九州医事新報社 - 医療・医学の〝今〟を伝えて62年

良質かつ高度なリハビリを

社会医療法人令和会 熊本リハビリテーション病院桑原 公倫 病院長(くわはら・こうりん)1997年島根医科大学医学部(現:島根大学医学部)卒業、熊本大学医学部附属病院(現:熊本大学病院)整形外科入局。国立療養所(現:国立病院機構)熊本南病院、熊本リハビリテーション病院副院長などを経て、2020年から現職。  2020年4月1日付で院長に就任しました。まず簡単に当院のご紹介をします。熊本リハビリテーション病院は、1974年に「熊本理学診療科病院」として創設され、その後1986年に名称を「熊本リハビリテーション病院」に変更して現在に至ります。創設時の80床から約50年の年月を経て、一般病床225床(一般病棟90床、回復期リハビリテーション病棟135床)、約30人の医師と約500人のスタッフを擁し、リハビリテーション専門病院としてさまざまな疾病に伴う機能障害に対し、加療を行ってきました。 当院の役割として、前任の先生方から脈々と息づくモットーのようなものですが、「これからも可能な限り急性期より良質かつ高度なリハビリテーションを提供」し、医師・看護師・セラピスト・医療ソーシャルワーカーなどが連携し、責任ある医療を実践し、患者さんの早期退院・早期社会復帰・在宅生活をサポートしていきたいと思います。 先ほど、「可能な限り急性期よりリハビリに介入」と申し上げましたが、整形外科・形成外科・血管外科などの診療科で年間1200例程度の手術を行う中で、疾患によっては術前から積極的なリハビリテーションを提供しています。また、近隣の高度急性期病院と連携し、骨折などの外傷や運動器疾患の術後、脳卒中などの患者さんを早期に受け入れるという「熊本方式」と呼ばれる地域完結型医療を実践しています。 リハビリテーション部門の特徴は、365日リハビリを提供し、スタンダードな手法に最新の技術や機器を積極的に導入した「ハイブリッド・リハビリテーション」を実践。リハビリの効果を高め、早期退院・早期社会復帰といったニーズに応えることができるように最大限に努力していきたいと思います。 中・長期計画にも関わりますが、「その人らしい暮らしの再構築と支援」を行うための組織づくりを行っています。整形外科を中心とした急性期治療をはじめ、回復期リハビリテーションで地域に貢献してきました。在宅支援では、リハビリテーション医療の一環である病院の在宅支援部門と介護保険関連事業所である訪問系サービス部門などが協働する仕組みを2001年につくり、すべてのご利用者に対してより良いサービスを提供することを心掛けてきました。 今後のわが国の大きな問題でもあります人口減少・高齢者の増加に伴い2025年には、1人の高齢者を2人以下で支える社会構造が想定され、高齢者の在宅復帰の高いハードルとなることが予想されます。 訪問看護・通所リハビリなどの在宅支援の重要性が増すと考えられることから、地域包括ケアシステムをさらに推進するための組織改編を行い、「生活リハセンター」として在宅部門の強化を図り、地域医療・生活支援を実施します。 最近、当院が力を入れている取り組みとしては、一つ目は高齢者医療を取りまく諸問題で、「低栄養」「サルコペニア」が注目されています。多職種による栄養サポート(NST)、摂食嚥下(えんげ)リハビリを実践・研究し、サルコペニアや低栄養の最新のエビデンスを創出、世界へ発信しています。 二つ目は、2017年より脂肪組織由来再生幹細胞を用いた再生医療に取り組み、「重症虚血肢」「脊髄損傷」「脳卒中後遺症」「変形性膝関節症」に対する認可を受け、治療を提供しています。特に脊髄損傷は2019年度約20例の加療を実施。これまで抜本的な治療方法がなかった分野でもあり、症例を積み重ね、結果や検討事項を発信できればと考えています。 これからますます地域社会の中で、当院の役割が問われ、難しいかじ取りを強いられる場面もあるかと思います。地域の皆さまや関係機関の皆さまにご指導を仰ぎながら、職員一丸となり、頑張りたいと思います。 社会医療法人令和会 熊本リハビリテーション病院熊本県菊池郡菊陽町曲手760 ☎️096-232-3111(代表)http://www.kumareha.jp/

