都農町国民健康保険病院 立野 進 病院長
―町内で唯一、入院可能な病院ですね。
この町で、入院することができ、夜も開けている病院はここしかありません。ですから、困っている患者さんがいたらなんとか対応するというのが当病院のモットーです。現在は医者が5人いますが、もっとも少ないときは3人にまで減ったことがあるんですよ。3人で65床を診るのは結構大変でしたが、なんとかみんなで乗り切りました。
私の専門が外科ですので、これまでは大病院勤めが長く、この規模の病院に勤めるのは初めての経験でした。もっとも、患者さんと密接につながる、患者さんに頼られながら診療することは自分診察室に入って来る時から患者さんをよく診る、よく話を聞くようにしています。(立野 進)に向いているんじゃないかと思っていました。だから躊躇(ちゅうちょ)せずに、20年前にこの病院に来たんです。
私が来て1〜2年目くらいに介護保険が始まって、医療と介護の世界がミックスされるようになりました。国民健康保険病院は地域密着で、医療はもちろん介護もケアも全部やるというのが理念です。それに沿った医療を提供しようとしていますが、マンパワーが足りないし、建物も老朽化しているのでなかなか理念に追いつかなかった。
そんなとき、町政100周年(2020年)に向けて町に保健医療ゾーンをつくるという行政的な計画が持ち上がり、その第1次整備として病院を作ることになったんです。第2次整備としては、保健福祉総合センター(仮称)、第3次整備で老人ホームなどの施設を誘致する。この3つで安全な町を作ろうという計画です。この病院も2017年末〜2018年1月ぐらいをめどに新しく建て替えを予定しています。
―新病院はどのような特徴をもった病院になりますか。
ここはもともと一般病床だったのですが、伝染病の病棟があったので、それを引き継いで、一般病床41(急性期10、地域包括ケア病床31)、療養病床20、感染症病床4、という分け方にしました。入院患者には、急性期、慢性期に続いて高齢者が多い。だからこの際、多機能に対応できる病院にしようと決めました。
それから、町民のみなさんや周囲の医療機関、介護機関に「どういう病院をつくればいいですか」というアンケート調査もしています。みなさんからの要望を受け止めて設計に反映したいですね。
職員たちも患者さんの利便性と病院の機能性を考えてディスカッションしています。一般の医療を受ける人、検診を受ける人、救急車などがここに集まってくるので、すべてが完璧にとはいかなくても、最善のものができると思います。
―ますます忙しく、人材が必要になりますね。
「新しい病院ができるんだし、頑張らないかん」という思いと、自分の今の年齢、体力、知力やいろんなものがついていけるのか不安があります。さらに、どこの病院でもそうなのでしょうが、医者が足りない。大きな病院は人手があるので代わりに仕事してもらえますが、ここではなんでもひとりでしなければならない。しかし、やりがいはあります。マンパワーがあれば、いろいろな意見も出てくるでしょう。
パッション(情熱)、スキル(能力)、ユーモア(笑い)のある人と働きたいですね。ユーモアとは、穏やかに和やかに、コミュニケーションを取れる人。明るくて、冗談も言うけど、まじめな方、緊張と緩和の使い分けが大切でしょうね。
―救急業務で功労者賞を受賞されました。
3年前に受賞しました。この地域は県内に7つある二次医療圏のひとつです。救急救命士と医者が救急のことについて連携するための、メディカルコントロール協議会というのがあります。私は救急医ではありませんが、公立病院に勤めていたことと、救急医療もある程度やっていたので、会長に推薦されました。2年くらい前からドクターヘリが飛ぶようになって、患者さんが宮崎市内へ直接送られることも多くなりました。この地区では救急が来ても診てくれる専門家がいないので「まずは診る」という対応をします。そこを評価してもらえたのではないかと思っています。
―診察の際、一番大切にされていることは。
診察室に入って来る時からよく診ることです。歩き方などがなにか違うなって気づく。患者さんの言うことしか聞かずに見逃すことって結構あるんですよ。私はお腹の外科だから、必ず横にしてお腹を触ったり、聴診器をあてています。カルテだけを見ている医者ではなく、患者さんと直接触れあうことが大事だと思います。