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地域医療の未来のために呼吸器内科医を育成

地域医療の未来のために呼吸器内科医を育成

宮崎大学医学部 内科学講座 神経呼吸内分泌代謝学分野
小田 康晴 助教(おだ・やすはる)

2008年自治医科大学医学部卒業。
五ケ瀬町国民健康保険病院、国民健康保険西米良診療所、
高千穂町国民健康保険病院などを経て、2019年から現職。
宮崎大学医学部附属病院・卒後臨床研修センター担当教員兼任。

 「宮崎県は、呼吸器内科を備える医療機関が少なく、専門医も充足しているとは言えない」と宮崎大学医学部附属病院・卒後臨床研修センターの担当教員でもある小田康晴助教は言う。専門医の育成と研修医の心身のケアが、地域医療の未来を開くと語る、その思いは。

─講座の取り組みを教えてください。

 呼吸器内科の医師を増やし、その中から専門医を少しでも多く育てることに比重を置いています。

 救急の現場で行う「ABCDE」という救命アプローチのチェック項目でも、A=Airway(気道)、B=Breathing(呼吸)と1、2番目が呼吸器関連です。それだけ生命の危機に直結する分野にもかかわらず、宮崎県は人口比率的にも専門医が少ないのが現状です。

 医局の人数も、関連病院を含めて20人に満たない。関連疾患も多く、私たちの手を必要とする患者さんはたくさんいらっしゃいます。とにかく医局の人員を増やし、1人でも多くの人に専門医を目指してもらうことが第一です。

 治療に軟性気管支鏡を取り入れており、特に、超音波気管支鏡を使ったリンパ節の針生検に取り組んでいます。リンパ節への転移があれば、気管支鏡検査で判別しにくい病変であっても9割5分ほどは診断が可能になりました。

─県内の呼吸器疾患の状況については。

 肺がん、肺気腫の要因ともなる喫煙率がさほど下がっていない印象を受けています。肺気腫の発症要因はほぼ喫煙。肺がんも、これまで診た患者さんの多くが高齢者または喫煙者です。まだ分煙の意識も低く、完全に禁煙するに至っていないのかもしれません。副流煙による受動喫煙の問題もあります。

 「加熱式たばこや電子たばこなら大丈夫」だと言う方もいますが、何らかの健康被害があることは否定できません。通常たばこの健康被害が証明されるのに数十年かかったことを思えば、電子たばこなどの健康への影響が証明されるためには、さらに数十年を要するでしょう。県民の皆さんに喫煙の害を知ってもらう啓発活動も進めていけたらと思います。

 肺がんは、毎年ガイドラインが変更されるほど、新しい治療法が出てきます。がんの遺伝子を調べる「LCスクラム」などの検査で遺伝子変異を特定し、より的確な治療薬や免疫チェックポイント阻害薬を使って生存率を飛躍的に延ばすことができるようになりました。他の疾患も新しい技術の開発が目覚ましく進んでいます。呼吸器内科の専門領域を習得すれば地域医療にも役立つので、ぜひ取り組んでほしいですね。

─研修医の育成は。

 2019年4月に、卒後臨床研修センターの担当教員になりました。まず感じたのは、研修医の必修カリキュラムの量の増加です。これまでは、内科に進みたければ内科をひたすら勉強すればよかった。現在の卒後研修プログラムでは、例えば脳外科に進みたい場合も内科、外科、救急、小児、そして地域医療などさまざまな分野の知識をまず学ぶ必要があります。

 2020年度からは、新たに外来20時間の実習も加わります。働き方改革との折り合いもつけなければなりませんが、知識や技術が不十分な医師を世に送り出すのは患者さんの不利益になります。

 センターでは4、5人の研修医に対して1人のアドバイザーが付きます。研修医が求められる課題をクリアしつつ、自身の「やりたいこと」を実現しながら力をつけられるようマネジメントしていきたい。医師として「現場で働く」という環境の変化についていけなくなる研修医もいますので、彼らの心身を管理するサポートも、私たちの大切な仕事だと考えています。

宮崎大学医学部 内科学講座 神経呼吸内分泌代謝学分野
宮崎市清武町木原5200
☎0985─85─1510(代表)
http://www.med.miyazaki-u.ac.jp/home/3naika/

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