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地域医療の充実に「患者第一」で臨む

独立行政法人 労働者健康安全機構 中国労災病院栗栖  薫 院長(くりす・かおる)1981年広島大学医学部卒業。国立呉病院(現:国立病院機構呉医療センター・中国がんセンター)、広島大学大学院医系科学研究科脳神経外科学教授などを経て、2020年から現職。  広島県内で3番目の人口約22万人を擁する工業都市・呉。勤労者医療を中心に発展してきた中国労災病院に2020年4月、新院長が誕生した。 地域を見て役割を考える  広島大学脳神経外科学講座の教授職を2020年3月に退き、同年4月、中国労災病院院長に就任した。 「ここ呉医療圏は、隣接する広島中央医療圏との車の往来が多く、広島中央医療圏から流入する患者さんが増加しています。当院にも、広島中央医療圏にある東広島市から、多くの患者さんがお見えになります。当面この傾向は続くでしょう」と地域の現状を見る。 中国労災病院は労働者健康安全機構が運営する労災病院32施設の中の一つ。地域の救急・急性期医療、勤労者医療を支え、付随するリハビリテーション医療でも力を発揮。地域周産期母子医療センター、県がん診療連携拠点病院、県災害拠点病院などの指定も受ける中核病院だ。 「今後、この地域の医療のさらなる充実を図っていくためには、今よりも少し広域の視点を持ち、2次医療圏にとらわれない地域の環境や人の動きを考慮に入れた対応が必要になるのではないか」。その中で、自院が果たすべき役割は小さくないと考えている。 脳卒中対策を地域に広げたい  脳神経外科医として長年、臨床・教育・研究に関わってきた。自家頭蓋骨由来間葉系幹細胞を用いた脳梗塞に対する再生医療研究、広島大学病院へのスマート手術室「SCOT」導入など、華やかな実績も多い。同時に、地域連携という地道にも見える活動にも力を注ぐ。 常に考えていたのは「どうしたら、脳卒中患者の後遺症を軽減できるのか」ということ。発症早期の治療開始が欠かせないことから、自治体、医師会などとの連携に積極的に取り組み、早期治療実現のため多方面からアプローチしてきた。 広島市や市医師会、病院などが参加した「脳血管内治療における救急医療体制(病院前救護)検討部会」では、部会議長として、兵庫医科大学脳神経外科の吉村紳一教授ら開発の「病院前脳卒中病型判別システム (JUST Score)」を活用した救急搬送体制構築に尽力。 システムは、救急隊員が現場で血圧の値、まひや頭痛の有無などを入力すると、可能性が高い病型を画面に提示。病型に即した受け入れ病院を、搬送+治療開始までの時間順にリストで表示する。 「運用から8カ月間の中間データの解析では、重症脳卒中患者について救急隊員の医療機関への交渉回数が有意に減少しています」。中国労災病院赴任後は、呉市役所・消防署でも、このシステムについて説明するなど、連携と脳卒中対策の拡大に向けて動き始めている。 患者第一 その前提に職員  中国労災病院の理念は「患者中心の良質な医療と地域医療への貢献」。「言い換えるなら、『ペイシェント・ファースト(患者第一)』。それをいかに具体的に実践していくのか、考えるのが私の役目です」 着任直後からCOVID―19の対応に追われる中でも、第一に考えるのは患者・地域のこと。ただ、その実現の前提に必要なのは、病院職員全員の健康・安全だと考える。 「COVID―19によって、病院は、感染拡大を防ぎながら通常の医療提供体制を維持する必要が出ている。職員も、患者さんを守るための感染対策などの負担が増えています」 だからこそ、高い意識で業務に従事する職員を目にするたびに、決意を新たにする。「職員を守ることが病院、そして私の責任。安心して仕事ができる環境をつくっていきたい」 独立行政法人 労働者健康安全機構 中国労災病院広島県呉市広多賀谷1-5-1 ☎️0823-72-7171(代表)https://www.chugokuh.johas.go.jp/

