九州医事新報社 - 医療・医学の〝今〟を伝えて62年

良質かつ高度なリハビリを

社会医療法人令和会 熊本リハビリテーション病院桑原 公倫 病院長(くわはら・こうりん)1997年島根医科大学医学部(現:島根大学医学部)卒業、熊本大学医学部附属病院(現:熊本大学病院)整形外科入局。国立療養所(現:国立病院機構)熊本南病院、熊本リハビリテーション病院副院長などを経て、2020年から現職。  2020年4月1日付で院長に就任しました。まず簡単に当院のご紹介をします。熊本リハビリテーション病院は、1974年に「熊本理学診療科病院」として創設され、その後1986年に名称を「熊本リハビリテーション病院」に変更して現在に至ります。創設時の80床から約50年の年月を経て、一般病床225床(一般病棟90床、回復期リハビリテーション病棟135床)、約30人の医師と約500人のスタッフを擁し、リハビリテーション専門病院としてさまざまな疾病に伴う機能障害に対し、加療を行ってきました。 当院の役割として、前任の先生方から脈々と息づくモットーのようなものですが、「これからも可能な限り急性期より良質かつ高度なリハビリテーションを提供」し、医師・看護師・セラピスト・医療ソーシャルワーカーなどが連携し、責任ある医療を実践し、患者さんの早期退院・早期社会復帰・在宅生活をサポートしていきたいと思います。 先ほど、「可能な限り急性期よりリハビリに介入」と申し上げましたが、整形外科・形成外科・血管外科などの診療科で年間1200例程度の手術を行う中で、疾患によっては術前から積極的なリハビリテーションを提供しています。また、近隣の高度急性期病院と連携し、骨折などの外傷や運動器疾患の術後、脳卒中などの患者さんを早期に受け入れるという「熊本方式」と呼ばれる地域完結型医療を実践しています。 リハビリテーション部門の特徴は、365日リハビリを提供し、スタンダードな手法に最新の技術や機器を積極的に導入した「ハイブリッド・リハビリテーション」を実践。リハビリの効果を高め、早期退院・早期社会復帰といったニーズに応えることができるように最大限に努力していきたいと思います。 中・長期計画にも関わりますが、「その人らしい暮らしの再構築と支援」を行うための組織づくりを行っています。整形外科を中心とした急性期治療をはじめ、回復期リハビリテーションで地域に貢献してきました。在宅支援では、リハビリテーション医療の一環である病院の在宅支援部門と介護保険関連事業所である訪問系サービス部門などが協働する仕組みを2001年につくり、すべてのご利用者に対してより良いサービスを提供することを心掛けてきました。 今後のわが国の大きな問題でもあります人口減少・高齢者の増加に伴い2025年には、1人の高齢者を2人以下で支える社会構造が想定され、高齢者の在宅復帰の高いハードルとなることが予想されます。 訪問看護・通所リハビリなどの在宅支援の重要性が増すと考えられることから、地域包括ケアシステムをさらに推進するための組織改編を行い、「生活リハセンター」として在宅部門の強化を図り、地域医療・生活支援を実施します。 最近、当院が力を入れている取り組みとしては、一つ目は高齢者医療を取りまく諸問題で、「低栄養」「サルコペニア」が注目されています。多職種による栄養サポート(NST)、摂食嚥下(えんげ)リハビリを実践・研究し、サルコペニアや低栄養の最新のエビデンスを創出、世界へ発信しています。 二つ目は、2017年より脂肪組織由来再生幹細胞を用いた再生医療に取り組み、「重症虚血肢」「脊髄損傷」「脳卒中後遺症」「変形性膝関節症」に対する認可を受け、治療を提供しています。特に脊髄損傷は2019年度約20例の加療を実施。これまで抜本的な治療方法がなかった分野でもあり、症例を積み重ね、結果や検討事項を発信できればと考えています。 これからますます地域社会の中で、当院の役割が問われ、難しいかじ取りを強いられる場面もあるかと思います。地域の皆さまや関係機関の皆さまにご指導を仰ぎながら、職員一丸となり、頑張りたいと思います。 社会医療法人令和会 熊本リハビリテーション病院熊本県菊池郡菊陽町曲手760 ☎️096-232-3111(代表)http://www.kumareha.jp/

