第20回日本外来小児科学会年次集会が、8月27日から3日間、福岡国際会議場と福岡サンパレスで開催された。講演やワークショップ、カンファレンス、市民公開講座など多彩なプログラムに、延べ約2200人が参加した。また、20回記念式典も催され、学会の活動に顕著な功績のあった5名が表彰された。
会長講演「小児医療に求められる"地域力"」たはらクリニック 田原 卓浩 院長
人口減少と小児医療
年齢階級別人口統計将来推計によると、今後約45年間で、15歳未満の子どもの数、割合ともに現在の6~7割まで減少していくことが分かる。園・学校を含めて社会経済にも大きな変化が起こるだろう。
次に、職種別時間外労働をみると、小児科医(特に勤務医)の過重が非常に大きいことがわかる。小児科医数の推移はというと、総数は今後も増加するが、充足される地域との地域間格差、あるいは時間帯による格差が広がるだろう。一方、女性医師の占める割合(日本小児科学会会員のうち34%)は年々上昇している。
小児医療Teamが演出する絆
技術革新による情報伝達の迅速化・国際化が進む現代において自立への途上にある"子どもたち"への支援のニーズは多様化している。
米国小児科学会が概念として描いているMedical homeの基軸は「子どもと家族を守る」ことに置かれ、同様の医療サービスを提供するためにソロプラクティスを主体として発展してきたわが国の小児医療体制の概念を大きく変えることが必要になるであろう。日本ではこれまで、1次・2次・高度3段階の医療機関の役割分担をファジーなままにしてきた。米国では、これらの役割分担が明確化されている。勤務医の過重労働とも密接に関わる問題で、小児医療界全体で修正を図らなければならない課題である。
つまり、これからの小児医療の基軸が"医療機関"にではなく"子どもたちとその家族"に存在することを、われわれが率先して自らの行動や態度で示していかなければならないということである。次世代への"絆"を演出するために欠くべかざる術である。
地域を単位とした"総合小児医療"
資格や免許を備える人だけではなく自身の対峙する仕事に妥協することなく柔軟に、そして的確に対応できる人こそが"専門家"である。われわれ小児医療チームに求められる機能は疾病への対応(disease oriented pediatrics)と健康管理・疾病と事故の予防への対応(health oriented pediatrics)であり両者のバランスをとることを意識したプロフェッショナリズムを備えることが求められている。
概念として定着しつつある「家族志向の医療」に「地域」という二次元の広がりを加味し"子どもたちと家族"を守るための医療、すなわち「地域総合小児医療(Community Pediatrics in Japan)」を展開するためには医療という支援を必要とする"子どもたちと家族"に接している人々相互のパートナーシップが不可欠である。「総合する力」を涵養する人材育成が喫緊の課題である。