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良き教育者であるために

京都府立医科大学大学院医学研究科 運動器機能再生外科学 整形外科高橋 謙治 教授(たかはし・けんじ)1990年京都府立医科大学医学部卒業。米カリフォルニア大学サンディエゴ校、日本医科大学整形外科・リウマチ外科臨床准教授、国際医療福祉大学医学部整形外科教授などを経て、2020年から現職。  新型コロナウイルスが猛威を振るい始めた2月に教授就任。診療や手術が思うようにならない中で、臨床に優れた医師を育てることを信念に取り組む。10年ぶりに戻ってきた母校で今後、実現したいこととは。 「白夜」に導かれ整形外科の道へ  工学部を目指し高校生活を送っていたある日、偶然手にしたのは、渡辺淳一の自伝的小説「白夜」だった。研修医がへき地で苦労しながら一人前に育つ姿に感銘を受けた。「そのとき、整形外科医になろうと決めました」と振り返る。 数年後、若狭湾沿いにあるへき地の病院に赴任する機会に巡り合った。雪深い道での交通事故や林業事故、スキーや海水浴でのアクシデント…。まだ若く、自信はない。しかし、目の前の患者を救うのは自分しかいない状況が続く。必死に手を動かし、勉強し、技術を磨いた。「とにかく真摯(しんし)に向き合うしか、方法がなかった。おかげで、臨床の自信がつきました」と懐かしむ。 大学に戻ってからは股関節外科を担い、2010年にはリウマチの最先端を学ぼうと日本医科大学へ。次に教授として赴任した国際医療福祉大学では、人工関節を探求。そして2020年、再び母校へ戻った。 広い守備範囲で高みを  1949年設立の歴史ある教室。関連病院は50以上、医局員は200人超、同門会も600人を超える大所帯を束ねる。「11の専門グループがあり、幅広い臨床に対応できることが特長です。さらに全国でアイデンティティーを示せるよう、一つひとつのレベルを上げていくのが私の役目です」 その先鋒(せんぽう)にしたいのが、自らの専門である関節外科。「中でも罹患(りかん)人口2000万人以上とされる変形性膝関節症ですね。手術だけでなく薬物療法、リハビリ、人工関節や骨切り術など最適な方法で対処します」 研究は、変形性膝関節症のMRI解析。レントゲンでは把握しきれない症状や、その後の経過を知り得る検査方法の開発に挑んでいる。成果の一つとして、半月板が内側にずれている患者は、軟骨が傷みやすくなることを突き止めた。 ずれた半月板を元に戻す縫合術はリスクもある。注目しているのはリハビリテーションだ。「有効なリハビリを開発した結果、症状も、関節軟骨が傷むのも抑えられることが分かりました。関節内注射、再生医療などと組み合わせる研究も計画中です」 実は、自身がこの変形性膝関節症を患う。5年ほど前、自転車レースのためのトレーニング中に発症。使い過ぎによるものだという。半月板が痛み、歩くのもおっくうになった。共同開発した温熱療法なども活用しながら治療中だという。 「まさか自分が開発した機器を、自分で使うとは思いもしませんでした。膝グループの先生からは手術した方がいいと勧められていますが(笑)。患者さんの気持ちは痛いほどよく分かります」 良き教育者になる  2月の就任時から、新型コロナウイルス感染症の対応に追われる日々。まず手術ができなくなり、医局員の半分が在宅勤務になった。院内感染が起きないよう最大限の取り組みを行いながらも、医師の育成については、しっかりとしたビジョンを示す。 「大学の教授はスーパードクターでも、有能な研究者でなくてもいい。ただ、良い教育者であることです」と高橋教授。今回起用されたのも、その熱意ゆえと考えている。 若手に伝えたいことは二つ。「まずは臨床の基本を身に付けること。患者さんの顔をしっかりと見て、触れて、診る。病棟を回って1日1回は必ず声を掛ける。電子カルテだと、患者さんの顔を見ないことも多い。患者さんの気持ちをすくい取らずして、相手の立場で考えることはできない」と話す。これは、患者だけにとどまらない。メディカルスタッフ、検査技師、理学療法士など、共に働くスタッフの気持ちも想像し、行動することを大切にしてほしいと、入局者に対してのあいさつで伝えたという。 さらに、自分のキャリアにおいて、何が大切かを考えることも忘れてはならない。「他者に貢献すること、責任の中で成長することを人生の目的にしてほしい。切に願います」 まずは良き医師として育てること。その中からスーパードクターと呼ばれるほど臨床で活躍する医師をはじめ、行政で活躍する、あるいは教育者として活躍するといった医師が出てくることが夢だと語る。 そんな、将来活躍できる医師を育てたいとの思いで家族を残し、単身赴任した。子どもたちには常に自己研さんする背中を見せたいと語る。 「息抜きは、家族との時間です。テレビ電話を前に一緒に食事したり、子どもの勉強を見たり。オンラインの恩恵を享受しています(笑)」 京都府立医科大学大学院医学研究科 運動器機能再生外科学 整形外科京都市上京区河原町通広小路上る梶井町465 ☎️075-251-5111(代表)http://www.f.kpu-m.ac.jp/k/orthoped/