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良き教育者であるために

京都府立医科大学大学院医学研究科 運動器機能再生外科学 整形外科高橋 謙治 教授(たかはし・けんじ)1990年京都府立医科大学医学部卒業。米カリフォルニア大学サンディエゴ校、日本医科大学整形外科・リウマチ外科臨床准教授、国際医療福祉大学医学部整形外科教授などを経て、2020年から現職。  新型コロナウイルスが猛威を振るい始めた2月に教授就任。診療や手術が思うようにならない中で、臨床に優れた医師を育てることを信念に取り組む。10年ぶりに戻ってきた母校で今後、実現したいこととは。 「白夜」に導かれ整形外科の道へ  工学部を目指し高校生活を送っていたある日、偶然手にしたのは、渡辺淳一の自伝的小説「白夜」だった。研修医がへき地で苦労しながら一人前に育つ姿に感銘を受けた。「そのとき、整形外科医になろうと決めました」と振り返る。 数年後、若狭湾沿いにあるへき地の病院に赴任する機会に巡り合った。雪深い道での交通事故や林業事故、スキーや海水浴でのアクシデント…。まだ若く、自信はない。しかし、目の前の患者を救うのは自分しかいない状況が続く。必死に手を動かし、勉強し、技術を磨いた。「とにかく真摯(しんし)に向き合うしか、方法がなかった。おかげで、臨床の自信がつきました」と懐かしむ。 大学に戻ってからは股関節外科を担い、2010年にはリウマチの最先端を学ぼうと日本医科大学へ。次に教授として赴任した国際医療福祉大学では、人工関節を探求。そして2020年、再び母校へ戻った。 広い守備範囲で高みを  1949年設立の歴史ある教室。関連病院は50以上、医局員は200人超、同門会も600人を超える大所帯を束ねる。「11の専門グループがあり、幅広い臨床に対応できることが特長です。さらに全国でアイデンティティーを示せるよう、一つひとつのレベルを上げていくのが私の役目です」 その先鋒(せんぽう)にしたいのが、自らの専門である関節外科。「中でも罹患(りかん)人口2000万人以上とされる変形性膝関節症ですね。手術だけでなく薬物療法、リハビリ、人工関節や骨切り術など最適な方法で対処します」 研究は、変形性膝関節症のMRI解析。レントゲンでは把握しきれない症状や、その後の経過を知り得る検査方法の開発に挑んでいる。成果の一つとして、半月板が内側にずれている患者は、軟骨が傷みやすくなることを突き止めた。 ずれた半月板を元に戻す縫合術はリスクもある。注目しているのはリハビリテーションだ。「有効なリハビリを開発した結果、症状も、関節軟骨が傷むのも抑えられることが分かりました。関節内注射、再生医療などと組み合わせる研究も計画中です」 実は、自身がこの変形性膝関節症を患う。5年ほど前、自転車レースのためのトレーニング中に発症。使い過ぎによるものだという。半月板が痛み、歩くのもおっくうになった。共同開発した温熱療法なども活用しながら治療中だという。 「まさか自分が開発した機器を、自分で使うとは思いもしませんでした。膝グループの先生からは手術した方がいいと勧められていますが(笑)。患者さんの気持ちは痛いほどよく分かります」 良き教育者になる  2月の就任時から、新型コロナウイルス感染症の対応に追われる日々。まず手術ができなくなり、医局員の半分が在宅勤務になった。院内感染が起きないよう最大限の取り組みを行いながらも、医師の育成については、しっかりとしたビジョンを示す。 「大学の教授はスーパードクターでも、有能な研究者でなくてもいい。ただ、良い教育者であることです」と高橋教授。今回起用されたのも、その熱意ゆえと考えている。 若手に伝えたいことは二つ。「まずは臨床の基本を身に付けること。患者さんの顔をしっかりと見て、触れて、診る。病棟を回って1日1回は必ず声を掛ける。電子カルテだと、患者さんの顔を見ないことも多い。患者さんの気持ちをすくい取らずして、相手の立場で考えることはできない」と話す。これは、患者だけにとどまらない。メディカルスタッフ、検査技師、理学療法士など、共に働くスタッフの気持ちも想像し、行動することを大切にしてほしいと、入局者に対してのあいさつで伝えたという。 さらに、自分のキャリアにおいて、何が大切かを考えることも忘れてはならない。「他者に貢献すること、責任の中で成長することを人生の目的にしてほしい。切に願います」 まずは良き医師として育てること。その中からスーパードクターと呼ばれるほど臨床で活躍する医師をはじめ、行政で活躍する、あるいは教育者として活躍するといった医師が出てくることが夢だと語る。 そんな、将来活躍できる医師を育てたいとの思いで家族を残し、単身赴任した。子どもたちには常に自己研さんする背中を見せたいと語る。 「息抜きは、家族との時間です。テレビ電話を前に一緒に食事したり、子どもの勉強を見たり。オンラインの恩恵を享受しています(笑)」 京都府立医科大学大学院医学研究科 運動器機能再生外科学 整形外科京都市上京区河原町通広小路上る梶井町465 ☎️075-251-5111(代表)http://www.f.kpu-m.ac.jp/k/orthoped/

