九州医事新報社 - 地域医療・医療経営専門新聞社

地域の急性期医療支え続ける

地域の急性期医療支え続ける

足利赤十字病院
室久 俊光 院長(むろひさ・としみつ)
1986年獨協医科大学医学部卒業。
福田記念病院、獨協医科大学消化器内科学内准教授、
足利赤十字病院内科部長、同副院長などを経て、2021年から現職。




◎安定した病院運営図る

 私の院長としてのミッションは、2040年以降も当院が両毛地域の急性期の中核病院として機能するようにマネジメントすることだと思っています。

 医療をとりまく環境は激変が予想され、直近では「2024年問題」、医師の働き方改革が始まります。違反すると罰則が科される非常に厳しいものです。対応はまさに待ったなしで、医師やその他の職種への影響も非常に大きいものです。今後どうすれば達成可能か真剣に考え、取り組んでいきます。2025年には、団塊の世代の方々が後期高齢者になり、わが国が超高齢社会になることで医療や介護などの社会保障費の急増が懸念されています。
 
 その他にも、高齢者の増加が緩やかになる一方で働く世代の人口が急激に減少し、医療を支える側の人手不足が深刻化する2040年問題、COVID― 19などの新興感染症や、毎年のように起こっている洪水や地震などの自然災害といった予期せぬ問題の発生にも備える必要があります。これらの問題を乗り越えて安定して病院が存続できるように、病院の構造改革を進めたいと思います。


◎陰の主役は職員 働きがいのある職場に

 当院の理念は「患者の皆さまがかかってよかった、職員のひとりひとりが勤めてよかったと言える病院を創ります」です。病院の主役はもちろん患者さんで、患者さんを診療することで対価をいただき、経営が成り立っています。

 良い医療を行って患者さんの満足度を上げ、より高い付加価値を付けることは、病院として重要なことです。

 一方、病院には医師をはじめ看護師、薬剤師、検査技師、放射線技師、リハビリスタッフなどさまざまな職種の人が働いており、さまざまな職種の職員がいないと病院運営は成り立ちません。陰の主役は職員です。職員の仕事に対
する満足度が上がれば患者さんへの対応なども改善し、その結果患者さんの満足度も向上するはずです。職員が安心して、働きがいのある職場をつくることが重要だと思います。

 しかし、患者さんの満足と職員の労働環境の改善は、相反する場合もあります。例えば、患者さんの立場では外来診療の受付時間は長い方が便利ですが、職員にとっては長時間労働の原因となってしまいます。患者さんと職員との
バランスを取ることが重要だと考えています。


◎さまざまな職種の意見踏まえて方向性示す

 当院は3次救急を担う救命救急センターを設置しており、2020年度の救急搬送の受け入れ患者数は4641人、取り扱い患者総数は1万3352人でした。当院の中心的な診療圏は栃木県足利市内のみならず群馬県を含む両毛地域の広い範囲に及び、当院の規模、機能に応じた多数の急性期の患者さんに日々適切な医療を提供しています。

 当院はこれらの地域の中核病院として高度な急性期医療を提供していく役割を期待されていると考えています。この役割を継続して担うためには、地域医療連携の強化、周辺医療機関からの信頼が必要です。

 地域の病院から急性期の患者さんを送っていただき、しかるべき治療をして急性期医療が終了したものの、さらなる入院が必要な患者さんには、地域の病院で療養していただくことが重要で、そのためには地域の他の病院との連携が不可欠です。急性期病院として断らない救急、周辺の医療機関との情報交換を通して信頼を得ていきます。

 組織を率いる上で、いろいろな人から意見を聞くことを大切にしています。病院ではさまざまな専門職種の人たちが働き、その共同作業で医療が成り立っています。職種が違えば見方も変わり、一方からの意見だけでは本質が分からないことがあります。幅広く意見を求めることで、全体として良い決定をすることが可能になると考えています。ただし、これには決定に時間がかかるという短所もあります。時間をかけることで問題が大きくならないよう、例えば事故や災害対応などでは迅速に判断して病院としての方向性を示すようにしていきます。



足利赤十字病院
栃木県足利市五十部町284-1 ☎0284-21-0121(代表)
https://www.ashikaga.jrc.or.jp/

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