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チーム医療の核となる形成外科医の育成を目指す

佐賀大学医学部 形成外科 上村 哲司 診療教授(うえむら・てつじ)1987年久留米大学医学部卒業。日本赤十字社医療センター、昭和大学医学部形成外科、佐賀大学医学部附属病院形成外科准教授などを経て、2007年から現職。  整容性維持によるQOLの向上や再生医療への関心が高まっている。しかし、いまだ形成外科医の数は少ない。県内唯一の形成外科医の医育機関である佐賀大学医学部形成外科の上村哲司診療教授に、形成外科医の育成、その資質や魅力、今後の展望を聞いた。 ─形成外科医育成の方向性を教えてください。  形成外科医は、チーム医療の核として、潤滑油のような働きをするジェネラリストでなければならないと考えています。形成外科医である前に外科医としての基本的な知識が必要ですし、他の診療科の医師たちと、うまく連携するコミュニケーション力も大切です。 また、ほかの外科系診療科は、病巣を取り除き再発させないことが治療の目的ですが、形成外科は、患者さんが日常生活を取り戻すために必要な機能を回復させることが目的です。それだけに患者さんに寄り添った医療が必要になります。 患者さんの年齢層は乳児から高齢者まで幅広く、疾患の傾向も人によって違います。そうした中で、一人ひとりに最良の治療を提供するには、患者さんやそのご家族と信頼関係を築くことが大切です。若手医師には、まず社会人としてのマナーやコミュニケーション力をしっかり身に付けるよう厳しく指導しています。 ─医局の特徴は。  県内唯一の形成外科医の医育機関で、佐賀県内の症例のほとんどが集まってくるため、さまざまな疾患を診ることができます。また、関連病院と連携し、大学病院以外の環境でも経験を積んでもらうようにしています。医局にいれば上級医師がフォローをしてくれますが、関連病院などに出れば、自分一人で対応しなければなりません。さまざまな経験を積む中で、社会性と専門医としてのスキルを身に付けてもらっています。 研究分野においては、足病変における歩行や糖尿病に関する神経障害の研究を中心に取り組んでいます。 現在、福岡県久留米市の靴メーカー・アサヒシューズとの産学連携で、糖尿病患者さんの足を守ることを目的とした「メディカルシューズ」の開発に取り組んでおり、2019年の12月にモニタリングを開始しました。五輪開催前後にはプロモーションも行う予定です。2〜3年以内に商品化したいと考えています。 ─形成外科医の魅力、求められる資質は。  多くの学生が疾患の原因や病態の現象などに興味を持って医師を志すと思います。しかし、形成外科では視診や触診など〝五感〟による診察が何よりも重要になります。手術の前にはどのように形づくるか詳細にデザインするため、デザイン力も重要なスキルです。 資質を問うなら、器用不器用は関係なく、物を作ったり、繊細な作業をしたりするのが好きかどうか。「好きこそ物の上手なれ」という言葉のとおり、好きであれば、センスは磨かれるはずです。 このようなアーティスティックな素養を医療に生かせるのは、形成外科医の魅力の一つだと思います。また、あらゆる年齢層をターゲットとし、症例も幅広い。さまざまな臨床経験を重ねながら学べることも魅力だと思います。 形成外科医は、再建外科のために正常な組織(ドナーサイト)を犠牲にして、変形や欠損が生じた部位を作ります。そのドナーサイトにもメスを入れるので、責任は重大です。しかし、それだけにやりがいもあるのではないでしょうか。 今後は低侵襲をキーワードに、形成外科も内視鏡手術やロボットを使った再建手術が広がると思います。AIの利用もあるかもしれません。これからの10年で形成外科は大きく変わっていきます。最新技術を取り入れ、患者さんにとって最良の医療を提供できるように努めていきたいと思っています。 佐賀大学 医学部形成外科佐賀市鍋島5─1─1☎0952─31─6511(代表)http://www.prs.med.saga-u.ac.jp/

