九州医事新報社 - 医療・医学の〝今〟を伝えて62年

産後ケアデイサービスに続き小児への訪問診療を開始

独立行政法人地域医療機能推進機構 大和郡山病院松村 正彦 院長(まつむら・まさひこ)1978年京都大学医学部卒業。同附属病院小児科、天理よろづ相談所病院などを経て、2013年奈良社会保険病院(現:大和郡山病院)入職、2017年から現職。  目指すのは「何かあれば診てもらおう」と頼りにされる〝かかりつけ病院〟。223床の規模ながら、大和郡山市の市民病院的な存在として根付いている。小児科医として子どもに寄り添いつつ、患者に温かいまなざしを向ける松村正彦院長に聞いた。 ―診療の現状や特色は。  消化器内科・外科を柱に、呼吸器や循環器などの専門内科診療、また眼科手術や泌尿器科手術も積極的に行ってきました。産婦人科と小児科においては、市内で唯一の入院施設。母と子のケアに注力しています。 1年前には、市が行う「産後ケア事業」の指定医療機関として母子受け入れを開始。赤ちゃんと個室でゆったり過ごしながら、助産師などの専門スタッフに気になることを相談できるデイサービスです。希望すれば誰でも利用可能。現在は日帰りのみですが、1泊2日のショートステイ型にも広げられないか、市と協議しているところです。 2019年4月には、小児科医による訪問診療を始めました。気管切開、人工呼吸器、経管栄養など医療ケアを必要とする子どもは全国に約1万8000人。県内には約160人と把握されています。このような医療的ケア児の家庭を月2回程度訪問し、気管カニューレ交換や予防接種などを行っています。大学病院に通院するにしても、ご家族の負担はかなり軽減されるでしょう。 訪問先は現在9軒。範囲を広げたいところですが、採算が取れないのが悩みの種。遠方になればなるほど、その間の病院業務に制約が出るジレンマもあります。しかし、子どもに障害があっても安心して一緒に暮らしたいという家族の思いを見捨てるわけにはいきません。踏ん張って継続したいですね。 ―大和郡山市は以前から病診連携が盛んだそうですね。  医師会を中心とする病診連携システムは1995年にスタート。今年で25年、四半世紀を迎えます。 2018年7月には市と医師会が主導して「在宅医療・介護関係者と病院関係者の連携マニュアル」を作成。当院の職員も協力しました。 開業医からの紹介はもちろん、看護師やケアマネジャーからの相談、受け入れがさらにスムーズになればと期待しています。これに連動して、5階にあった地域医療連携室を1階に移動。スタッフも増やして業務に当たっています。 ―社会保険病院からJCHO(地域医療機能推進機構)へ移行してまもなく6年になります。  機構のキャッチフレーズは「安心の地域医療を支えるJCHO」。われわれも「地域医療、地域包括ケアの要」として貢献していきたい。附属の訪問看護ステーションや地域包括ケア病棟も利用しつつ、切れ目のないサービスを実践します。 社会保険病院時代から力を入れているのが、保健予防活動。健康管理センターの運営以外にも、各分野の専門認定看護師が中心となって活動を続けています。 例えば、院内教室のほか、商店街の一角で「まちの保健室」と題した健康相談を月1回開催。感染管理認定看護師が保育園などで行う感染症対策の出前講座や、救急看護認定看護師による救急蘇生の講習会、皮膚・排せつケア認定看護師による褥瘡(じょくそう)予防の講習会なども続けています。地域の訪問看護ステーションの看護師やケアマネジャー向けの研修会も年6回開催。尿閉や誤嚥(ごえん)に関する実技は「現場ですぐに役立つ」という声をいただいています。 私が小児科医になったときに恩師から言われたのは、「アドボカシー(代弁者)たれ」という言葉。世の中が不安定になれば、子どもや高齢者にしわ寄せがいきがちです。社会に対し声を上げづらい人々の代弁者となる、そんな気概を持ち続けたいと思っています。 独立行政法人地域医療機能推進機構 大和郡山病院奈良県大和郡山市朝日町1―62☎0743―53―1111(代表)https://yamatokoriyama.jcho.go.jp/