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ロボットの進化が生み出す人工関節のパラダイムシフト

近畿大学医学部整形外科学赤木 將男 主任教授(あかぎ・まさお)1983年京都大学医学部卒業。米ロマリンダ大学人工関節摩耗学研究所、近畿大学医学部整形外科学教授などを経て、2012年から現職。近畿大学医学部教学部長兼任。  2017年4月、赤木將男教授らは「近畿大学医学部附属病院(現:近畿大学病院)人工関節センター」を設立。2019年4月、日本初導入の人工膝関節手術支援ロボットによる単顆人工膝手術(UKA)を実施した。人工関節のエキスパートは、手術支援ロボットの将来をどう見据えているのか。 ―「人工関節センター」の役割とは。  強力な他科のバックアップのもと、総合的な医療を行えることが一番の強み。併存症のある患者さんにも幅広く対応しています。他で断られた方、例えばうつ病や統合失調症の患者さんも精神科と薬物コントロールしながら診ています。 手術件数は年間250件弱。キャパシティーの関係で受け入れには限界がありますが、手技を向上して患者の負担を減らし、術後回復を早め、在院日数を減らす努力を続けています。 入院は人工膝関節で2週間、人工股関節で2週間半から3週間ほど。再手術や難治症例、歩けなくなった方への手術では長くなりがちです。ただこの1年で地域連携がずいぶん進んで後方支援病院が増えましたので、入院期間はそれほど延びていません。 ―人工膝関節手術支援ロボットを導入しました。  1週間に1件のペースで手術しています。件数が限られる中で適用となる症例は、比較的軽症の変形性膝関節症。前十字靱帯(じんたい)を温存する人工膝関節置換術に、最も能力を発揮できるからです。 重度の方に行う全人工膝関節置換術(TKA)は手技が確立されていて従来の方法で多くの症例に対応できます。ただ、前十字靱帯を残すとなると急激に難度が高くなる。そこで役立つのがロボットの機能。赤外線カメラで得られる情報をもとに術中にプランニングし、高精度でインプラントを設置することで術後の膝機能を最大化できます。 しかし、保険収載されていないことから、まだ積極的に広げていく体制にはなっていないのが現状です。 すでに日本に6台が導入された今、保険適用を国に認めてもらうための働きかけが必要です。具体的には、導入施設に声をかけて研究チームを作り、有効性をデータで示してエビデンスを積み重ねていく作業です。数年かかると思いますが、今後の発展のために自ら取り組んでいかなくてはと考えています。 ―今後の展開は。  前十字靱帯を残したTKAで元の膝を「再現」する。これはある意味、人間の能力を超えた手術。そこにコンピューターの価値があるわけです。 ロボット支援手術は、従来とは全くコンセプトが異なるもの。例えば今、膝のアライメントの角度などは2次元パラメータで計算していますが、3次元データを用いることで限りなく正解に近づく。二つの球体を重ねたときに球面がピタッと誤差なく合わさるよう設計するイメージです。 しかし、現段階ではここまでは実現できていません。だからこそパラダイムシフトとなる手法だという前提でソフトとハードの両方を改善してこそ意味がある。そうメーカーのエンジニアと話し合ってきました。人工知能(AI)の学習能力をもってすれば、いずれ実現できると信じています。 人工関節置換術は、多くの人に満足をもたらしています。持って生まれた膝を取り戻したい、あと10年、15年スポーツを楽しみたいという50代、60代にとっては、前十字靱帯を温存する意義は大きい。それを実現するのが、ロボット支援手術なのです。 「病気はその臓器があることを意識することだ」という言葉があります。関節も同じ。あることを忘れて運動や旅行、生活を楽しむことができたら最高でしょう。そんな人を1人でも増やせたらいいですね。 近畿大学医学部整形外科学大阪府大阪狭山市大野東377―2☎072―366―0221(代表)https://www.med.kindai.ac.jp/ortho/

