九州医事新報社 - 地域医療・医療経営専門新聞社

佐賀大学医学部附属病院 病院長 山下 秀一

佐賀大学医学部附属病院 病院長  山下  秀一

 新年明けましておめでとうございます。皆さま良き新春をお迎えのこととお慶び申し上げます。

 2020年はなんといっても新型コロナウイルス感染症が、医療界のみならず日本の社会にとって大変な変動をもたらしました。新型コロナ感染症は、近年の医療界にとっての大激震と言わざるを得ません。この苦境にあって必死の努力を継続しておられる全国の医療関係者の皆さまの努力に感謝の意と敬意を表します。

 佐賀大学医学部附属病院も4月上旬には新型コロナウイルス対策本部を立ち上げました。経営に大きな影響が及ぶことはすぐに理解できましたが、本部長はあえて病院長が務めず、公平な視点で行動できる副病院長に務めてもらうこととしました。

 この会議で提案された、外来患者さんが院内に入る前の問診と検温や、入院患者さんの面会禁止と手術前の感染状況評価の手順など、新型コロナウイルス感染症が院内で発生する確率を下げる工夫と、患者さんの理解と協力のおかげで現時点では新型コロナウイルス感染症の発症を見ていません。このような工夫は全国の医療機関でなされていることと思います。

 皆さまも実感しておられることと思いますが、この新型コロナウイルス感染症の厄介なところは、無症状の感染者が数多く存在することです。2類感染症の縛りに入れ、必死でPCRの数を増やして少しでも多くの陽性者を発見し隔離することで感染の拡大を抑える対策がとられてきましたが、PCRの感度と特異度を考慮すると、この方法が無理筋であることは容易に想像できると思います。

 冬にはインフルエンザの流行も十分に想定できますが、このままではどう考えても発熱と気道症状で来院する患者さんが被害を受ける状況になることが危惧されます。人類はこのような感染症と共存しながら生き延びてきました。そろそろ医療者も一般の方も腹をくくって、重症者の治療を中心に据え、軽症や無症状の方は自宅で安静にするという、通常のウイルス感染症への対応にスイッチするべきであると強く感じています。

 また、新型コロナウイルス感染症を重視するあまり、他の救急患者さんの診療が手薄になる事態は絶対に避ける必要があります。佐賀大学医学部附属病院は、地域の高度急性期医療の砦機能を果たしています。この大きな役割の継続も肝に銘じているところです。

 本年も引き続き地域に根ざした大学病院として診療、研究、教育に努めてまいりますので、ご協力と温かいご支援をどうぞよろしくお願い申し上げます。

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