。何らかの対策を早急に講じる必要があるのではないでしょうか。