九州医事新報社 - 地域医療・医療経営専門新聞社

チーム医療の充実と総合診療専門医の育成を

チーム医療の充実と総合診療専門医の育成を

医療法人信岡会 菊池中央病院
中川 義久 院長(なかがわ・よしひさ)

1982年川崎医科大学医学部卒業。熊本大学医学部附属病院(現:熊本大学病院)、
水俣市立総合医療センター(現:国保水俣市立総合医療センター)などを経て、
1999年菊池中央病院入職、2010年から現職。

 地域にいかに良質の医療サービスを提供し続けていくのか。地域医療に根差す病院の共通の悩みだろう。その解決策となるのが「チーム医療の充実と総合診療専門医の育成」と話すのが、菊池中央病院の中川義久院長だ。

―医療サービスの充実に大切なこととは。

 当院が大切にしているのが「患者さん視点の診療」です。医師はどうしても医学的視点から患者さんに対応しがちです。しかし、さまざまな背景を持つ患者さんには、医師の診断が最良と言えない場合があるかもしれません。患者さんの価値観や希望、時には経済的要素が、医学的なことよりも優先される場合もあるのです。

 つまり患者さんをトータルに診る「全人的医療」が大事であり、私はその全人的医療の実現には、チーム医療が鍵になると思います。

 医師1人が努力して患者さん視点の医療をする。言うのは易しいですが、とても難しいことです。どうしても医師個人の考え方に偏りがちになる。100人の患者さんがあれば100の考え方があります。

 チーム医療では、看護師や介護士、検査技師など、あるいはご家族、時には患者さんご本人にもチームの一員として関わってもらいます。そうすることで、視点が多角的になり、偏った部分が補正されていきます。

 看護師や技師といったメディカルスタッフは、時には私たち医師が考えもつかない提案をしてくれることがあります。介護士やケアマネジャー、最近では患者さんが入居している施設の担当者の意見も大いに参考にできる場合があり、まさにそこがチーム医療のメリットだと思います。

―地域連携の現状はいかがでしょうか。

 取り組みたいことの一つに、地域のかかりつけ医と、当院のような基幹病院の病診連携の強化があります。

 開業医の方がチーム医療に参加すると、医師が2人になります。そうなれば幅広い解決法が見つかるかもしれません。その方は、ある分野の専門医かもしれません。そんな方が医療チームの中にいらっしゃると医学的にも心強いものがあります。

 その病診連携の輪を、地域のあちこちに掛けて広げていきたい。地域のいろいろな所にチーム医療の輪がたくさんあれば、地域の医療サービスの質をもっと向上できると思います。

 現状では日常の業務に忙殺されていて、院内のチームも整えられていませんし、地域の病医院にあいさつにもなかなかうかがえません。院内のメディカルスタッフ、院外の専門職、地域内の医療関係者を巻き込んで、この地域らしいチーム医療を目指したいですね。

―その他の課題は。

 総合診療専門医の育成も大切です。当院は救急搬送される患者さんの9割以上を院内で完結させています。熊本市内の高次医療機関に転送する患者さんは1割もいません。遠いということも理由ですが、「どんな患者さんでも診る」というのは、当院のような中核病院の役目だとも思うからです。

 だからこそ医師は、総合的な知識を持たなければなりません。プライマリ・ケアからちょっとした救急処置までできる総合診療専門医の重要性は、高まっています。

 私自身もプライマリ・ケアの指導医や総合内科専門医の資格を持っていますので、若い医師に対して、十分な指導ができる環境を整えています。しかし、若い総合診療専門医の応募は熊本市内に集中します。

 今は総合診療専門医の必要性が認知され、プライマリ・ケアが重視されるようになりました。総合診療専門医にかからないと専門医を受診できない欧米のように、若いドクターの中に総合診療専門医を目指す人が出てきてほしいですね。チーム医療の充実と総合診療専門医の育成は両輪であるべきだと考えています。

医療法人信岡会 菊池中央病院
熊本県菊池市隈府494
☎0968―25―3141(代表)
http://www.nobuokakai.ecnet.jp/


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