九州医事新報社 - 地域医療・医療経営専門新聞社

経営状況を開示し、職員の意識を改革

経営状況を開示し、職員の意識を改革

医療法人 弥生会 弥永協立病院
弥永 浩 院長

1990年金沢医科大学医学部卒業。
社会保険田川病院消化器外科、公立八女総合病院乳腺外科、
久留米大学病院乳腺外科部長などを経て、2013年から現職。

 久留米市の中心街に開業して60年余り、地域のために医療を提供し続ける弥永協立病院。現在は、がん治療と高齢者医療を中心に、亜急性期病院として役割を担う。就任当時は経営危機だったという弥永浩院長に、現在の病院経営について話を聞いた。

─経営健全化に向けた取り組みは。

 私が父から当院を引き継いだのは2008年。当時は経営危機にありました。父の時代は、「医療を真面目にやっていれば病院がつぶれることはない」と考えていました。しかし時代の流れの中で、それだけでは病院も成り立たなくなってきました。

 現在は、毎月、経営コンサルタント、メインバンクの担当者を交えて職員と経営会議を行い、財務状況の把握に努めています。さらに、地域連携を強化し、紹介率を高めることを目的に、地域連携担当者と事務長で他院訪問も行っています。

 私が引き継いで最初に行ったのは、職員の経営に対する意識改革です。当院が背負っている借金をオープンにし、病院が成り立たなくなれば、自分たちの生活も成り立たなくなることを繰り返し話しました。理解してくれる職員が増えて、最近は経営のことも考えて行動してくれるようになりました。

 各部門の代表を集めて部署会議も行っています。各部門からの意見や要望を私が聞いて、可能な限り応えています。さらに、院内マナー、節約、外来業務、清掃、接遇など10の委員会を設置し、病院内の課題は基本的に委員会で話し合って決めていく態勢をとりました。

 職員全員がいずれかの委員会に所属。みんな忙しいので、昼休みを削って話し合いの時間をとってくれています。一人ひとりが何らかの役割を担い、それがモチベーションにもなっているようです。

 日ごろ看護師には優しさが一番大事だと話しています。患者さんは、看護師に知識とともに、優しさを求めています。看護も介護もできてこそ、看護師だと教えています。

─病院の特色、強みは。

 地域におけるかかりつけの病院としての機能だけでなく、がん治療を中心にすべての臓器の検査から、手術、化学療法、緩和ケアまで集学的な治療をコンパクトにできることが強みです。また、がん患者の心のケアを行う、がんのリハビリテーションも実施しています。

 入院環境も整っているので、地域の基幹病院から回復期の患者さんを受け入れる亜急性期病院として、地域医療に貢献しています。

 現在、久留米医療圏は、総人口の減少が続く一方、65歳以上の高齢化率が高まっています。今後も高齢者は増加すると予想されており、当院も受け入れが増えるでしょう。

 一人暮らしの方も多く、必要であれば介護保険を申請したり、施設を紹介したり、最後までサポートします。基幹病院もそれがあるから、紹介してくれているようです。これも当院の強みの一つです。

 スタッフには、自分が介護を受ける立場になったとき、どんなケアを受けたいかを考えて行動するように指導しています。実は、当院は職員の家族が手術したり、入院したりするケースが多いのです。働く職員たちが当院を信頼してくれている証拠です。離職率も低く、みんなが誇りを持って仕事をしてくれています。

─今後の展望は。

 今年、地域包括ケア病床を8床から10床に増やしました。今後は、高齢者やがん患者の治療に尽力しつつ、在宅医療体制の充実にも取り組みます。

 現在、若手の職員に、学会や、地区臨床医勉強会での講演活動への積極的な参加を勧めています。当院で扱う症例は幅広く、私も含め職員たちのスキルアップになります。今後も学術活動に力を入れていきたいと思っています。

医療法人 弥生会 弥永協立病院
福岡県久留米市六ツ門町12─12
☎0942─33─3152(代表)
http://yanagakyouritsu.com/


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