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聖マリアンナ医科大学病院 病院長 大坪 毅人

聖マリアンナ医科大学病院 病院長  大坪  毅人

 明けましておめでとうございます。皆さまにおかれましては健やかに新年をお迎えのことと拝察いたします。

 2020年は新型コロナウイルスが世界中を席巻し、現代社会における感染症の恐ろしさを痛いほど再認識させられた一年でした。当院におきましてもダイヤモンド・プリンセス号の横浜港着岸以来、第1波の収束する頃まではコロナ対策が最大の課題でした。それ以降はコロナ対策と通常診療の両立が課題で現在も継続中です。このような長期にわたる慢性的な災害とも言える中で、いかに早く情報を共有することが重要かを再認識いたしました。今後の展望を含め、当院での取り組みをお示ししたいと思います。

 まず、地方行政との連絡ですが、川崎市では行政の努力により防災に対する認知度が高い地域です。非常事態時における医療機関同士や行政との連絡網の作成と災害医療の啓蒙(けいもう)のため川崎災害医療ネットワークという研究会が2020年1月に立ち上がりました。

 ここではE社の医療介護連携のコミュニケーションツールが採用され、川崎市健康福祉局と新型コロナ患者の受け入れ医療機関がつながりました。このツールを用いて毎日の市内の新規患者数をはじめ、さまざまな情報を共有することができました。

 院内の情報共有ツールとしては、これまで主に救命センターで利用していた A社の医療関係者間コミュニケーションアプリを、新型コロナ診療に関わる院内医療スタッフ、さらには附属病院内のコロナ診療のコアメンバーに拡大しました。これを利用して最前線の情報を共有することができ、必要な対応、支援を遅れることなく提供することができました。

 次に対策会議などで決まったことは、すぐに議事録を作成し、その日のうちに院内メールで情報共有できるようにいたしました。

 当院では2019年より医療安全管理室内に、災害対策専属のスタッフを配置したことにより、議事録作成、情報共有などの業務に専念でき、より円滑に情報発信できたと思います。このほか、新たな決定事項はネット上の専用サイトにアップし、誰でも見られる環境を整備しました。

 しかし小中学校が閉鎖となった時、教職員の中で学校に通う子どもが何人いるか、明日からの診療業務に支障はないかなどの情報は手作業に頼るほかなく、今後の課題であります。災害時に限らず日常診療においても必要なところに、より早く、より確実な情報を提供するためITの進歩が必須な時代となりました。

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