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放射線科の発展につながる医療のイノベーションに挑む

放射線科の発展につながる医療のイノベーションに挑む

岡山大学大学院 医歯薬学総合研究科 放射線医学 
金澤 右 教授(かなざわ・すすむ)
1981年岡山大学医学部卒業。
米テキサス大学МDアンダーソンがんセンターなどを経て、2017年から現職。
岡山大学病院IVRセンター長、同病院長、岡山大学理事を兼任。

 開設以来、中四国地方の放射線医学の中核を担ってきた岡山大学の放射線科。近年では特に関連施設との連携を生かし、低侵襲のがん医療をリードしてきた。岡山大学病院長であり、放射線医学教授でもある金澤右氏に、放射線科の現状と、今後の課題について話を聞いた。

―最近の治療における実績はいかがでしょうか。

  まず近況としては、腎臓がんの経皮的凍結治療に初期から取り組んできた当科では通算600例ほどの治療例があります。さらに平木隆夫准教授が中心になって進めたCTガイド下針穿刺ロボットを用いた臨床試験も順調に歩を進め、フェーズⅠの臨床研究が終了。現在、次のステップとして製品化へ向けて、企業との交渉段階まで来ています。

 2016年に津山中央病院との共同運用でスタートした「がん陽子線治療センター」も、当院の陽子線治療外来が窓口となって、しっかり活用されています。

―放射線科の今後の可能性について。


 これからの医療のイノベーションの柱として、私はAI、ロボット、遠隔医療(テレメディスン)の三つを考えています。放射線科の研究も例外ではなく、この三つをいかに現実化するかという方向性にあります。

 例えば、県の補助を受けて医局内に設置された「岡山画像診断センター」は、近隣地域の病院とネットワークで結ばれています。従来、車で医局から遠方へ医師が出かけていたものが、このネットワークで大学病院内にいながら診療できる形になりました。

 遠隔画像診断を受ける病院側の不安がないよう、導入時に必ず顔合わせを行い、何度か通って関係を築くことも徹底しています。遠隔医療の実現は、時間のロスや事故のリスクを無くすほか、医師不足の解消、働き方改革、医療の地域格差解消にも貢献できると思います。

 AIは、現在の技術では総合的な画像診断は難しいものの、腫瘍の見落としを防ぐ分野が得意だと感じています。併用すれば医師の労務負担軽減にもつながり、患者さんにとって有益な診断となるでしょう。

 放射線科におけるロボット開発は、医師の被ばくを無くす意味があります。さらに今後はAI機能を加えて、正確にターゲットに針を刺す機能を備えたロボットも開発されるでしょう。人間がコントロールしながら、より正確に、より短時間に、より医師の負担を軽減する方向へと研究開発が向かうと思います。

―放射線科医をとりまく環境はいかがでしょうか。

 日本においてはいくつかの問題があるのは事実です。

 例えば医療用ロボットの開発においては、海外の企業に遅れをとってしまっています。AI分野も中国のベンチャー企業が医療用ソフトを開発して、米国が販売する流れになっており、利益が日本に還元されない仕組みができつつあります。

 医師側も厚生労働省の制定した臨床研究法や専門医制度などの影響を受け、講習が多く学術発表や論文数は減少。新しいものを生み出しにくくなっている現状について、たいへん危惧しています。専攻医のシーリングにより、今後、放射線科医はさらに減少する問題に直面します。

 また日本はCTやMRIの導入数は多いものの、人口10万人当たりの放射線科医数は米国の半数程度。放射線科医不在で機械だけがある病院も多数あります。トータルヘルスケアを考える企業と組んでPFI方式で新機器導入に取り組む必要も今後はあるでしょう。

 ぜひ多くの方に、放射線科医のポテンシャルを理解してほしいと思います。同時に、放射線科医自身も各科をつなぐハブとしての役割を自覚し、病院の医療全体に貢献する在り方を探る必要があるでしょう。

岡山大学大学院 医歯薬学総合研究科 放射線医学
岡山市北区鹿田町2―5―1
☎086―223―7151(代表)
http://www.ok-radiology.jp/

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