Continue Reading

地域と連携しながら強みを生かす病院へ

盛岡赤十字病院松田 壯正 院長(まつた・もりまさ)1976年岩手医科大学医学部卒業。盛岡市立病院、岩手医科大学医学部産婦人科学講座、盛岡赤十字病院副院長などを経て、2014年から現職。  盛岡医療圏における中核病院として2020年4月、開院100周年を迎える盛岡赤十字病院。災害救護や地域医療機関との連携を基本方針に掲げるほか、周産期医療にも積極的に取り組む。これらを陣頭で指揮する松田壯正院長に話を聞いた。 ―災害医療の体制についてお聞かせください。  赤十字病院として、災害医療・救護に取り組んでおり、1996年には岩手県基幹災害拠点病院に認定されました。救護方針を決定する災害コーディネーター、DMAT(災害派遣医療チーム)、dERU(移動型の仮設診療所)などを常時配置し、災害が発生した際は、即座に対応できる準備が整っています。 その活動は岩手県内にとどまらず、東日本大震災や熊本地震の被災地など全国各地で活躍しました。最近では、2019年10月に台風19号の被害を受けた宮城県丸森町へ、DMATを派遣しています。 ―地域医療機関との連携も大きな特徴ですね。  まず挙げられるのは、遠野市の公設助産院「ねっと・ゆりかご」との連携です。遠野市の出産数は年間200件ほどありますが、地元にはお産ができる医療機関がありません。 そこで市は2007年に助産院を開設し、周産期医療が充実している当院と嘱託医療機関契約を締結。インターネットを介し、胎児の情報などを共有するシステムがスタートしたのです。これにより、妊婦さんは遠くまで通院しなくとも専門的な検診を受けられるようになり、安心して出産を迎えることができるようになりました。 また、2016年に地域医療支援病院として認定されて以降、かかりつけ医や介護施設との連携を推進しています。「地域医療連携室」を設け、患者さんの紹介があった場合は30分以内に検査・診療方針などを決定。逆紹介も連携室が一括して対応するなどスムーズな調整を実現しました。 当院の患者さん自身が、かかりつけ医を探すことも可能です。病院入り口に設置したタッチパネル式のモニター「どこだ兵衛(べえ)」により、約90の連携医療機関の中から希望の施設を検索することができます。 地域医療連携では「在宅療養後方支援」も行っています。介護施設などと提携し、事前に在宅患者さんの情報を登録してもらうことで、緊急時には当院が速やかに対応するシステムです。現在は八つの施設、計195人の患者さんが登録されています。今後も、さらに数を増やしたいですね。 ―病院のその他の強みは。  産科や小児科などの周産期、外科、血液内科の入院患者さんが多く、中でも周産期は顕著です。当院における2018年度の出産件数は約780件で、岩手県全体の約10%を占めています。これは大きな強みですので、今後も周産期医療や産後ケアに積極的に取り組んでいきます。現在は通院型の産後デイケアを実施していますが、いずれは宿泊型の導入も視野に入れています。 さらに意欲ある職員たちも強みになっています。他病院での長期研修や内外での勉強会など、当院では積極的に職員のキャリアアップをサポートしており、資格を取得している看護師やスタッフが数多く在籍しています。彼らの存在は当院の基本方針の一つである「良質な医療の提供」に大きく貢献しています。 ―今後について。  人口減少や医師不足など、地方医療を取り巻く環境は厳しさを増しています。当院としても、医師や助産師の確保には苦労しているところです。しかし、だからと言って医療の質を落とすことはできません。 今後も地域の医療機関や行政と緊密に連携し、当院の持つ周産期医療などの強みを生かしながら、地域の皆さんの生命と健康を守っていきたいと思います。 盛岡赤十字病院盛岡市三本柳6地割1―1☎019―637―3111(代表)http://www.morioka.jrc.or.jp/