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常に最先端を走りたい 質の向上、技術革新を継続

香川県厚生農業協同組合連合会 屋島総合病院安藤 健夫 病院長(あんどう・たけお)1987年産業医科大学医学部卒業、同整形外科学教室入局。1989年岡山大学医学部整形外科学教室入局。寺岡整形外科病院、屋島総合病院副院長などを経て、2015年から現職。  2016年秋に新築移転してから、近隣地域はもとより、遠く青森などからも患者が訪れている。最新の医療を提供することを信念に、スポーツ医学センター長も兼任する安藤健夫病院長に、屋島総合病院の「今」について聞いた。 ─各診療科の状況は。  整形外科を中心に、順調に手術件数が増えています。中四国全域から、人工関節の手術を受けるために患者さんが来られています。 2019年の人工関節手術は432例。スポーツ外来では特に、膝の前十字靱帯の再建術が増えています。遠く青森から、患者さんご自身でインターネットの情報や口コミなどを調べて、手術を受けに来られた方もいました。 年に2回、人工関節センター長の浅海浩二医師と私の2人で、膝関節や股関節について市民講座を開いています。毎回200人〜300人の方が参加されます。そこで話を聞いた方や周囲の方が病院へ来てくださっている状況です。 産婦人科は、2019年、女性の医師が1人増え、2人体制になりました。近くの病院が産科を廃止したこともあり、10月以降お産で来られる患者さんが1・5倍に増えました。 また産婦人科は、新築移転したタイミングで、外来を病棟のある4階に併設しました。内装も新しくなり、安心して出産できる環境になっています。 外科では、腹腔鏡手術に力を入れています。開腹手術と比べると、手術時間は多少長くなりますが、患者さんへの負担が少ないため、早期回復を目的に、積極的に取り組んでいます。 ─今後、目指したい病院の姿は。  整形外科に関していえば、高い技術、質を誇る病院でありたいと思い、日々、技術革新に努めています。医療の進歩に遅れないように、常に最先端を目指し続けたいと考えています。 その一環として、先端医療である再生医療を、当院でも提供できるよう準備を進めています。国内で認可されて間もない、多血小板血漿(PRP)療法を近々始める予定です。 具体的には、自分の血液から多血小板を分離させて、局所に注入。組織を再生させる力、治癒能力を高めます。例えば6週間かかっていたものが、2週間ほどに短縮できる。自分の血液から採っているので、アレルギーや免疫反応などの副作用もほとんどない、そういう治療法です。 低侵襲な方法を用いつつ、いかに早く社会やスポーツの場に復帰してもらうかを考えていく。その選択肢が広がるのではないでしょうか。 ─地域との連携について教えてください。  移転と同時に創設した「総合支援センター」が病院の要として、うまく機能しています。また、当院には訪問看護サービスもあるので、在宅療養や介護の支援も可能です。入院前から退院後の生活まで、切れ目ない支援を提供できるようになりました。  センターには、各診療科からベテラン看護師が配属されています。厳密な入退院管理により、病床稼働率はほぼ100%。急性期、回復期いずれについても病床は満室です。地域包括ケア病棟も回復期リハビリテーション病棟も、順調に稼働しています。  近隣の病院から紹介で当院に来られた場合、患者さんの容体が安定すれば、回復期病棟へ移っていただいています。もしくは、総合支援センターが相談に乗りながら、患者さんのお住まいに近い病院へ転院するお手伝いをします。当院での対応が難しい患者さんが来られた場合には、大学病院など3次救急病院へご紹介しています。 近隣の個人病院や地域の病院だけでなく、県立病院や大学などの大規模な病院とも良好な関係を築きながら、地域に貢献していきたいと思います。 香川県厚生農業協同組合連合会 屋島総合病院高松市屋島西町2105―17☎087―841―9141(代表)http://www.yashima-hp.com/