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「三方良し」の関係築きなくてはならない病院に

医療法人 博俊会 春江病院嶋田 俊之 理事長(しまだ・としゆき)1999年東邦大学医学部卒業。慶應義塾大学病院一般・消化器外科、国立がんセンター東病院(現:国立がん研究センター東病院)乳腺科、米ハーバード医学大学院、米マサチューセッツ総合病院がんセンターなどを経て、2015年から現職。  理念に「地域にあって良かった 患者さんがかかって良かった 職員が働いて良かった」を掲げ、その実現に力を注ぐ春江病院。3市1町からなる福井・坂井医療圏(福井市、あわら市、坂井市、永平寺町)でも、機能分化に向けた動きが進みつつある。地域医療のあり方が変わる中、どのような組織を目指しているのか。嶋田俊之理事長に聞いた。 ─目指す病院づくりについてお聞かせください。  この理念は、2016年に移転して新病院を開院した際に「地域における春江病院の役割」をイメージしてつくったものです。「地域にあって良かった 患者さんがかかって良かった 職員が働いて良かった」の三つの「良かった」は、患者さん、地域、病院が「三方良し」の関係にあることを表しています。  当院が「この病院で診てもらいたい」と患者さんが思ってくれる病院であり続けられれば、おのずと職員が働くモチベーションも高まるでしょう。それがいい医療となって、地域へのさらなる貢献に結びついていくのだと思います。  「ありがとう」と言われる組織を築くことが、これから先も生き残っていく病院の要件ではないでしょうか。もちろん、現状はまだ不十分な部分もありますから、患者さん、職員と意識を共有し、時間をかけて成し遂げたいですね。 ─最近の取り組みについてはいかがでしょうか。  採用や働き方の改善に関する取り組みの一環として、今年4月に採用活動や育成、職員の定着率の向上などを担う部門を設置しました。当院に勤務することでどんなキャリアを歩めるのかなどを発信しながら、看護学校とのつながりなども、より密なものにしていきたいと考えています。  また、人事考課制度を見直し、等級制度の運用をスタートさせました。職員それぞれに求めるものを明確にして、何を達成できたのか、どんなことを目標にして頑張ればいいのかを分かりやすく提示。  一人一人の努力が各部署のレベルアップに反映され、その成果が積み重なることで病院の理念の実現に近づいていく。そんな効果を期待しています。 ─地域において、どのような特色を打ち出しているのでしょうか。  当院の急性期医療の強みは、切断指の接着で高い成果を上げているマイクロサージャリー、スポーツ障害の治療・再発予防、変形性膝関節症などの領域を得意とする「整形外科」と、がんなどの悪性疾患から良性疾患まで幅広く対応する「消化器外科」。  患者は高齢者が多いため、認知症や併存疾患があったり、入院中に肺炎を発症したりといったこともありますが、そこを内科、脳神経外科がしっかりとバックアップしています。  急性期の治療を終えた方に対しては、地域包括ケア病棟、回復期リハビリテーション病棟で在宅移行のための医療を提供し、脳神経外科、内科陣の力強いサポートのもと、ポストアキュート、サブアキュートの役割を担っています。  また私自身は、坂井市において唯一の乳腺専門医として地域の乳がん診療に力を注いでいます。 ─今後は。  当院から車で30分ほどのエリア内には、福井大学医学部附属病院、福井県立病院など、急性期医療を担う病院が近接しています。  移転後、整形外科や消化器領域への機能の集約化を図るとともに、病床の転換も実施。これから人口が大きく減少し、医療機関の機能分化が進んでいく中、どのような病院であるかを打ち出していかなければ、地域医療における役割は果たせないと思います。  「春江病院ならなんとかしてくれる」。そんなふうに患者さんが頼ってくれる、そしてその期待に応えることができる病院を目指してきました。その軸は変わらず持ち続けながら、地域でのあり方を考えていきたいと思います。 医療法人 博俊会 春江病院福井県坂井市春江町針原65─7☎0776─51─0029(代表)https://www.harue-hp.org/

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技術革新で延ばす健康寿命 2025年の「運動器」を守る!

