九州医事新報社 - 医療・医学の〝今〟を伝えて62年

難治性小児白血病の最新治療「CAR―T細胞療法」を開始

難治性小児白血病の最新治療「CAR―T細胞療法」を開始


教授(たきた・じゅんこ)
1991年日本医科大学医学部卒業。国立がんセンター研究所、東京都立駒込病院、
東京大学大学院医学系研究科小児科准教授などを経て、2018年から現職。

 全国から難病や希少疾患の子どもたちを受け入れ続ける。2019年10月には難治性小児白血病に対する最新治療 「CAR―T細胞療法」を開始。回復を待ち望む家族に、新たな光が見えてきた。

―「CAR―T細胞療法」について、現状と展望を。

  免疫細胞療法の一つである遺伝子改変T細胞療法「CAR―T細胞療法」は患者さんの免疫細胞(T細胞)を遺伝子操作によって人工的に強化してがん細胞への攻撃力を高める、革新的な治療法。これの小児に対する治験を唯一行ったのが、京都大学病院です。

 この治療に用いる「キムリア(一般名:チサゲンレクルユーセル)」が今年3月に日本で初めて承認され、5月に保険収載。京大病院は10月に治療施設の認定を受けました。

 10%程度だった難治性白血病の寛解率が6割以上に向上するという、これまでとは根本的に概念が異なる大変な治療です。効く分、リスクも大きい。治療を受けたほぼ全員がICUで副作用のマネジメントを受けることになります。

 副作用は大きく二つ。命の危機につながりかねないサイトカイン放出症候群と、けいれんや意識障害など神経系の障害です。これらをどう回避するか、今後の課題でしょう。

 寛解はしても一部で再発する例があることも、もう一つの問題ですね。

 これらの懸念を克服できる方法が開発されれば少し使いやすくなるかもしれませんが、現状では経験がカギとなる難易度の高い治療です。今後、他の大学病院などでも治療認定されると思いますが、小児に関しては私たちが中心になっていく心構えです。

―小児がんは将来、どこまで克服できるのでしょうか。

 小児がんの治癒率は全体で7割超。残り3割は、現存の治療を強化するだけではとても克服できません。「CAR―T細胞療法」のような新療法を用いることで最終的には全員救いたいですし、それは決して無理な話ではないと信じています。

 一番のサクセスストーリーは小児急性リンパ性白血病でしょう。50年前の長期生存率は10%ほどでしたが、今では9割近くが治るまでになったのです。

 少子化を食い止めるという意味でも小児がんの研究は重要です。希少な病気ではありますが小児の死亡原因の上位で、病死の中では1位。病気で亡くなる子の多くはがんに苦しんでいるのです。研究を発展させて、がんを克服できる治療を開発する。そして100%治すのだという気概で取り組むことが大事だと思っています。

 「小児がん拠点病院」のほか2019年には「総合周産期母子医療センター」の指定も受けました。重症新生児に対する高度医療をさらに充実させていきます。

 来年10月には「小児センター」を開設します。現在1フロアの小児科病棟を2フロアに拡充。基本的に難病や希少疾患、濃厚なケアが必要な方を中心に診ることに変わりはありませんが、小児がんや免疫が弱いお子さん以外に循環器系やアレルギー、感染症の子を受け入れられるようになります。

 長期患者のフォローに当たるチャイルドライフスペシャリストや保育士を増やして、療育環境をさらに高めていきたいですね。

 当科では造血細胞移植に限らず、肝臓移植や肺移植などの臓器移植も行っています。そんな重症の患者さんを丹念にケアできることも特長の一つですね。

 何より、肝心なのは人材育成です。研究体制が充実していることは強みですし、病棟で解決したい課題があればすぐに研究室で解決できるノウハウもある。病態を解明し、それに立脚した本質的な治療法を開発できる。さらに世界の舞台で小児医療をリードできる。そんな逸材が育ってくれたら本望です。

京都大学大学院医学研究科発達小児科学
京都市左京区聖護院川原町54
☎075―751―3111(代表)
https://www.kuhp.kyoto-u.ac.jp/~pediatrics/

この記事を読んだ方は他にこんな記事も読んでいます

最新の記事情報が取得できます

Twitter

「いいね!」ボタンを押すと、最新情報がすぐに確認できるようになります。

Instagram

フォローする」ボタンを押すと、最新情報がすぐにツイート上で確認できるようになります。

コメントはこちらから

メニューを閉じる