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高度医療機能をさらに高め札幌医療圏のニーズに対応

市立札幌病院向井 正也 院長(むかい・まさや)1981年北海道大学医学部卒業、同附属病院(現:北海道大学病院)第二内科入局、米ニューヨーク州立大学留学などを経て、1997年市立札幌病院入職、2019年から現職。  2019年末に東京五輪マラソンの札幌開催コースが決まり、年明けの市内は慌ただしさを増している。コースの注目ポイントの一つが北海道大学ポプラ並木。選手が疾走するその並木にほど近い場所に建つのが市立札幌病院だ。2019年、開設150年を迎えた節目の年に就任した向井正也院長に、現状と今後の目標を語ってもらった。 ―開設当初の様子は。  1869年(明治2)年、札幌開拓のため隣接の小樽市銭函に設置された仮役場の片隅に設けられた小さな診療所がスタート。翌年、市内の官舎に仮病院が置かれ、千葉県出身の医師、斎藤龍安が着任、診療に当たりました。病院らしい本格的な建物の建設は20年後。外国人医師のグリム院長自らが設計し、その瀟洒(しょうしゃ)な外観デザインは評判となりました。市外から見学に訪れる人が少なくなかったと言われます。残念ながら建物は大正時代に焼失しました。 ―現在の建物は。  1995年の竣工です。敷地面積約4万3800平方㍍、延べ床面積約6万4500平方㍍、地下2階、地上10階、病床数672、屋上にヘリポートを設置しています。道央圏の3次救急の中核を担う救命救急センターを中心とする急性期医療をはじめ、総合周産期母子医療、精神医療などを提供。33の診療科を擁する基幹総合病院として、ほかの医療機関などからの受け入れ要請を断らない医療の実践を使命にしています。 1日平均患者数は外来約1600人、入院約550人。ベッド稼働率は一般病床では90%前後で推移。また災害拠点病院として72時間、電力供給可能な大型の非常用発電機を備えています。2018年、最大震度7を記録した北海道胆振東部地震では、札幌を含む道内広域でブラックアウトが発生しましたが、当院は3日間、診療をフルに行いました。 ―現在の取り組みを教えてください。  2013年に承認された地域医療支援病院の取り組みに力を入れています。 具体的には、2018年度の当院の紹介率82%、逆紹介率109%と高い比率になったのをはじめ、救命救急や周産期母子など各センターを中心とする24時間体制の救急医療の一層の強化。さらに、MRIやCTなど多数の検査受託、かかりつけ医と当院の医師が共同で診療に当たる開放型病床の運用、各種症例検討会や講演会の多数開催など、各種の取り組みを行っています。 北海道の全人口の4割を超える道民が暮らす札幌医療圏の人口増加は、今後数年でピークを迎え、以降は徐々に人口が減少し、2045年にはピーク時に比べ10%以上少なくなると予測されています。 一方、高齢者率は伸び続け医療需要が増加すると見込まれています。こうした変化への対応が今から求められています。 ―具体的な対応策は。  救急医療に対するニーズが特に増加すると見られており、高度急性期機能を高める取り組みが必要です。これを踏まえ、2019年度から実施の「市立札幌病院中期経営計画」の基本目標の一つに、医療を担う人材育成および先進医療への貢献を掲げています。 市民の期待に応える医療を継続的に提供するには、将来の医療を担う若い人材、多様な人材の育成が欠かせません。またゲノム医療、再生医療、AI医療など先進医療の動向を注視し、市民に還元できるよう適切に対応していくことも重要です。 人材育成は研修医のみならず専門医を含め、関連大学から各部門への実習生の積極的な受け入れを実施します。先進医療については、札幌市が取り組む医療関連産業集積事業に協力し、大学病院や研究機関と連携して適応患者の紹介推進など、新規の取り組みを行っていきます。 市立札幌病院札幌市中央区北11条西13―1―1☎011―726―2211(代表)https://www.city.sapporo.jp/hospital/