Continue Reading

高度生殖医療と産科分野で 女性の一生を見守る

医療法人社団 スズキ病院 スズキ記念病院田中 耕平 病院長(たなか・こうへい)1977年秋田大学医学部卒業。新潟大学医学部産科婦人科、香川医科大学(現:香川大学医学部)母子科学講座、秋田赤十字病院、スズキ記念病院副院長などを経て、2017年から現職。  1986年、生殖医療専門病院として開院したスズキ記念病院。不妊治療、周産期医療、婦人科診療を中心として、宮城県南地域の女性の健康を守っている。田中耕平病院長に病院の強みや生殖医療の現状、今後の展望について話を聞いた。 ―病院の特徴は。  1983年、体外受精による妊娠・出産が日本で初めて成功。そのチームを率いた東北大学医学部産婦人科教授であった鈴木雅洲先生が退官後、1986年に不妊治療をメインとするスズキ病院(現:スズキ記念病院)を開設されたのがはじまりです。  当時は世間的に体外受精への抵抗が強く、「試験管ベビー」などと、呼ばれるような時代でした。当院にも批判的な声が多数届いたようです。しかし、鈴木先生は確固たる信念を持ち続け、その後も不妊治療の技術を次々と確立。後進の育成や外部への情報発信などにも尽力され、生殖医療専門病院としての礎を築かれました。  当院は生殖医療科だけでなく、婦人科、産科、小児科・小児外科も設置しています。そのため、妊娠前から産後までを一貫してサポートできることが強みです。年間の出産件数は約800件で、宮城県南地域における出産数の多くを占めています。また、子宮筋腫や卵巣腫瘍などの婦人科合併症、妊娠や出産のリスクを高める糖尿病、高血圧の治療にも取り組んでいます。  最近は産後ケアの一つとして、母児利用型デイケアを導入しました。助産師が育児に自信をなくしたお母さんに話を聞いたり、一緒に母乳やミルクを飲ませたりして、お母さんには夕方までゆっくり休んで疲れをとっていただきます。自治体の補助金制度があるので、利用者は費用面でも安心できると思います。  2019年度内には宿泊型の産後ケアも始める予定です。精神科医とタイアップしたカウンセリング、ベビーマッサージなども取り入れ、子育てに奮闘しているお母さんを応援していきます。 ―生殖医療の現状や治療について教えてください。  2018年度、当院で不妊治療を希望した人の平均年齢は女性が33・6歳、男性は34・8歳でした。以前に比べて40代以上の初診が少し減っています。  来院のきっかけとしては、親世代からの紹介が比較的多く、これは当院の歴史が長いことも影響しているでしょう。近隣地域だけでなく、福島県や岩手県の沿岸部から訪れる人もいます。  具体的な診療の流れは、不妊症の方は直接、生殖医療科で専門医が対応します。そこで一連の検査や診断をした後、異常がなければタイミング療法、次に人工授精、体外受精とステップを踏んで、妊娠を目指します。  現在、人工授精の成功率は約16%、体外受精は約40%。40代以上の体外受精は約20%です。治療の過程では、理想と現実のギャップに悩む患者さんもいますので、産後ケアと同様にメンタル面のサポートも用意しています。 ―今後は。  自治体に周産期医療の課題やニーズを伝え、新たな補助金制度の導入などを、一緒に検討しています。また、0~3歳のお子さんとそのご家族を対象に、自由に遊べる場所として当院の大ホールを地域に開放。ハロウィーンやクリスマスの時期にはイベントも開催しています。  こうした取り組みによって、皆さんに親しみを持ってもらうことも、当院の大切な役割だと考えています。創設者である鈴木先生が掲げた「女性のための総合病院」という理念は、今後も変えません。  すでに当院は進行がんなどを除いて、女性が抱える悩みや病気をケアできる体制が整っていますが、さらに発展させたいと思っています。特に不妊は女性にとって大きな問題ですので、診療以外のケアを含めて強化したいですね。 医療法人社団 スズキ病院 スズキ記念病院宮城県岩沼市里の杜3―5―5☎0223―23―3111 (代表)http://www.suzuki-hospital.jp/

Continue Reading
Close Menu