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「LINE」で連携 病床管理や治療方針共有

「LINE」で連携 病床管理や治療方針共有

中津市立中津市民病院
折田 博之 院長(おりた・ひろゆき)
1987年九州大学医学部卒業。米ハーバード大学医学部研究員、
佐賀県立病院好生館(現:佐賀県医療センター好生館)
消化器外科部長、製鉄記念八幡病院外科部長などを経て、2021年から現職。

 大分県北部から福岡県京築地域まで、県境をまたいで医療に取り組む中津市立中津市民病院。新型コロナウイルス感染症への対応では、主に中津市、宇佐市、豊後高田市からなる県北地域をカバーしながら、連携の仕組みを整えてきた。


―経緯と現状を。

 当院は感染症指定医療機関ではありませんが、地域の重点医療機関として初期から感染患者を受け入れてきました。第1、2波のときはコロナ専用病床5床で対応しましたが、第3波で16床に増床。第4波ではホテル療養のための施設へDMATの派遣も行いました。その後、一時は病床を半減できたものの、第5波で再び16床に。8月20日現在は、26床で運用しています。

 流行初期から2021年8月初旬までに受け入れた患者数は、計約100人。基本的に中等症から重症までの方々です。人工心肺装置が適応となる1人は大分市内の病院へ転送しましたが、それ以外の方は当院で治療してきました。

 これまで妊産婦と小児は全員、当院の受け持ちとしてきましたが、今後は状況に応じて保健所と相談する必要もあるでしょう。小児でも小学校中学年以上なら他施設にお願いできる場合もありますし、妊婦も軽症なら在宅療養ができるかもしれません。

 26床を確保するためには、病棟のスペースだけでなく人員も割く必要があり、一般医療が制限される可能性が高まっています。この地域では当院でしか診ることができない、救急、急性期医療を要するコロナ以外の患者さんをお断りすることにならないよう、対策を検討しています。


―限られた人員で、どう対応してきましたか。

 当院には常勤の呼吸器内科医がいません。初めは医 師全員で診ていましたが、第3波以降は、呼吸器疾患の診療経験が豊富な医師中心に変更。1チーム1〜3人の4チーム編成とし、1週間ずつ交代で、患者を診ています。

 毎週水曜日には、病棟に関わる全職種が集まって情報を引き継ぎ。コロナ患者に対応しない医師は、ワクチン接種などに携わっています。看護師は、各病棟からの志願者でローテーションしていましたが、第5波前に約20人の専任制としました。


―ご自身は地域のベッドコントロールを担当されています。
  コミュニケーションアプリ「LINE」を使い、当院と第2種感染症指定医療機関である宇佐高田医師会病院、軽症から中等症Ⅰまでを診る四つの協力病院の病院長らで情報を共有しています。毎朝8時に入院患者数や状態を報告し「症状が改善しないなら当院で引き受けます」など、やり取りします。

 グループには医師会や保健所の職員も参加。流行拡大時にはコロナ以外の患者は他施設に振り分けるようアナウンスしてもらうなど、限られた医療資源を有効に使う工夫をしています。

 今後は、治療方針の共有にも活用する予定です。というのも、ガイドラインはあっても、病院ごとに対応できる範囲は異なる。それぞれが可能な診療と、ここまではやりましょうと挙げた努力目標をたたき台に、内容を整理して可視化。症状に応じて患者を割り振れるようにする取り組みです。

 感染が拡大すれば、県北地域でも在宅医療が始まるでしょう。その場合、かかりつけ医などに協力を要請するとともに、当院からかかりつけ医へのサポートも強化しなければならない。今以上に、私たちの腕が試されます。

 コロナは災いではありますが、地域の医療連携がより密になったことは事実。互いに自覚を持ち、手を携えようという気運が高まりました。「これは助かった」と思うことは院内にも発信し、共存する意義を伝えています。院内でも、次の感染症に備える意識が向上しました。この経験は、絶対に次に生きる。そう思っています。

中津市立中津市民病院
大分県中津市下池永173
☎0979─22─2480(代表)
https://www.city-nakatsu.jp/hospital/

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