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日本医師会 会長 横倉 義武

 明けましておめでとうございます。皆さまにおかれましては、令和初の新年を健やかにお迎えになられたこととお喜び申し上げます。 平成の時代を振り返りますと、われわれは戦争のない平和な時代を過ごすことができたことに感謝する一方で、阪神・淡路大震災や東日本大震災、2016年熊本地震などの大地震、さらには豪雨や超大型台風などの自然災害が相次ぎ、多くの国民が被災されたことを忘れるわけにはまいりません。 犠牲になられた方々のためにも、平成の教訓を令和の時代に生かすべく、日本医師会では、被災地に派遣する日本医師会災害医療チーム(JMAT)を立ち上げ、随時その機能強化を図りながら、「被災者健康支援連絡協議会」参加団体等の関係機関との連携強化に取り組んでまいりました。 さらに、これからの災害対策には、行政、介護、福祉などの幅広い「多職種連携」が必要になります。加えて、地域包括ケア、医療・介護連携を中心としたまちづくりと地域社会のつながりがその礎となるものと考えます。今後も、医師会組織の緊密な連携に向けた施策を強化しながら、引き続きこれらの取り組みの推進に、全力を尽くしてまいります。 社会変化、技術革新に合わせ医療も適切な変容を  新たな時代に引き継がれたわが国の大きな特色に、人類史上かつてない超高齢社会の到来があります。人口の減少や過疎地域の拡大、所得や生活環境の格差など、複雑な環境変化が絡み合い、社会全体が模索を続ける中で、医療も適切な変容を遂げていかなければなりません。 政府は「人生100年時代」に向けて全世代型社会保障への改革を進め、子どもからお年寄りまで、切れ目のない社会保障の構築を目指しておりますが、そのためには、現在の医療を分かりやすく国民に示し、納得の得られる給付と負担に関する国民的合意へと導いていく必要があります。 依然として日本人の死亡原因のトップを占めているがんですが、2006年に「がん対策基本法」が成立し、同法に基づく基本計画が策定、数次にわたり見直され、全国どこでも質の高いがん医療を提供できるよう、がん診療連携拠点病院の整備や多職種連携等が進められてきました。 これにより、がんに関わる1人当たりの医療費は、特に後期高齢者において2000年当時よりも低下しており、対策法の制定による適切な整備の重要性が明らかになりました。 また、65歳以降の傷病別り患数を見てみますと、がんよりも脳血管疾患や高血圧性疾患、心疾患といった循環器系疾患が多くなっております。この対策として、2018年末には「成育基本法」とともに、「脳卒中・循環器病対策基本法」も成立しました。本法の目的は、循環器病の予防推進や迅速かつ適切な治療体制の整備を進めることで、健康寿命の延伸と医療・介護の負担軽減を目指すことにあります。 現在、介護保険で要介護5と認定される要因の30%は脳卒中後遺症と言われています。脳卒中は発症から4時間以内に抗凝固療法を行えば、後遺症の発症を軽減することができますので、早期に対応できる連携システムを整えることができれば、後遺症による長期療養者を減少させることも可能となります。基本計画の策定に向けて、これから具体的に動き出しますが、全国各地で推進していく必要があると思っております。 われわれ医師は従来、診断・治療に重点を置いてきましたが、今後は予防・教育や再発重症化予防、見守り、看取りにおいても重要な役割を果たしていかなければなりません。そうした意味で、各地域で地域医療に従事する「かかりつけ医」は、学校医や産業医としての役割を果たすだけではなく、ICTやAI、再生医療、ゲノム医療など、医学における技術革新にも対応していかなければならず、日本医師会といたしましては、引き続き「かかりつけ医機能研修制度」の一層の充実を図るとともに、かかりつけ医のさらなる普及・定着に努めてまいりたいと思います。 日本の経験をもとに国際貢献に取り組む  さて、私は2019年10月、ジョージアで開催された世界医師会(WMA)トビリシ総会において、世界医師会長を退任し、3年間にわたるWMAでの会長職を無事終えることができました。その任期を全うできましたのも、皆さま方の温かいご理解と力強い支えによるものであり、厚く御礼申し上げます。 在任中は、日本の優れた医療システムを世界に発信し、世界中の人々の健康水準向上に寄与すべく、ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)の推進に努め、WHOとの覚書の締結、「Health Professional Meeting 2019」の開催、国連総会NCDs、UHCに関するハイレベル会合、G20岡山保健大臣会合への出席等、WMAを代表した活動を行ってまいりました。 また、地域医療のあり方としての、かかりつけ医を中心とした地域包括ケアシステムや疾病対策、健康増進、高齢社会への取り組みについて紹介したほか、トビリシ総会では、長年議論されてきた安楽死の問題が取り上げられ、WMAとして安楽死に反対する意思を明確に表明した修正案が採択されました。 さらに、同年11月にはワーク・ライフ・バランスをテーマに国際会議を開催し、医師の燃え尽き症候群やWell-beingなどが各国共有の課題として認識されました。ここで得られた知見が、今後の働き方改革の議論に資することが期待されます。WMA会長としての役割は終えましたが、これからも日本の経験を通じた医療の国際貢献に取り組んでまいりたいと考えております。 医療界がスクラム組んでオリ・パラの成功を目指す  昨年9月には、ラグビーワールドカップ2019がわが国で初めて開催され、日本列島が熱狂と感動の渦に包み込まれました。「ONE TEAM」という、この競技の熱いコンセプトが、多くの国民の心をわしづかみにしたことに、ラグビー経験者の一人として、万感胸に迫る思いをいたしております。 開催期間中、日本医師会では開催地の医師会との連携の下、訪日外国人を含む200万人を超えるファンがスタジアムを埋めることによる万が一の事態に備え、CBRNEテロを含むマスギャザリング対策等に取り組むなど、万全の体制を整えて参りました。幸い大きな問題はなく、大会を終えることができました。ご協力いただきました多くの方々に感謝申し上げます。 そして、今年はいよいよ東京オリンピック・パラリンピックを迎えますが、東京都医師会を始め開催地の多くの先生方を中心に、医療界がスクラムを組んで、大会の成功に貢献してまいる所存でおりますので、引き続きのご支援・ご協力のほど、お願い申し上げます。 令和の時代も医師としての高い倫理観と使命感を礎に、人間の尊厳が大切にされる社会の実現を目指してまいりますことをお伝えし、年頭のごあいさつとさせていただきます。本年も、どうぞよろしくお願い申し上げます。