 「2025年問題」への対応が急がれる中、健康寿命の延伸を目指す動きがさらに活発化している。介護予防のキーワードの一つが「運動器」。人工関節置換術の件数が増加傾向にあると言われる中、運動機能の維持に貢献する新たな技術への期待も高まっている。 再生医療や素材の工夫 続々と生まれるアイデア  「2025年問題」でなぜ「75歳」が注目されるのか。その理由はデータが示している。 65歳から74歳の要支援認定は1・4%(24万6000人)、要介護認定は2・9%(51万人)。75歳以上になると要支援認定が9・0%(147万人)、要介護認定が23・5%(384万2000人)と割合が跳ね上がる(データは2015年現在)。 「要介護者等の介護が必要になった主な原因」を見ると、「骨折・転倒」(12・5%)が占める割合が大きくなっている。リウマチなどの「関節疾患」(10・2%)と合わせて、改めて運動器の障害が介護の予防と深く関わっていることが浮き彫りとなった。 現在、運動器を守るためにさまざまな技術革新が進んでいる。 例えば先進医療では、東海大学が変形性膝関節症の軟骨欠損の治療法として「自己軟骨細胞シートによる軟骨再生治療」に取り組んでいる。患者から採取した軟骨組織、滑膜組織で軟骨細胞シートを作製。軟骨欠損部の治療に用いる。 また、大阪大学は半月板の損傷に対する「コラーゲン半月板補填材を用いた半月板修復療法」を実施している。現状、重度の半月板損傷の治療は切除が有効だが、中長期的に変形性関節症を発症しやすい。そこでコラーゲンの補てん材で半月板を修復し、機能の温存を目指している。 「骨ネジ」で骨折治療に挑むのが島根大学だ。金属製のネジは固定力にすぐれるが、突出して健常の軟骨面を傷つけることがある。また、生体吸収ピンは強度が十分でなかったり、吸収時に異物反応を起こしたりすることがある。 手術中に患者から採取した骨をスクリューに加工。「骨ネジ」なら拒絶や異物反応の危険性がなく、金属製のネジと同等の初期の強度があるとされる。 進むロボット技術の活用 早期の社会復帰を後押し  近畿大学病院(大阪府大阪狭山市)は国内で初めて人工膝関節手術支援ロボット「ナビオ」(英スミス・アンド・ネフュー社)を導入。4月、同大整形外科学の赤木將男主任教授が中心となって1例目の手術が実施された。 ナビオは主に変形性膝関節症、関節リウマチ、スポーツ外傷の後遺症などの人工関節置換術で活用される。ポイントの一つは、「高精度・低侵襲」の手術による早期の回復、社会復帰の実現だ。 搭載された赤外線カメラが、術中に膝の軟部組織や関節、じん帯などの動きを評価。これらの情報に基づき、どのように骨を削ってインプラントを設置するのが最適なのか、いわば患者に合わせた「オーダーメード」の手術を計画することが可能だ。 骨を削るドリルバーの回転や停止は、ロボットが高速でナビゲーション制御する。術者は画面を確認しながらドリルバーの先端を掘削する部位に当てて手術を進めていく。 誤差は幅1ミリ、角度1度以下に抑えられるという。適切な評価に基づく膝十字靱帯の温存や高精度のインプラント設置によって、患者がもともとの膝のフィーリングと動きを取り戻せる可能性が高まる。術後のスポーツ活動への参加などが促進され、健康寿命の延伸につながることが期待される。 欧米では、手術支援ロボットを使用した人工膝関節手術が積極的に行われている。赤木主任教授によると「米国におけるナビオによる手術は年間で1万5000例にも上る」という。 現在、国内で実施されている人工膝関節置換術は年間約8万5000例。手術支援ロボットへのニーズはさらに高まっていくと見られる。赤木主任教授は「週に1度のペースでの実施を目指す。また大学の医学部の役割として、ロボット支援下手術に対応できる次世代の人材を育てることが重要」と語った。 果たして次のブレイクスルーは―。関心は高まるばかりだ。

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宮崎県立宮崎病院 リハビリテーション科部長 整形外科医長 菊池 直士

22の診療科を有し、専門性の高い医療を総合的に提供している県立宮崎病院。そのリハビリテーション科として、さまざまな症状の患者に対応しながら、スタッフ一丸となってプログラムを提供する。リハビリテーション科部長で、整形外科医長でもある菊池直士氏に、現場運営について聞いた。

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