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周術期医療を支える麻酔科医のさらなる育成を

周術期医療を支える麻酔科医のさらなる育成を

大分大学医学部 麻酔科学講座
北野 敬明 教授(きたの・たかあき)

1984年年大分医科大学(現:大分大学医学部)卒業。
米アルベルト・アインシュタイン医科大学モンテフィオーレ医療センター留学、
大分大学医学部医学教育センター教授などを経て、2014年から現職。
同附属病院集中治療部長兼任。

 手術麻酔、集中治療、ペインクリニックの分野において、大分県内の診療、研究、教育を支えている大分大学医学部麻酔科学講座。北野敬明教授は、学生の教育、麻酔専門医の育成に取り組んでいる。

―麻酔科学講座について教えてください。

 大分医科大学(現:大分大学医学部)麻酔科学講座として1980年に開講されて以降、主に大分県内を中心に周術期医療を支えてきました。臨床では手術麻酔、集中治療、ペインクリニックを3本柱として、2018年度の手術件数は約5900件で、そのうち麻酔科管理症例数は約4000件です。2019年6月に手術設備の改修工事が完了して、手術室が11室から15室に増えました。

 高度な手術に対応できるように内視鏡手術専用手術室1室、心臓手術対応手術室3室、ロボット手術対応手術室2室、ハイブリッド手術室1室、クリーンルーム手術室2室を備え、「TAVI(経カテーテル大動脈弁留置術)」を施術できるのは大分県内では当院だけです。また、手術部・集中治療部全体の配置も見直し、患者さんの搬送、移動がしやすいように動線にも配慮しています。

 集中治療については、麻酔科の集中治療専門医が呼吸・循環だけでなく全身管理を主治医との共同で一元管理するクローズド集中治療室(ICU)方式で、フル規格の集中治療室8床を運営しています。2018年度は604症例の管理を行い、死亡率1・5%と高い救命率を保っています。

 ペインクリニック部門は通常の外来を週3日、神経ブロックを週2日行っており、薬物療法だけでは治療できない痛み症例や緩和医療における痛みの緩和のための薬物療法、神経破壊法・脊髄鎮痛法などを実施しています。

 また、近年設立された当院の緩和ケアセンターの運営においても、中心的な役割を担っています。

―人材育成・専門医研修プログラムについて。

大分大学医学部麻酔科学講座のメンバー

 2006年から2016年における、日本の全診療科別医師数の増加率では、麻酔科医がおよそ150%と上位にいますが、もともとベースになる麻酔科医の数が少なかったこともあります。2008年から2014年の医療施設調査では全身麻酔件数も121%増加しています。ただ、麻酔科医も都市部に集中する傾向があり、まだまだ中小都市地域では、絶対数は不足しています。

 優れた医師の育成は、先輩医師すべての重要な使命です。現在、医局には55人のスタッフが在籍し、着実に成長しています。新たに専攻医として研修を積む医師にも麻酔、集中治療、ペイン、救急など多様で優れたキャリアパスを提供できる環境を整えています。

 専門医の研修プログラムについては、九州管内の麻酔科医で協力し、九州全体で育てていこうという意識があります。新しい専門医制度と同時にシーリング(専攻医の定数上限)が設定されたことにより、各県の大学病院が連携したプログラムが2020年度から始まる予定です。

―今後の展望について教えてください。

 現在、大分大学医学部医学科の定員は110人です。その中から少しでも麻酔科に興味を持つ学生に、麻酔科医としてのやりがいを伝えていきたい。

 周術期チーム医療の中で、麻酔科医は患者や各科の期待に応える「縁の下の力持ち」「手術室の内科医」的な位置付けにあります。この仕事にやりがいを見つけることができる人に対して積極的にアプローチしていきたいと思います。

 団塊世代が後期高齢者となる2025年をピークに、その先の10年から15年後には医療ニーズが劇的に変化することが予想されます。医療界の人材の育成、教育に携わる者として、中長期的な視点も必要ではないかと考えています。

大分大学医学部 麻酔科学講座
大分県由布市挾間町医大ケ丘1―1
☎097―549―4411(代表)
http://www.med.oita-u.ac.jp/anesth/

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