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札幌医科大学附属病院 病院長 土橋 和文

 2020年の年頭に際し、謹んで新年のごあいさつを申し上げます。本年も、皆さまにとりまして安らかで幸多き年でありますようお祈り申し上げます。 昨今、診療では、「異次元の効率的医療」「医療情報の爆発と制御不能」、研究では、「生命科学とIT科学の融合」、管理運営では、「働き方改革、高額医療材料・薬剤と消費増税、新専門医と研修医制度への対応」などなど。かつては10年単位の変革が毎年押し寄せる。今年も難問山積となるだろう。 このうち、IT産業革命による情報爆発と個別深化は明確となった。若者は書籍を読んでいない。健康問題がバラエティーショーないしテーマパーク化した。SNSにより情報は爆発・個別化し何が本筋か見えず語りにくくなった。画像診断は感知能力・記憶範囲を超え、AIは日常診療のダイナミズムを失色せしめた。シミュレーション装置は現実と仮想空間の垣根を越え、臨場感たっぷりだ。誰もが疑似体験に満足気である。逆に、人をつなぐ「絆」が見つからない。 恩恵があるとすれば果たして誰のためか?若い人は楽しいのか?良質で均一な医療供給体制は維持できる?生物学的製剤と特定の新規薬剤で破綻?答えが定かではない課題との格闘の日々が続きそうだ。 さて、当院および大学施設は、「文字通り」生まれ変わろうとしています。  大学本部棟、教育棟、附属病院と周辺施設は、竣工から四半世紀を優に超え、建て替えの時期を迎えていました。北海道命名150年の2018年7月、70年の歴史に新たな足跡を刻みました。西棟運用と旧棟改築の開始です。 変革の骨子は、療養環境の大幅な改善、臓器別病床階層別配置によるチーム医療の場の醸成、将来を見据えたハイブリッドおよび手術支援ロボット手術室群の配置、高度救命医療および集中治療群の増改築、再生医療、精神科救急病棟などを担う病床群の設置、外来診療へのシフトとして日帰り手術の推進・化学療法室と内視鏡治療の拡充、リハビリテーションの充実、遺伝診療、卒前・卒後教育のスペース確保、事務群の改変、研究支援などです。 これらの設備整備は施設の拡充のみならず、時代にあった優れた医療人の育成と新たな研究領域の展開と情報発信の新たな場になれば幸いです。完成まで今後3〜4年、工事による運用病床の減数などご迷惑をおかけします。併せてご協力とご理解をお願い申し上げます。 本年もこれまで同様、当大学および附属病院へのご指導ご愛護を何卒お願い申し上げます。

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